教えて、うるさん!私もマイクロデベロッパーになれますか?
不動産投資とその物件の運営を通じて、暮らすまちの価値をあげるマイクロデベロッパー。そんなマイクロデベロッパーの第一人者として活動する漆原秀さん(通称うるさん)に、今回は館山移住1年目で、駅前でのまちづくりに関わり始めた蓑口(みのぐち)が、不動産投資の経験ゼロ・知識ゼロの状態から、素朴な疑問をぶつけてみました。
マイクロデベロッパーは、不動産投資とまちづくりを両立させる人
あず:うるさんうるさん!もうズバリ聞きたいんですけど、私もマイクロデベロッパーになれますか?
うる:もちろん、なれますよ。ですが、あずちゃんはそもそもマイクロデベロッパーとはなにかイメージできていますか?
あず:えぇっと…小さな…開発者…です。(照)
うる:まぁ、そうですね。(笑)マイクロデベロッパーは、僕が勝手に名乗り始めた職名なんですが、簡単に言うと「不動産投資をしながら、まちづくりの両方を成立させる方法。そして、それを実践している人。」のことを指します。
あず:うるさんでいうと、tu.neとか、ミナトバラックスとか、CIRCUSとかですかね?家賃収入をいただく「不動産投資」はよくわかるんですが、「まちづくり」というのはどういうことですか?
うる:例えば、私の所有しているミナトバラックスやCIRCUSは新しい移住者の受け入れ先になっています。そのほか、tu.ne.Hostelという事業は、多くの関係人口を創出するとともに、事業承継をしたことで、このまちに新たな事業をする若者を増やすこともできました。
私が手がける物件の多くは、外見的にも印象的な建物なので、その雰囲気や空気感に惹かれて、新たな移住者の目を引くことにも繋がっていると思います。
あず:あー、確かに私もうるさんの手がけたMEETS-BUYでスナックイベントをさせてもらうことがありますけど、お店を一から作るとなると大変ですし、場があるのありがたい〜といつも思っています。
ただマイクロデベロッパーってなんかかっこいいと思いつつ、「不動産」なんていわれるとハードルが高すぎて手が届かない感じがしちゃって。
うる:そうおっしゃる方が多いんですが、きちんと勉強をして計画、実行をしていけばマイクロデベロッパーになることは全然可能ですよ。ちなみに僕のはじめての不動産投資は39歳のときでした。
はじめての不動産投資は39歳。親の介護のために買った戸建とアパート。
あず:39歳!私より5歳も年上ですね。
うる:そう、しかもその時は結婚して子どもが生まれる直前。不動産投資の知識もないなかで、新築アパートと戸建を親のために建てたのがはじまりです。あのときはもうハンコを押す手が震えましたよ…。金利が1%違ったらどうだとか、返済期間が20年と25年どっちがいいかとかよくわからず。今思うと不動産会社に言われるがままでした。(笑)
あず:うるさんにもそんな時代が!でも不動産投資に興味がなかったところから、なぜ今の道を?
うる:当時、母親が病気になったことをきっかけに、親の面倒をみようと戸建とアパートを新築したのですが、貯金もなくどちらかというとカードローンがいくらかあるような状況でした。そんななかで埼玉にあった実家を売却し、自己資金を作って不動産を購入したんです。
普通に親の暮らす家を買っても、その後の医療費や生活費を工面できないですよね。だから私は居住用の戸建に加えて、利益のためのアパートも1棟新築したんです。
あず:戸建とアパート1棟…。とんでもない額な気がしちゃうんですがぶっちゃけおいくらでした?
うる:実家を売ってローンを返済したあとに残った1000万円を自己資金にして、新たに4500万円を借り入れて、トータル5500万円でした。
不労所得で生きる毎日に「なんのために生きてんだっけ」という迷い
あず:親のための不動産を買ったことがうるさんのはじまりなんですね。でも、そこからマイクロデベロッパーになった経緯はなんだったんですか?
