神谷友里杏さん(第66回優勝)インタビュー Vol.10
動画審査を勝ち抜いた出演者が演技を行い、観客審査によって優勝者が決まるミュージカルオーディションショー、スマッシュキャバレー。
今回は、2023年5月26日、第66回のショーで優勝に輝いた神谷友里杏さんにお話を伺った。
◾️神谷 友里杏(かみや・ゆりあ)
東京都出身。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。現在は、浜松町でラジオ局員として働く社会人2年目。幼い頃クラシックバレエを習い、中学高校は英語ミュージカル部に所属。大学時代は早稲田大学公認サークルSeiren Musical Projectにて本格的にミュージカル活動に打ち込む。現在も社会人として働く傍ら、精力的に歌の活動を続ける。
1 結果を残そうという思い
ー 優勝者として名前を呼ばれた瞬間のお気持ちはいかがでしたか?
「感無量でした。こんなに何かを自分が頑張って、そのリアクションとして涙を流すことってすごく久々だったなって」
スマッシュキャバレーへの出演は今回で3回目。初出演は2017年12月(第10回)だったという。
「超初期で、その時は友達と出たんです」
初回はデュエット。少し間を置き、2022年11月、第60回で初のソロでの出演を果たした。
ー 3度目となる今回、本番にはどのようなスタンスで臨まれましたか?
「一番、しっかり練習しました。前は楽しもうという気持ちの方が強かったんですけど、今回は、楽しみつつ、やっぱり結果を残そうという思いもあったので、それが違いかなと」
2曲の出番の中で、役の感情とご自身のキャラクターを色濃く表現してみせた神谷さん。歌にかける並々ならぬ集中力に、出演を重ねることで芽生えた優勝への意識を感じ取ることができたように思う。
近年では、何度かの出演を経て優勝に輝く者も増えているスマッシュキャバレー。選曲、表現、ステージでの居方、そして、本番に臨む姿勢と、回を重ねる度に新たな課題に挑んでいく出演者たちの勇姿にもエールを送りたいものである。
2 綿密な準備と、本番での自由なスタンス
ピュアな愛を少しコミカルなニュアンスも交えながら演じた準決勝、そして、アンニュイな世界観の中で禁断の恋心を切なく歌い上げた決勝。今回、特に印象的だったのは、雰囲気の異なる2曲にも関わらず、神谷さんの艶やかな声の質感がどちらにも非常にマッチし、魅力的に心に響いてきたことだ。そのことを伝えると、
「コミカルさだったり、ちょっとリリカルな感じが声にも合ってるのかなと思います」
と分析してくださった。
本番に向けては、楽譜を読み込み、頭の中で何回もイメージトレーニングをするという神谷さん。しかし、いざステージに上がるとまた違う境地に達するようだ。
「本番になったら、逆に、本能的なモードに切り替わるタイプ。のびのびとできたと思います」
感情の揺れや息の使い方、語尾の言葉の収め方まで、緻密に表現しきる集中力。そして、その中に自然に立ち現れてくる妖艶な空気感。綿密な準備と、本番での自由なスタンスの絶妙なバランスが、今回の魅力的な演技に繋がっていたのかもしれない。
3 歌うことと、ラジオの仕事
表と裏、両方の立場を経験すること
普段はラジオ局に勤務している。歌うこととラジオの仕事は大きく括れば同じエンタメ分野であるが、当然ながら、その立ち位置は全く異なるそうだ。
「表に立って表現する方と、裏で支える方なので、両極端のことをやっているんですけど、両方の立場がわかるとそれぞれの大変さがわかる。両方を経験することで、総じて自分の好きなエンタメを頑張っているという感じですね」
その充実感あふれる表情からは、双方向からエンタメに関わるという得難い経験が、どちらの現場においても大きな糧となっていることが窺えた。
社会人として揉まれる経験
一方で、社会人としての奮闘そのものが歌に及ぼす影響も感じているという。
「ラジオだけに限らないと思うんですけど、社会人になって、組織の中で仕事を頑張って、色々うまくいかないことも経験する。社会で揉まれる経験が、割と色んな歌の表現に活かせているかなと思っています」
― では逆に、ミュージカルナンバーを歌う経験がお仕事に活きている部分はありますか?
「そうですね。音楽を毎日は扱っているので、やっぱりそういうところでセンスとか感性が活かせるかなと思っています」
― ラジオと音楽の関わりは密接ですものね。ラジオにも、何かミュージカル的な要素を取り入れたいという思いはありますか?
「はい。番組のゲストにミュージカルの方を呼んだり、ミュージカルのこと取り上げて、ファンの人たちと一緒に盛り上がっていくような番組作りなどができたらいいなと思います」
4 歌のルーツはミュージカル
「私の歌のルーツはミュージカル。もう一番好きで、中学・高校・大学とずっと、ミュージカルのサークルや部活に入っていたんです」
数多ある曲の中で、特にミュージカルナンバーを歌う理由について熱く語ってくださった神谷さん。今後は歌い手としても、さらなる高みを目指していくようだ。
「仕事を続けながらも、歌い手としては、やっぱりこういう活動をもっと太くしてきたいので、コンサートやいろんなライブに出たり、もっと積極的に。これで1個ステップを踏んだと思うので、次のステップをもう1回探そうかなと思っています」
ミュージカルの歌い手と、ラジオ局での仕事。今回のインタビューを通じて、2つのフィールドにおけるご自身の在り方を冷静に見つめ、それぞれの道で着実に歩みを進める彼女のパワフルかつ聡明な横顔に触れたように思う。
スマッシュキャバレーの出演者には、ミュージカルとは異なる仕事を持ちながら、歌に情熱を注いでいる方も多い。
それぞれの場で経験を重ね、時に両者をリンクさせながら、今後、神谷さんの表現にどのような味わいが加わっていくのか。ブレない芯を持ちつつも、変化を重ねていくであろうその歌にまた出会える日を楽しみに待ちたい。
(Tateko)
企画構成・編集:Tateko
写真:中山駿
協力:SMASH CABARET https://smashcabaret.com/
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