新しい「ラブライブ!」の形がそこに(スクールアイドルミュージカル感想)
ラブライブの定義、とは…
2022/12/10現在、ラブライブシリーズは今までと比べてさらに広がりを見せています。
シリーズ初代にサンシャイン、一人一人にフォーカスを当てた虹ヶ咲、一般公募枠を採用したスーパースター。それぞれがそれぞれの「スクールアイドル」を生き、表現しています。
その中でも特に異彩を放つ、新しいラブライブプロジェクトが一つスタートしました。
それは「スクールアイドルミュージカル」。
完全新作となる本作、今までと比べて決定的に違う点が一つあります。
そう、「シンクロ」がないんです。
ラブライブと言えば、アニメの中で動くメンバーたちと同じダンスや演出をすることが一つの代名詞になっています。
ミュージカルという形で表現する以上、原作となるのはステージに立つ縁者さんたちそのもの。そこには「キャラ」は存在せず、「役」がある世界。
今までのラブライブシリーズの常識が存在しない本作で、実際に観劇に行く人たちはどこに「ラブライブ」を感じ、何に感動してくるのかがあまりにも想像できません。
(それが楽しみすぎるところでもあります)
そこで、今回は自分が思うラブライブシリーズに必要な要素を観劇前に挙げておき、実際の公演やストーリーと照らし合わせてみたいと思います。
観劇前
文章を書いているのは2022/12/10、私の観劇の前日です。
ここでは先に述べた通り、ラブライブシリーズの共通している要素を挙げていきますね。
・スポ根感
自分がラブライブシリーズをラブライブ自体全く知らない人に伝えるとき、必ず口にするワードがあります。
「ラブライブは『甲子園』だよ」
アイドルアニメとして有名になったがために、ラブライブに詳しくない人にはあまり知れ渡っていないこと。それは、ラブライブはスポ根アニメだということです。
どのシリーズでもグループ結成からラブライブ予選へ出場、そこで課題が見つかり、それを解決するためにメンバー間で様々な努力をする、といった内容が王道になっています。
今作はストーリーの特徴に「二校の対立」といった部分があります。これを組み込みつつも、ラブライブらしい熱いストーリーが見られることを楽しみにしています。
・ミュージカル感
ラブライブシリーズは大事な場面で「ライブ」が挟まることが多くあります。
というのも、予選や決勝大会に向けてそれぞれの課題を解決して、その発表の場としてライブのステージがあるからですね。
他にもそれぞれのシリーズの1期1話や虹ヶ咲、スーパースター1期11話といった、ライブ以外でも自分の前進や成長を歌にすることがあります。
これが自分の言う「ミュージカル感」、なんですね。
そもそもラブライブ「ミュージカル」と銘打ってるのでこっちが本物なきがしますが…それでもラブライブらしさには必要なものですよね。
それに、今作では「歌」がどういった使われ方をするのかがとても気になります。ほかのミュージカルと同じように場面転換に使われるのか、はたまたライブステージのための「歌」とするのか。どちらに転んでもそれは新しいラブライブになる気がします。
・生の舞台の良さをそこに
これはラブライブらしさとは全く関係がないのですが…
自分の推しである伊波杏樹さんがよく言う言葉に「生の良さ」があります。
ステージで実際に人が演じているからこそ生まれるステージの熱であったり、キャラの息遣いであったり。そういったものがこれに当たります。
後にも先にも、キャスト本人がストーリーを紡ぐ「ラブライブ」はこれだけになるかもしれません。そうなった時、何か舞台でしか感じられないものを得られたらいいなと思います。
…と、前日までに語れる部分はこのくらいでしょうか。
ここから先に語るのは、おそらく観劇後の感想になるでしょう。今はこのワクワクを楽しんで、実際の舞台で何が起きるのか目の当たりにしてきたいと思います。
観劇後
というわけで、観劇してきました!
ここから先の内容は観劇後の感想等となっております。一応大事な部分は伏せていくつもりですが、若干のネタバレとなる可能性がありますのでお気を付けください。
大まかなあらすじ→観劇前とのギャップ→雑多な感想
といった具合に進めていきますね。
大まかなあらすじ(+感想)
今回のストーリーでは「椿咲花女子高校」と「滝桜女学院」の2つの学校を舞台とした、2つのストーリーラインが同時に進むような構成になっているので、それぞれの学校ごとに分けてあらすじを述べていきます。
・椿咲花女子高校
それは、夢を追い求める物語。
神戸の北野の異人館通りにあるこの学校は由緒正しい名門校として名高く、150年の歴史を持つ、古き良き学校としても知られています。
その学校の理事長の娘として、常にテストの成績トップをとり続けるのが、主人公である「椿ルリカ」。ルリカはすでに死んでしまった父親とした「母親の助けになる」という約束を果たすべく、次期理事長になるために毎日勉強に明け暮れながらも、仲良し5人組で過ごすのが当たり前で楽しい、そんな日々でした。
ある日、ルリカはテレビで連日話題になっている滝桜女学院の芸能学科のセンターである、「滝沢アンズ」のパフォーマンスを目にしました。
その姿がとてもキラキラしていて、すぐに彼女は夢中になりました。毎日その姿を追い求めて一時期は勉強に支障が出てしまいますが、学校の風紀にそぐわないと反対する母親を何とか説得して、いつもの5人組でアイドル活動ができるまでこぎつけました。
ですがそんな時、とあることをきっかけにあの憧れだったアンズと出会って…!?