うる:そこには僕の人生ストーリーが関わってきます。
僕は34歳の時にネットバブルで起業をして、その会社を38歳のリーマンショック時に離れています。その後2度目のサラリーマン生活を開始しましたが、ストレスからある日突然パニック障害になりました。ストレスの少ない生活のためには、やっぱりもう一度雇われずに生きようと思いましたが、子どもも小さく、いきなり会社を辞めることは不可能。
そんななかパニック障害を発症する数年前に、親の介護をきっかけに購入した不動産が毎月5万円程度の粗利を生んでいることに気づき、「あぁ、僕のやっていることは不動産投資で、これは会社員でもできる起業だ。これを拡大して展開していけばいいんだ。」と思ったんです。
それからは独学で不動産の勉強を開始。本を40冊くらい読んで、東日本大震災のあった2011年に、当時41歳で首都圏に2棟の中古マンションと、渋谷区初台に戸建てを1 棟買いました。
あず:不動産投資まっしぐらですね!なんか話を聞いてると、そのまま不動産収入が増えてバンバンザイでいい気がしちゃったんですが。
うる:そうですね、確かに不動産投資をはじめて経済的に安定した僕は、心の余裕ができたことでサラリーマンの仕事にもすごく熱が入りました。そういう意味では、サラリーマン兼不動産投資家時代は一応完成ですよね。
だけど、その一方で僕は「なんのために生きているのか?」という実感があまり得られず悩んでいたんです。
あず:ほう。
うる:いい収入を得て、いい車に乗って、いいスーツを着て、名前のある会社で働くことはできた。だけど元々自分で事業をやりたいと思っていた僕は、「雇われながら、さらに不労所得をベースに生活している。」ということにすごく後ろめたさを感じていました。
あず:(「不労所得で生活してます」なんて言ってみたいんだが・・・)
うる:当時の僕は、3歳になった娘に「パパの夢はなに?」と聞かれたら、なんて答えようと怯えていました。「いい収入で、家族みんな幸せで、何不自由ない暮らししてるじゃない」という回答に納得できず、どこかで生きてる実感を探していたんです。
事業をやるなら賃貸の方がリスクが小さいは本当?わからないから聞いてみた
あず:なんか今私、うるさんがかっこよく見えてきちゃってます。でもぶっちゃけ、不動産を買うなんてリスキーなことをしなくても、賃貸でリスクを少なく事業を始めちゃう方がよくないですか?
うる:確かにスモールスタートなら賃貸はありですが、みなさんが思う以上に、意外と賃貸ってデメリットも大きいんですよ。
あず:例えば?
うる:賃貸で事業をはじめることのデメリットは、中長期的にみた時の費用対効果と外的要因によるリスクです。例えば、あずちゃんが館山で家賃5万円の物件を借りてカフェをはじめたとして、それだって内装や設備の初期投資に200〜300万円はかかります。
館山に限らず、地方都市で個人店だけで生業を作るのは想像以上に大変です。自分の生活費を稼ぎながら家賃を払い続け、身体が動くうちはそれでいいにしても、いずれは自分のライフスタイルの変化に伴って、人を雇いたいときもあるでしょう。
よく東京で務めていたご夫妻が、定年退職後に「夢だった飲食店を作ろう!」と移住されてくることがあるんですが、2人で悪戦苦闘した結果、気づけばそれなりに高齢になってしまったなんてこともあります。いつかは自分の自由な時間も増やしたい、そこで新しい人の関わりしろも作りたいということであれば、僕は物件を買っちゃった方が割安なケースが多いと考えています。
あず:もうちょっとうるさんの思う割安感に納得したいのですが。
うる:家賃5万円であれば、年間60万円の出費が必要ですよね。それこそ5年たてば300万円になり、小さな物件なら買えてしまいます。同じ物件を東京で買えば3000万円近くしてしまうのに、いわゆる田舎の地方都市では1/10の金額で購入可能で、しかもその後の事業にも幅が生まれます。
例えば仮に、今後あずちゃんが物件を購入してカフェをはじめたとしましょう。初期費用をかけて内装をおしゃれにし、はじめは自分の今にフィットしたカフェをやればいいですが、いずれ出産や子育てを機に仕事を休みたくなることがあるかもしれません。
そんなとき賃貸であれば、さらに人件費を出して人を雇うしかありませんが、購入していれば居抜きで貸し出すことも可能です。しかも、地方都市での不動産投資が面白いのは、東京と比べて1/10以下の金額で購入したからと言って、1/10以下で貸し出す必要がないということ。東京で家賃10万円の物件が、地方だと家賃1万円なんてことないですもんね。
仕入れ値は1/10以下。なのに、提供価格は1/10以下にならない。これも地方で不動産投資をすることが割安な理由です。
あず:たしかに事業をはじめるとなると初期投資はどちらにせよかかってくるし、その回収が1〜2年後なんてことはないと考えると、買っちゃった方がいい気がしてきました。でも地方だと物件が安く借りられるみたいな話もよく聞くし、悩んじゃいます。
うる:僕の友人にもいますが、地方でとても気のいいおばあさんに出会い、空いてる部屋を格安で借りられたなんてケースはよく聞きますね。
あず:うんうん、そうですよね。私の友達にもいます。
うる:ただ、あれも落とし穴があって、「物件費用が抑えられたので初期費用をある程度かけてがんばるぞ!」と数百万円かけてカフェをはじめたのに、2年後にそのおばあさんが亡くなって大家さんが変わるケースなんかがあるんです。
そして突然、「この場所は相続のために更地にして現金に変えます。なので、来年で契約終了でお願いします。」と実質の退去勧告を出されたりして。
あず:え…?
