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選手がもっと楽しんでプレーして、いいパフォーマンスを出す為に
フレンチオープンのチチパスの言葉がとてもいいなと思ったのでどう感じたかシェアしたいと思います。
・チチパスの全仏決勝後のコメント
「人生は勝つか負けるかではない。一人でも誰かと一緒でも、人生の一瞬一瞬を楽しむこと、惨めさや屈辱感のない意味のある人生を送ることが大事なんだ。トロフィーを掲げたり、勝利を祝ったりすることは素晴らしいことだけど、それがすべてではない」
Life isn't about winning or losing. It's about enjoying every single moment in life whether that's alone or with others. Living a meaningful life without misery and abjection. Lifting trophies and celebrating wins is something, but not everything.
チチパスは勝ちたかったのに負けてしまって非常に悔しいはずです。なのに“大会を通して素晴らしい経験ができた“、“この頑張った経験自体に価値がある”という視点も言葉にするほど大事にしてるのがとてもかっこいいなと感じました。
・この考え方を否定しているせいで、大事な時にパフォーマンスが出せない人がいるんじゃないか
このチチパスの言葉とは真逆で、「負けたらもっと反省しなさい」とか負けても笑ってられるなら努力が足りひんねん」とかの声を現場ではよく聞きます。
日本人で競技に対して熱が入っている人でチチパスのような考え方を持っている人って少ないんじゃないかなと思いました。
スペインのクラブでは低学年のうちに、
— Sato Josuke Joseph ◆ サッカー指導者 ◆ 心理士 ◆ (@soccer_kozou013) May 30, 2021
“試合に負けた時、「試合には負けたけど君たちはがんばった。次はどうする!?」と、自分たちの負けを素直に認める”
という指導がされるそうですが、これは日本式のよくある「負けて悔しくないのか!?」とは真逆のメンタリティを養っているように思います。
僕自身、学生時代は大事な場面で上手くパフォーマンスを出せるタイプではありませんでした。大事なときに限って練習と違うプレーをしてしまい良い部分を出せない。そんなことが多かったです。
そのときの心情として、勝たないと意味がないとか、絶対に成功させないといけないなどのプレッシャーを自分にかけていることが多かったような気がします。
メンタルトレーニングの勉強をしていたときにこんな話も聞いたことがあります。
「上手くいくかどうかはコントロールしきれないけど、トライしている今を楽しむことが大事。その為には今出来ることは何かを全力で考えて、悪い結果を恐れずに最善策でしっかりとトライしていくこと。それを忘れないように意識することはコントロールできる。」
緊張や不安とうまくつき合っていく方法として、コントロール出来ること、出来ないことをちゃんと整理するという話がありました。この考え方とチチパスの言葉は共通点があるのかなと思います。
チチパスの決勝後のコメントを聞いて、チチパスは勝とう勝とうと思いすぎたり、負けて悔しかった時(今回の準優勝とか)にそういったことを大事にしているからあの大きな舞台で戦えているんじゃないかなと思いました。
試合の終盤も劣勢でも諦めることなく、自分の出来るプレーを最後までやり抜いているように見えました。
・言い訳に使う考え方ではない
勝とうとしたことすらを否定することはただの言い訳になります。
言い訳のように
「たまたま負けただけやし」
「本気じゃなかったし」
「相手がルール違反してきたから負けただけ」
というのは同じように勝ちにこだわらないという意味では同じことかもしれません。
しかし、違いは「勝とうとしたこと」と「でも負けてしまったこと」を認識して受け止められているかだと思います。
この違いを意識して、単に甘やかすわけではないというのはわかっておかないといけないと思います。
選手、コーチ、親はどんな風に参考にできるか
・勝っている時、結果が良かった時
結果だけを褒めない、頑張った過程を認めるのが大事だと思います。
「勝ったから君はすごい」という伝わり方だと勝ちにこだわる考え方になるかもしれません。(ズルしてでも勝てばいいとか、負けそうになった時に急に弱気になってしまうとか)
例えば僕は、
「練習してたあのプレーが出て良かったね」とか「あの場面で思い切って攻めていけたのが良かったね(そのプレーが成功していなくても)」
とか言える場面を探して声かけしています。
他には
結果が良かったが、過程で諦めてしまった部分があった場合はそれも無視しないようにするのも大事だと思います。
「あの場面はポイント取れたけど、最初にこうゆうふうにプレーしたいと言っていたプレーとはちょっと違ったね、やろうと思ったけどできひんかった?」とか聞いたりもします。「あかんやん」などの否定はしないように意識します。
・負けている時、結果が悪かった時
結果が目指した目標と違っても、そこに向かって努力できたならよく頑張ったと褒めるというのはこれからの選手もパフォーマンスを左右すると思います。
勝った選手に対する声掛けと同じでいいと思います。
結果ではなく、過程がどうだったかを意識して話が出来れば、負けた時も勝った時と同じように褒める部分や出来なかったことを話し合う部分を見つけることが出来ると思います。
負けたことはしっかり認めて、頑張ったことも認める。
言い訳が少し多すぎる選手はその部分を直さないと、負けを受け止め切れずに、上手くいかなかったことに取り組めないかもしれません。
でもこれは周りがストレートに注意しても本人に伝わらないこともあるので、軽く伝えて分からなかったら自分自身で気づけるのを待つことも必要かなと思います。
指摘するばかりではなく周りの大人の価値観が変われば自然と変わりやすいと思います。
・試合中に相手にリードされた時、負けそうになった時
大事なのは結果だけではなく、今頑張っているその過程にこそ意味がある。
勝つことではなくどんな風にこの試合をプレーするかが大事と思えるかどうかだと思います。
緊張した場面、切羽詰まった場面では視点が狭く一方向からになりがちなので、勝ちたいと思った場面で「勝てなくてもいい」という視点をもてれば、ベストなバランスでリラックスして勝つためのパフォーマンスが出せると思います。
勝てなくていいというのは諦めることとは違う。
目の前の1ゲーム、1ポイントをどんな風にプレーしたいのか決めることが大事です。
ポイントを取っても取れなくても、そのポイントを取ろうとすることは前提です。そこは分かっておかないと話が変わってきます。
ジュニア選手がもっと楽しんでプレーして、いいパフォーマンスを出してほしい。
・周りの大人の影響が大きい
もっと頑張ってほしい、もっと勝ってほしいという気持ちで言っている言葉が逆のプレッシャーとなって伝わっていることがあるかもしれないので、どう伝わるかよく考えて話すことが大事だと思う。
・「負けたならもっと悔しがりなさい」
・「負けてんねんからへらへらしない」
・言葉にしていなくても、勝ったら褒めて、負けたら怒るになっている(結果が全てだと子供に思わしてしまう)
・頑張れたか、勝っても負けても楽しめたかの話がなく、こうした方が勝てたとか、こうやから負けたとか大人の目から見た反省ばかり(こども視点じゃない)
・まとめ
・声の掛け方に気をつけよう
・失敗が怖くなったときには、この考え方を思い出す。
・言い訳に使う言葉ではない。