というのがこちら側のストーリーです。
椿咲花女子高校の良いところは、何と言っても王道のラブライブストーリーがあることです。
強引な展開でみんなを巻き込むルリカ、それを支える幼馴染、自分の運命を大きく変える出会い。1期あたりでよくある展開がてんこ盛り。もう片方の学校がプロに近い形を描いているため、こちら側のストーリーはだいぶ学園ものに寄ってるところも良いですね。
後述するつもりですが、5人の初めての路上ライブのシーンがとてつもなく良い。スクールアイドルとは何なのか、何がしたくてスクールアイドルをするのかをルリカが叫ぶシーンは、ラブライブが好きなら誰しもが心打たれるシーンのはずです。
・滝桜女学院
それは、夢を探し求める物語。
さて所変わって、こちらは先ほどと違って最近新しくできた学校です。教育現場という立場にとらわれず、様々な革新的アイデアと努力により高められたブランド力を持ち味とする学校です。
この学校の芸能コースアイドル部に所属するのが、もう一人の主人公の「滝沢アンズ」です。彼女は持ち前のカリスマ性を武器に、理事長の娘として、アイドル部の絶対的センターとして芸能界に飛び立っていけるよう、日々努力を続けていました。
しかし、彼女には一つ大きな悩みがありました。それは、昔は楽しかった「歌」が今は全然楽しくなくなってしまったこと。彼女のステージにはたくさんの重圧がかかっています。親からの期待、センターとしての責任、世間からの目など…それを受けて、彼女自身が本当にやりたいことを見失っている状態でした。
そんな時、母親である理事長と部長である「若槻ミスズ」が話している場面を見かけます。ミスズは語りました。アンズには約束されたセンターの座があること、みんなもセンターを目指していること、そんなみんなにチャンスの場が欲しいと思っていること。そのうえで理事長は、ミスズは学費免除を受けている代わりにアンズをサポートする約束があることをミスズに再確認させました。
それを聞いたアンズは、今ある自分のすべての立場を投げ出して新しい夢を探すために、今までいらないと言われていた勉強に力を入れ始めます。
そうして彼女の生活が大きく変わっていった時、あることが理由で「椿咲花女子高校」のルリカと出会い…!?
といった感じのストーリーです。
こちらのストーリーはいわゆるアイドルアニメにありがちなストーリーが多いのではないでしょうか。
それぞれがセンターを目指し、それぞれにしっかりとしたプロ意識があるからこその悩み。グループの主柱がいないことへの全体の不安感。そういったことが描かれていました。
特に、物語後半でアイドル部のみんながアンズの存在感の大きさに気付くシーンが印象的でした。アイドル部がグループである意味がそこに生まれていたと思います。
観劇前とのギャップ
やはり大きなところでは、事前に挙げていた「ラブライブらしさ」の要素がそこまでないにもかかわらず、ちゃんとラブライブとしての形がそこに生まれていたことですね。
事前に挙げていた「スポ根感」は時間の都合上練習シーンがなかったことで薄れていたと思うし、「ミュージカル感」は想像の倍くらいずっと歌っていた(多分全体の7割くらい歌ってた)ことで、想像とのギャップはいくらかありました。
それでもやっぱり、同じことを言うようですが、そこには新しい「ラブライブ」がちゃんと生まれていたんですね。
それは、ステージで高校時代の1ページを全力で生き抜いて、スクールアイドルとして大きな成長を見せてくれた10人のメンバーがいたからだと思うんです。
あのステージには確かに彼女たちの葛藤が生きて動いていた、生きていた時間が動いていた。そう言い切れるだけの完成度を作ってくれたことに感謝です。
それとこれはラブライブ側へのギャップなんですが…
スクールアイドルが歌で気持ちを伝える力を完全に甘く見ていました。
いつものラブライブと違って、日常の風景すらも歌で伝えてくる彼女たちの心情がすごく伝わってくるんですよね。
これってもちろん舞台本来の良さも相乗効果として発揮されていると思うんですが、スクールアイドルの力でもあるんじゃないかなって思いました。こればっかりは言葉でいくら説明しても伝わらないので、実際に劇場に足を運んで、心が震える体験をしてきてほしいなと思います。
雑多な感想
ここから先は、様々な視点での感想をお伝えできればと思います。
・理事長すごい
