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人間現役(仮) 二

さとかさんが住んでいるのは売人が沢山住んでいるエリアから電車で30分ほど先の閑静な住宅地だった。

当時の彼氏と慣れない地下鉄で現地へ向かう。道中少しの"キレ目"に襲われながら到着迄の辛抱とポケットの中の覚醒剤を触ってみる。パケの中は残り僅か。この量が二人分ならかなり不安になるのでさとかさんから1g購入しようと、そう言う話になった。

指定の住所に到着次第、さとかさんへ電話する様に指示されていた為私は電話をかけた。

「もしもし?もしもし⁈もう着いちゃった⁉︎あららぁ思ったより早いじゃん‼︎どーしよ、トモ君に迎えに行かせるから待ってて‼︎」


トモ君とはさとかさんの彼氏と言うか、多分彼氏なんだと思う。私より少し年下の彼は関東から来た真面目な子で、そこそこいい学校も出ていると聞いた事がある。トモ君はさとかさんにぞっこんで私がさとかさんと付き合っているのか聞いた時『勿論彼氏だよ』と答えた事がある。

ただ後々さとかさんからは『彼氏だと思うよ‼︎』と言われている為ここでは敢えて"彼氏だと思う"と書く。

10分後、トモ君が急ぎ足で降りてくる。

「ごめんごめん!待たせたよね?お待たせしました!!マルちゃんも電波ちゃんもここまでお疲れ様、お腹空いてる?」

マルちゃんとは元彼のニックネームだ。

「いや、俺はぼちぼちやけど今日楽しみにしててん!コイツは腹減ってるんちゃう?しかもさとかさんの手料理やろ?ヤバイわ!」

私はお腹は空いてなかったが、気合いを入れれば食べられる様にかなりの時間食事を取らずにいた。

見慣れない土地を歩く事5分のその一角に少し街から背の高いマンションが有る。白の外壁は数年前塗り直された様な形跡が有り、趣きはあまり感じられない。無機質な外壁を半周歩くとメインエントランスに着く。トモ君に案内され中へ入り辺りを見渡すと案の定エレベーターは改装されておらず、三人で乗り込めば時折大きく揺れる。古めかしいエレベーター特有の匂いを放ちながら5階に到着するや最後は更に大きく揺れた。

さとかさんの部屋の前に近づく。和食の良い匂いがフワリと漂って来た。トモ君が部屋の扉を開ける。

「連れてきたよ〜」

「マルちゃん‼︎電波ちゃん‼︎いらっしゃ〜い‼︎」

さとかさんは両手に調理器具をたくさん持ちガチャガチャ忙しなく料理を仕上げようとしていた。


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