太田智佳さん(第61回優勝)インタビュー Vol.5-2
前回に引き続き、ミュージカルオーディションショー・第61回スマッシュキャバレーで優勝した太田智佳さんのインタビューをお届けする。
★前編はこちら(スマッシュキャバレー編Vol.5−1)
3 決勝と準決勝のコントラスト
目標にしていた俳優の存在
決勝で太田さんが選んだのは、準決勝とは全く異なり、少し笑えてちょっとした毒もある個性的な1曲。
動物の鳴き声にも似た独特な声色のスキャットや、はめていた黒の長手袋を徐に外し、大きく文字が書かれた両腕を広げながらの大熱唱と、その振り切った演技は観る者の心を鷲掴みにするような強烈な印象を残した。
ー 決勝と準決勝の選曲のバランスはどのように考えられていましたか?
「ギャップというか、1曲目は真面目で、2曲目がちょっとおちゃらけた感じで、コントラストがつけられたらいいなと思っていました」
ー 決勝では思い切ったインパクトの強い演技が印象的でしたが、演じるにあたって意識されたことはありますか?
「オリジナル(キャスト)の人が、もう本当にイカれているんじゃないかっていうぐらいやっていて(笑)。『ウィキッド』でグリンダをやっていたアリー・マウジーさんという方なんですけど、目標がその人でした。普段は普通なのに、その役では“こんなこと思いつく!?”っていうぐらい、頭のネジが外れたちょっとやばい奴みたいな、クレイジーな感じなんです!こんなに弾けられたらいいなと思って」
準決勝とは全く違うカラーを打ち出し、表現の幅の広さでも観客を驚かせた太田さん。しかし、特筆すべきは、その大胆な演技の中に役自体がもつ小悪魔的な魅力や憎めなさが絶妙なバランスで表現されていたことであろう。受けを狙うのではなく、キャラクターの本質を掴んだ上で見事に演じ切った太田さんの表現力に改めて拍手を送りたい。
4 MCとパフォーマンス時の印象の違い
そして、今回、非常に驚かされたのが、MCの時とパフォーマンス中における太田さんの印象の違いだ。前者での笑顔を絶やさず、謙虚で親しみやすい雰囲気と、後者で作品の世界にグッと入り込んだ時の肝が据わった存在感。このギャップについては、周囲の人からも指摘されたことがあるという。
「“表情も変わるし、誰?ってなるよ”っていつも言われます。ヘラヘラしている感じなのに、歌になると急に別人格になるって(笑)」
― 親しい方がそう仰っているんですね!では、ご自身の中ではどう感じていらっしゃいますか?
「別人格になったという感覚はなくて、勝手にスイッチがスッと入るなと」
― もしかしたら、無意識の内にモードが切り替わっているのかもしれませんね。
「はい、多分」
無駄な力を入れることなく、前奏が流れると自然に役の世界に没入していく姿に、彼女の俳優としての天性の素質を垣間見た気がした。
5 ニューヨーク留学の夢
個性や自分らしさを表現しつつ、お客さんを楽しませること
― 最後に、今後の展望があればお聞かせください。
「今、ニューヨークに留学をしようかと考えていて。向こうの俳優さんってエネルギッシュだし、すごくパワフルだし、同じ役をいろんな人が演っているけれど、1人1人全然違う個性があるのがすごくいいなと思って。個性や自分らしさを表現しつつ、お客さんを楽しませることができる俳優さんになりたいなと思っています」
― 今日はお疲れのところ、どうもありがとうございました。そして、おめでとうございました!
「ありがとうございました!もう、まさかまさかでした(笑)」
6 1人の中にある多彩な顔と、本来の魅力
準決勝と決勝。そして、パフォーマンスとMC。限られた時間の中でさまざまな顔を見せてくださった太田さんだが、興味深かったのは、不思議とどの一面からも本来の彼女らしさが見て取れたことである。
普段の飾らないお人柄。そして、歌においても、意図的なものではなく、人生経験の投影や役のキャラクターを追求する中で自然と表れてくる“自分らしさ”の引力を実感させられたステージであった。
1人のアーティストの中にある多彩な顔と、その中で炙り出しのように見えてくる"その人本来の魅力"を同時に堪能できることもスマッシュキャバレーの大きな醍醐味と言えるのではないだろうか。
(Tateko)
■プロフィール: 太田 智佳(おおた・ちか)
千葉県出身。中学生の時にミュージカルに出会い、高校生から俳優を志し、演劇について勉強し始める。現在は憧れだったNYで演劇留学をする為にカフェでアルバイトをしながら歌、ダンスなどのレッスンに通っている。
目標はブロードウェイの舞台に立つ事。
文章・企画構成:Tateko
写真:中山駿
協力:SMASH CABARET https://smashcabaret.com/
中目黒TRY
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