【ことば】大学生が『歌に形はないけれど』の美しさを語る①/日本語の色彩表現について/歌詞を味見する
こんにちは。立羽ひかりです。
自分の心の中にある大切な「ことば」を全部じゃなくてもいいから
一部だけ聞いてほしい、という思いから、私は「ことばを味見する」という表現を使っています。
初回は、dorikoさんのボカロ楽曲『歌に形はないけれど』の歌詞を
食べていきましょう!
『歌に形はないけれど』の日本語が美しい
dorikoさんのボカロ楽曲『歌に形はないけれど』は2008年にニコニコ動画に投稿されました。現在はYouTubeでも聴くことができます。
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何回聴いても美しいなと。
いや、でも待って、「美しい」の定義って何なんでしょうか(今更)。
私は「美しい」と思いますが、他の人にとっては「美しい」だけだと
抽象的すぎて上手く伝わっていないような気がします。
そもそも「美しさの定義」って誰が決めたんだって思いますよね。
今回は私が思う「日本語の美しさ」について歌詞と絡めながら紹介します。
「美しい」の定義
私は、日本語を勉強するうえで「色彩表現」の豊かさに美しさを感じます。
この歌は最初から色を表す言葉(以下、色彩語という)が出てくるんです!
いやここで「薄紅」を持ってくるの凄すぎませんか?普段生活していて
「薄紅色だ〜」なんて使いますか?いや使いません。(反語)
私だったら「ピンク」を使いそうなのに…
英語にしたら薄ピンクも薄紅色も真っピンクも全てpinkになってしまうのでしょうか。
英語と日本語の色彩語を比較すると、その多様さが目に見えてわかります。以前、大学の研究で『シャーロックホームズの帰還』から『空家の冒険』、『暗号舞踏人の謎』、『自転車嬢の危難』、『シャーロックホームズの記憶』から『株式仲買店々員』、『黄色な顔』、『グロリア・スコット号』、『白銀の失踪』、『入院患者』のテキストを対象として、三上訳の8作品に登場する「色」が後に続く語と原文の色彩語の数を比べました。※()内は登場数
black(32)grey(20)red(16)gold(11)yellow(12)
brown(6)purple(2)
灰色(12)黄色(7)褐色(3)紫色(2)赤色(2)黒色(2)
以下全て(1)黄褐色・ばら色・石板灰色・金色・黄金色・鼠色・
菫色・青色・淡紅色・緑色・白い色・鳩色
こうして見てみると、日本語の色彩語がいかに豊かで、それでいて複雑かがよくわかります。だからこそ、私は見たままの色をどう表現するか試行錯誤して言語化された日本語の色彩語を美しいと感じます。
歌詞における「色」
『歌に形はないけれど』は実際に存在する色が使われています。
ただ、存在しない「色」を歌詞にするのもまた美しいなと私は思います。
松本隆さんが生み出す歌詞は、まさにそれです。
松本隆さんの“色”
いや、春色ってなんだ…?
汽車は黒や茶色のイメージだけれど、それを春色って表現してるんですよ。
これを初めて聴いたときは目から鱗でしたね…色って存在しないものでもいいのか!!と。
でも、ここでいう「春」はもちろん歌詞に登場する「4月」と相まって季節の「春」という意味もありますが、きっと恋をしている=春が来た、という
意味の「春」でもあるんじゃないかなと個人的には思っています。
「春色」があるってことは「夏色」もあるんじゃないか…?
そんな安直な考えを巡らせながら、歌詞サイトを徘徊すること15分。
ついに見つけました!!
良い意味で期待を裏切られました。「夏色」じゃなくて「常夏色」なの?!
常夏ということは「めちゃくちゃ暑い」のでは?!?!
個人的には「夏色」が「常夏色」になるだけで、かなり温度が上がる気がするんですよね。改めて、日本語の持つ力って不思議だなと。
そして極めつけはその後の「小麦色」。きっと肌が焼けているってことだと思うので、とても暑そう。
この時代では「小麦色」というと健康的な肌色になるのでしょうか?
現代では健康的というより「日焼けした肌」というイメージのほうが強いので、茶色っぽい肌でマーメイド、、、なんだか今考えると不思議ですね。
「美白」だとか「色白」が綺麗だと言われることが多い今の世の中では
「小麦色」をマーメイドと比喩する人は少なそうだなって思いました。
もちろん焼けている肌が悪いとかではなく、私個人としては、肌が白くなることを売りにした化粧品が最近多いと感じるので、この歌詞をまっすぐ受け止められない自分が悔しいです。
春・夏ときたら「秋色」や「冬色」もあるの????
気になりすぎて夜な夜な調べたところ、「秋色」は見つけられませんでした。
もし知っている方がいたら教えてください!
色に正解はない
なんだか『歌に形はないけれど』の歌詞よりも、松本さんの歌詞を
味見しすぎてお腹いっぱいになってしまいました。
結局、私が言いたかったのは、日本語の色彩語に正解はないし、どんな表現もできるからこそ、自分が知らない感性に出会うと「美しい」と感じてしまいがちなんだということです。
「そんな言い方もあるのか」「あなたにはそう見えるのか」そう感じるだけで
ワクワクします。
次回はもうちょっと『歌に形はないけれど』の歌詞を味見しようと思います。「具体と抽象」について考える予定です!
ここまで読んでくださりありがとうございました。
またお会いしましょう!!!