黒川桃花さん、成川諒さん(第64回優勝)インタビュー Vol.8-1
動画審査を勝ち抜いた出演者がパフォーマンスを行い、観客審査によって優勝者が決まるコンペティション形式のミュージカルオーディションショー、スマッシュキャバレー。
2023年3月24日。第64回のショーが開催された。
テーマはフリー。思い思いの表現でステージを彩る出演者たちに、客席からは大きな拍手が送られていた。そして、見事、優勝を手にしたのは、黒川桃花さん、成川諒さん(デュオ)だ。今回は、高校の同級生で、色々な舞台で共演してきたというお二人にお話を伺った。
今回はその前編をお届けする。(後編はこちら♫)
■ 黒川 桃花(くろかわ・ももか)
近所のスクールに連れて行ってもらったことがきっかけで、ミュージカルの世界を知る。
幼少期は子役として舞台やテレビに出演。
現在は音楽大学に進学し、音楽を専門的に学んでいる。
死ぬまでにとっても綺麗なオムレツを作れるようになりたいと考えている。
■ 成川 諒(なるかわ・りょう)
幼い頃にミュージカルを初観劇し、可愛いドレス衣装に憧れを抱き児童劇団大きな夢に所属。
退団後もフリーで舞台に出演している。
好きな食べ物は抹茶のお菓子とカヌレ♡
1 パッションを持っている子たちの中で歌えて楽しかった
職業や国、年齢を含め、多種多様なバックボーンを持つ出演者が集まるスマッシュキャバレー。最近では、年齢が低いアーティストの参加も増えているが、今回は決勝進出者の全員が10代という珍しい顔ぶれとなった。
― 優勝おめでとうございます!
成川・黒川 ありがとうございます。
― この春、高校を卒業されたばかりのフレッシュなお二人ですが、意外にも、今回の決勝進出者の中では最年長でしたね。そのような中、決勝に臨まれてみて、いかがでしたか?
黒川 小学生や、もうすぐ中学生になる子たちの中で戦うことはあまりないので、(決勝進出者として)名前を呼ばれて舞台上に出た時に、小さい子しかいなくて「えー!」という感じで(笑)。でも、その場もすごく温かかったし、それぞれにすごい個性があって、素敵な声で!パッションを持っている子たちの中で歌えて、とても楽しかったです。
2 スマッシュキャバレーは楽しみながら好きな歌を披露する場所
大好きな友達と歌を披露できて、結果につながった喜び
― 優勝者として名前を呼ばれた時は、どんなお気持ちでしたか?
成川 率直に、本当に実感がなくて。でも、名前を呼ばれた時は「本当に私たちが優勝したんだ!」と感じました。他の大会やコンクールにも出たことがありますが、スマッシュキャバレーは他とは違って、みんなが楽しみながら自分の好きな歌を披露する場所。安心して歌うことができたし、大好きな友達と、高校の時にずっと切磋琢磨して練習した歌を披露できて、結果につながったのがすごく嬉しかったです。
3 「Somewhere」は私たちの歌い方を活かせる曲
準決勝の曲は「Somewhere」。『ウエストサイド物語』でお馴染みの名曲だ。MCでは、高校卒業後は別々の道を行くが、またどこかで一緒に輝きたいという思いが曲の内容と重なったとことを明かされていたお二人。一方で、選曲時には、他にも意識したことがあったそうだ。
成川 他にも色々な曲の案を出していたんですが、自分たちに合う曲を選ぶことを優先しました。
黒川 実は、境遇的には“「For Good」(※)も合ってるよね”と話していたんですが、「Somewhere」の方が私たちの歌い方を活かせるかなと。声質が2人とも割と地声寄りなので、皆さんが“おーっ!”とびっくりするような迫力がある曲がいいなと思いました。
スタンダードな曲は、観客も感情移入がしやすい反面、耳馴染みがある分、強い印象を残しづらいという難しさもある。
しかし、今回、驚かされたのは、お二人が、奇をてらった演出を加えることなく、まっすぐに歌い切っていたことだ。シンプルな構成だからこそ、声の共鳴や、信頼関係、本番にかける熱い思いがダイレクトに心に響いてきた。
曲のテーマとの接点だけでなく、自分たちの歌い方を客観的に捉える視点。そして、何より、ポピュラーな曲をストレートに歌い切れる高い歌唱力が、今回の心揺さぶる演技に繋がったのではないだろうか。
※「For Good」:『オズの魔法使い』に登場する西の悪い魔女エルファバと南の良い魔女グリンダを主人公にした『Wicked』より、二人が友情を確めあう曲。
4 決勝曲「In His Eyes」への思い
「これはやるしかない」
決勝の曲は、『ジキルとハイド』から、フランク・ワイルドホーン作曲の「In His Eyes」。ヘンリー・ジキルの婚約者エマと、彼に思いを寄せる娼婦ルーシーが歌う曲だ。ミュージカルの女性デュエットの定番とも言えるこの曲を提案したのは、黒川さんだったという。
黒川 ワイルドホーンさんの曲の中でも「In His Eyes」が大好きで。すごく素敵なメロディーでずっと歌いたかったんですが、1人では歌えない曲なので、“これはやるしかない”と力強く提案しました(笑)
ー 成川さんは、提案を受けてどう思われましたか?
成川 女性同士のデュエットって本当に少なくて、探すのが大変だったんですが、聴いたらすごくいい曲で。“人の心を魅了するような曲を歌ってみたいな”と思っていたので、 “やってみたい!”と伝えました。
― お二人にとって、さらに思い入れの深い曲になりましたね。
さて、今回は、ルーシーのパートを黒川さん、エマを成川さんが歌われましたが、役を意識されましたか?それとも、ご自身として歌われていたのでしょうか?
成川 私は作品の内容を調べて、この会場を『ジキルとハイド』の雰囲気にしたいなと思って、自分自身というよりかはエマの気持ちになって歌いました。
― 黒川さんはいかがでしたか?
黒川 ストーリーを意識しながらも、2人の感情の波を合わせることで、お客さんに伝わり、世界観が広がればいいなと思って歌いました。2人の解釈を混ぜ合わせると、世界観の鮮やかさや広がりが、1人の時の倍以上出せるので。
ルーシーのピュアな魂やエマの芯の強さ。そして、ダイナミックなグルーブとスケール感。決勝では、劇中のドラマティックな雰囲気に、お二人の歌唱力と息の合った表現が見事にマッチして、デュエットの魅力が存分に発揮されていた。
★インタビュー後編(スマッシュキャバレー編Vol.8-2)はこちら♪
文章・企画構成:Tateko
写真:中山駿
協力:SMASH CABARET https://smashcabaret.com/
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