マジメイト大槻さん(第69回優勝)インタビュー Vol.12
動画審査を勝ち抜いた出演者がステージに立ち、観客審査によって優勝者が決まるミュージカルオーディションショー、スマッシュキャバレー。今回は、2023年8月31日、第69回のショーで優勝を掴んだマジメイト大槻さんにお話を伺った。
■マジメイト大槻(まじめいと・おおつき)
役者芸人。
"マジメにふざける"をモットーに活動するパフォーマンスユニットマジメイトの代表。
YouTubeでミュージカルネタを投稿中。
2018,19 歌ネタ王決定戦準決勝
2021 R-1グランプリ準々決勝
2023 ミュージカル座『ゴーストミュージカル』ハトおばさん役
『ハリウッドは大騒ぎ』家政婦マーゴ役
12月に開催したライブ『おたのしも会〜2023冬〜』が大好評
1 今回は絶対に2曲歌いたい
― 優勝おめでとうございます!
「ありがとうございまーす!」
― 出演は3回目とのことですが、今回はどんな心持ちで臨まれたのでしょうか。
「とりあえず2曲歌えればいいなという感じでした」
8組の出演者の内、決勝(2曲目)に進めるのは投票数上位の4組のみ。大槻さんは初出演時(第60回)、フリップ芸を交えた演技で見事、決勝に進出。しかし、2回目(第63回)は惜しくも準決勝までの出演となった。
「前回はコメディというテーマで決勝に行けなかったんです。事前に候補曲を歌うYouTubeライブもやってたのに、“恥ず…”と思って(笑)。しかも、応募の前日もR1(グランプリ)に落ちて、ダブルで落ち込んでたので、今回は絶対に2曲歌わないと恥ずかしいなと」
2 お客様は共犯者!?
第69回のテーマは、既成曲で綴られた「ジュークボックスミュージカル」。
その中で、大槻さんが準決勝に選んだ曲は、ミュージカルファンの間では“マニマニ”の通称で親しまれるABBAの名曲「Money, Money, Money」(『マンマ・ミーア!』)だ。歌う前に曲中の手拍子を観客にレクチャーし、歌唱中も積極的に客席に絡んでいく大槻さん。客席参加型の演出で会場をおおいに盛り上げた。
― いつも会場を巻き込んだ演出を展開される大槻さんですが、本番にはどんな意識で臨まれているんでしょうか?
「芸人っていうのもあって、どう笑いを取ろうかっていうことしか考えてないかもしれない(笑)」
― 緊張はされる方ですか?
「緊張してますけど、お客さんのリアクションが来ると、もうそこからは調子に乗っちゃって(笑)。お客さんに絡むのが好きなんですよ。絡んだ時のお客さんの表情を見て、私も緊張がほぐれるというか」
― 相乗効果のような・・・
「そうです。共犯者みたいな。“あなたもこっち側だよね?”という。人前で歌えるのがスマッシュの良さなので、お客さんと一緒に楽しめないと意味がないと思ってます。そして、お客さんの心を掴めば票も掴めるんじゃないかという下心も(笑)」
3 有名な曲を如何に崩せるか
ちゃんと歌いたい。でも、やっぱり・・・!?
見事、決勝進出を果たした大槻さんは、随所で笑いを取っていたこれまでとは一転、優勝に向けてマジメに歌うことを宣言。作品名と同タイトルの「マンマ・ミーア!」を披露した。
「有名な曲だからこそ、みんなのイメージって固まっちゃってるじゃないですか。だから、それを自分流に楽しみたいなと思って。いかに崩せるかみたいな」
と語る大槻さん。序盤こそドナ役になりきっていたが、中盤あたりから何やらムズムズモードに。間奏では、“ふざけちゃダメ!”と必死で衝動を抑えるも、終盤に突入すると、ついに宣言を破り、“マンマ・ミーア!!”の雄叫びと共に全身を震わせるオリジナルダンスが炸裂。迫真の演技(!?)で客席を笑いの渦に巻き込んだ。
「勝つためにちゃんと歌いたい。でも、やっぱりふざけたくなっちゃう。抑えられないっていう」
― 最高のオチでした!ところで、ダンスの振りは即興ですか?
「そうですね(笑)。アハハ!あれは本能です。そこら辺はその時にやりたいことを。練習苦手なんです」
緻密な演出と、乗りと感覚に任せて暴れ回る大胆さ。両者が合わさって、初めて大槻さんならではの世界観が完成することを実感させられた決勝であった。観客の心をガッチリ掴み、自らも楽しみ切るという彼女の徹底した精神こそが今回の優勝を引き寄せたのかもしれない。
4 無料でエントリーできるというのはすごく大きい
― 大槻さんにとって、スマッシュキャバレーの魅力とは何ですか?
「タダでエントリーできるところ!半分冗談ですけど(笑)。お笑いや他のミュージカル系のライブでも必ずエントリー料がかかる。それは私、主宰もやるのでわかるんです。だけど、それで敷居が高くなって諦めている若い子がいる。だから、そういう人にとって無料っていうのはすごく大きいということを声を大にして言いたいです。あと、運営さんもしっかりされていて、安心して飛び込めるところだなって」
5 目標はオリジナルミュージカルの上演
ー ご自身の肩書きについてはどのように捉えていらっしゃいますか?
「役者芸人って名乗ってるんです。いろんなことをやろう。マジメにふざけようっていうコンセプトのパフォーマンスユニット マジメイトの代表なので、役者も芸人も、何でもやるよっていう(笑)」
― 大槻さんは、お客様はもちろんですが、出演される度に共演者の方とも積極的に交流されていますよね。
「それは、私があまり友達がいないので、コロナでずっと引きこもっていたのもあって、たくさんの人と関われるのが目茶苦茶嬉しくて舞い上がっているのと、あとはマジメイトの公演に出てもらえる人を探しているというのもあります」
― なるほど。ご自身の活動に繋げる目的もあるんですね。
「はい。スカウトしてます。やる気ある人しかいないし、人柄や、人前で歌った時のパフォーマンスもわかるので」
― 最後に、今後の夢や展望があればお聞かせください。
「目標は自分のオリジナルミュージカルを上演すること。なので、そのために、一緒にマジメにふざけてくれる仲間を募集してます!」
― 益々のご活躍を期待しています。本日はおめでとうございました!
「本当にありがとうございましたー!」
役者芸人というオリジナルの肩書きで参戦し、スマッシュキャバレーに新風を巻き起こしたマジメイト大槻さん。その「マジメにふざける」精神を武器に、日本のミュージカル界に独自のジャンルを確立していただきたいものである。
(Tateko)
企画構成・編集:Tateko
写真:中山駿
協力:SMASH CABARET https://smashcabaret.com/
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