うる:せっかく初期費用に数百万円かけて、自分なりの事業計画で回収を目指していたのに、自分の計画とは全く違うところで、ある日突然、初期費用をかけた物件そのものがなくなることも十分ありえるんです。
あず:ええぇ…?でもそれってあれですよね。そういう事象に当たったら、「いや〜あいつちょっと運がなかったなよな」みたいなレアケースですよね?
うる:いや、結構普通にあるあるです。取り壊さないまでも、「じゃあ来年から賃料は倍にします」というパターンもあります。
要するに賃貸であるうちは、いつまでたってもあなたは物件を貸りている人でしかないんです。大家さんがそういえばそうするしかない。賃貸って、自分だけで決められないデメリットが大きくて、それが逆に大きなリスクになるんです。
マイクロデベロッパーになるために「勉強・棚卸し・資金の確保」を準備せよ
あず:じゃ…じゃあ、仮に物件を購入した方がお得だね!となった場合、どちらにしたって結構な額の初期投資は必要ですよね。そのお金はどうやって工面したら!?てゆうか、なにからはじめたら!?
うる:うん、まずは落ち着きましょうか(笑)
ひとまず物件を購入するにはある程度の自己資金が必要です。前提として200〜300万の貯金はがんばって作りましょう。今のあずちゃんなら1〜2年も勉強すれば十分な知識は身につくので、そのお金を作る間に不動産の勉強もしてしまうといいです。僕も不動産投資は独学でしたが、たくさん本を読むとすべてに共通する共通項と、それぞれの著者がもつ特有の考えが見分けられるようになりますよ。
加えて自分のリソースを棚卸しすることで、数ある方法のなかから自分はどの方法が向いているかがわかるようになるので、そんな計画を通じて、不動産投資と自分のやりたいまちづくり的活動をしていけばいいです。
あず:うるさんもそんなリソースの棚卸しをしたから今があるんですか?
うる:そうですね。僕も当時、自分が今の状況でできることはなにか?という、リソースの棚卸しをしてきました。当時は39歳という年齢、残された時間、サラリーマンという立場、そういうものを考慮した結果、会社員の信用を利用して借入をしましたが、こればかりはその人の状況によります。
例えばあずちゃんは今フリーランスですが、サラリーマンじゃない人はどこかのタイミングで法人化することで融資を受けやすくなります。
不動産投資は株式投資などと違って、「投資」の名前はあれど「投資業」ではなく「賃貸業」。不動産の担保価値があって、さらに事業としての見込みがあるので、始めるためのお金を借りることができる唯一の投資方法なんですよ。
あず:あぁ、わかるけど、でも怖い。怖いよ〜。
うる:ちなみにちょっとネタバラシ的になりますが、マイクロデベロッパー講座の入門編では、僕が何歳の時にいくらで物件を購入し、それがどの程度の利益を上げていくらで売却したか?という年表もお見せします。
今は「不動産購入なんて怖い」と思うかもしれませんが、それは長期的な視点で見られていないから。準備をした人にだけチャンスは訪れるんです。
エンジンのある働き方で、速く、快適に、遠くまで。
うる:ではここで、あずちゃんに質問です。三輪車ってどんな乗り物ですか?
あず:あれ、なんか急にバカにしてます?(笑)えぇっと、前に車輪が一つ、後ろに車輪が二つあり、それを漕ぐ乗り物です。
うる:なんか思ってた答えと違いましたが、それはさておき三輪車は安全な乗り物ですか?