まずですね、これは劇場にいた方全員が首を縦に振ると思うんですけど…。
理事長二人の実力が半端じゃない。
歌のうまさ、舞台のうまさ、どちらをとってもこの二人が圧倒的にとびぬけていることが素人目で見てもわかるくらいすごい。
今回のストーリーは、二校の理事長が昔からのライバルで競い合い続けてきた仲である、という設定があるため、その二人の目線でもストーリーが描かれることがあったんですが。
スクールアイドルに感情移入するのはいつものこと。でも自分みたいな、親心が完全に理解できない若年層が理事長に感情移入することってちょっとハードルがあるというか、一枚の壁があるような感じがするんです。
その壁を取り払うためには、ステージにのめりこませるための引き付ける実力のようなものが必要で、この二人は完全にそれをやってのけていました。
実際に自分の席の周りでも理事長二人について話している人がとても多かった。この二人がいなければ、このミュージカルはこんなに完成度が高くならなかったんじゃないかって思うくらいです。ベテランってすごい。
・好きな劇中歌の話
今回のミュージカル、曲数がとても多かっただけにCDにはまだ収録されていないために劇場でしか聞けない曲も多数ありました。そのなかでおすすめを2曲セレクト。実際に行かれる方は楽しみにしててくださいね。
一曲目は「君とみる夢」。こちらは椿咲花女子高校の5人が初めての野外ステージで歌った曲です。この曲のいいところは何と言っても始まりの予感を感じさせること。
それでいて、とても熱い演出があるのもこの曲の特徴です。この演出は大きなネタバレになるので深くは触れませんが…劇中で1,2を争うほど印象に残る曲になること間違いなしです。
二曲目は「夢の羅針盤(コンパス)」。登場人物の10人のスクールアイドルが、とある出来事をきっかけに同じステージに立った時の曲です。一応本編ではEDっぽい扱いなのかな?
音源や歌詞カードがあるわけではないので、細かいことを覚えていなくて伝えられないのが悔しいですが、この曲、すごい「LIVE with a smile!」の雰囲気を感じたんですよね。
このストーリーに出てくる10人のスクールアイドルとしての生きざまがあの曲に込められていたんじゃないかなと思います。CD音源化されないかな…
他にも、本当にたくさんの曲が出てくるのでお気に入りの曲を見つけることをお勧めします。パンフレットには曲名も書いてありますのでそちらもぜひ。
・モブもスクールアイドル!
劇中で椿咲花女子高校の5人が路上ライブをするシーンがあるんですが、それの前にモブたちのライブシーンも少しありました。
もうそのステージがほんとスクールアイドルで。衣装なんかはスクールアイドルっぽくない恰好ではあるんですが、その歌詞の内容がまさに「スクール」アイドルって感じがしたんですよね。こういう細かいところにラブライブ要素を挟んでくれることで、ステージ全体の世界観を作り上げてくれていたんだと思います。
・今回の推しの話
せっかくラブライブということで、一応推しになるなら誰かなあということを考えてみました。
キャラ像だけなら圧倒的に椿咲花女子高校の「天草ヒカル」。お嬢様校に通っていながら言動はちょっと粗め、身長もそれなりに高いほうでバスケ部所属です。
この子の何が良いって、まあ何と言ってもお嬢様とのギャップが良い。それに(椿咲花女子高校はみんなそうだけど)結局のところルリカの無茶ぶりに付き合ってしまうお人好し感もいいですね。
キャラ像を全く考えないなら主人公の一人の「滝沢アンズ」。本作の中でも一番立場や運命に振り回されている彼女ですが、圧倒的なカリスマ性があります。それに、最終的に自分がやりたいことは何なのかを決断するシーンがあるんですが、それもとても良い。一番正しく高校生してるのは彼女だったのかもしれませんね。
皆さんもぜひ劇場に足を運んだ際には、自分の推しを見つけてみてくださいね。
ということで、「スクールアイドルミュージカル」感想でした!
新しい試みでありながら、そこには「ラブライブ」がありました。こうして一つの挑戦をしてくれた方々には感謝しかありません。
それにこれを機に、オタクにもミュージカルの良さが少しでも伝わってるといいなと思います。舞台はいいもの、ですよね!
それでは今回はこの辺で。またいつかラブライブの世界を舞台で見られる日が来たら…いいな…!