あず:はい、めちゃくちゃ安全です。もうさすがにめんどくさいので、乗ることはないですけど。
うる:そうですよね。じゃあ補助輪付きの自転車は?
あず:うーん、それももう乗ることないですね。安全ではありますけど、もう私もいい大人なのでママチャリに乗れちゃいます。
うる:じゃあママチャリとロードバイクなら、どっちが速く、どっちが快適ですか?
あず:速さはロードバイクですね。でも、あれはスカートがすぐ巻き込まれるから危険!
うる:じゃあロードバイクと原チャリはどっちが速く、遠くまで行けますか?
あず:絶対原チャリ。あれ便利ですよね。楽だし。あ、でもヘルメットしなきゃ危ないです。
うる:そんな感じで、原チャリ、中型バイク、大型バイクを比べるとどうでしょう?
あず:大きくなるほど危ないですけど、速さはあると思いますよ。…って、うるさん。もしかしてこれは「働き方も同じだよ」ということを暗に私に示唆してますか!?
うる:おぉ、その通りです。今の例で言うと、実は危ないと思われている大型バイクが、一番快適に遠くまで行くことができ、実は大きいからこその安定感もあるんですよ。
あず:いや、うるさん私は騙されません。一番快適でいいよね〜と言って、免許のない私が大型バイクにまたがったら、3秒で命の危機に陥る自信があります。
うる:そうですね。だから、勉強や準備が必要です。必要な知識を得て、肌感覚で体得していくからみんな次の段階を乗りこなせるようになるんです。ロードバイクまでの乗り物は、要はエンジンがないから永遠に自分で漕ぎ続けなきゃいけない働き方をするってこと。借入をして不動産投資をするということは、自力じゃなくても走れる方法を手に入れるということでもあるんです。
あず:(最近激しく体調を崩して2週間も仕事がストップした私にも耳が痛いです…)
実践してきたから僕だからこそ伝えられること
あず:あぁ〜、なんかマイクロデベロッパー講座楽しみになっちゃったな〜。うるさんと話すようになったら、「30代女性!都内シングル向けマンションの1室からオーナーになりませんか?」なんて広告が出てきて、そういう選択肢もありか〜!なんて思ったんです♪
うる:…あずちゃん、あれはカス案件です。一番だめ。情弱(情報弱者)がひっかかるやつです。
あず:…カス?情弱?今、私すごくディスられてます?
だってだって、新築マンションで家賃も高く借りてもらえるやつを、少額から投資して買えて、そこから家賃収入も得られるんですよ?
うる:うん、だめです。(笑) 理論上はメリットしかないように見えますが、実際いくら払って、いくらで貸して、いくら手残りでっていう数字を出して見ると、全然だめなことがよくわかると思いますよ。
あず:そ…そんなこと言ったら、地方で中古物件買って、賃貸としてオープンしますって言っても、今地方だってどんどん人が減ってるんだから、いざオープンしてみたら誰も住まへんかったやん!うるさん言うから買ったのに!っていうことだって、あるかもしれないじゃないですか!(泣)
うる:それはもう楽して儲けたい人の思考になってます。そういう人はこの講座は向かないので来ないほうがいいですね。(笑)
あず:…こ…こないほうがいい…?仮にも私、運営側ですよ…?
うる:自分がきちんと勉強をして、手をかけた分、経済的にもやりがい的にも返ってくるのがマイクロデベロッパーです。「ラクして儲けたい!うるさんが言うからそうする!」だと、一番最初からけっつまずいているので、それはもう来ない方がいいです。(笑)
僕はそれぞれの成功パターンはわからないけれど、自分が悩みながらコミュニティ型賃貸、ゲストハウス、シェアハウス、飲食店、まちづくり事業と実践してきたからこそ、「これはどうなんだろう?」と選択に迷った時に「それはやめた方がいいね」って話はできると思います。
まだ不動産投資をしたことがない人も、もうすでに始めている人も、ただ不動産を購入するだけじゃなく、それを通じて自分の故郷や暮らすまちも元気にできたらという人に、館山のまちへ実際に来てもらって、知識だけではなく肌感覚でマイクロデベロッパーについて学び、一緒に未来を語れる仲間になってもらえたら嬉しいです。
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