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【ことば】大学生が『歌に形はないけれど』の美しさを語る②/具体と抽象について/歌詞を味見する
こんにちは。立羽ひかりです。
自分の心の中にある大切な「ことば」を全部じゃなくてもいいから
一部だけ聞いてほしい、という思いから、私は「ことばを味見する」という表現を使っています。
今回は、dorikoさんのボカロ楽曲『歌に形はないけれど』の歌詞を
食べていきます。
具体と抽象
前回は『歌に形はないけれど』の色彩語に注目しながら、私がいかに日本語の色彩語が好きかを熱く語ってしまいました…
ちなみに前回のnoteはこちら↓↓↓
今回は、歌詞の具体と抽象に焦点を当てて「美しい」と感じるポイントを
味見しようと思います。
「砂の城」という具体
私がこの歌で1番好きな歌詞が「砂の城」が登場する部分です。
鮮やかな日々に
僕らが残した
砂の城は波に溶けて
きっと夢が終わる
この歌詞は「砂で作られたお城ってキラキラしてるよね」という共通認識があって初めて活きると思うんです。
みんなで手を汚しながら、崩さないように慎重に作り上げる砂のお城。
でも波がきたら一瞬でそのお城は溶けて無くなってしまう。
頑張って頑張って築き上げてきた夢とそれが無くなる喪失感を
砂のお城を作る達成感とそれが一瞬で消えてしまう儚さに例えているのが
美しいなと思います。
だって、「夢が消えた」だけでも伝わるはずなのにそれを砂の城と波に喩えてるんですよ?!いや、本当に美しいなと思いますね。(我ながら変態っぽい)
しかも、2番でも「砂の城」が登場するんです。
透通る波
何度消えてしまっても
砂の城を僕は君と残すだろう
ここでは砂の城が波によって消えることが分かっていながら、作ることを諦めない、少し前向きな歌詞になってるなと思います。
抽象は美しい???
何だかここまで「夢」とその過程を、「砂の城と波」に喩えて話していたように思いますが、実はこの歌詞を最後まで読むと「夢叶える!頑張る!」って感じではないんですよね。
むしろ抽象的な歌詞が多くて、ストーリー性がある歌詞からは遠いように思います。ここでいう「抽象的」とは、具体性に欠けている様子を表します。
しかし、そんな抽象的な歌詞の中に美しさを感じるのはなぜか?を考えたくなったので、まだまだ歌詞を食べ続けようと思います。
僕は歌うよ
笑顔をくれた君が泣いてるとき
頼りのない僕だけれど
君のことを守りたい
遠く離れた君のもとへ
この光が
空を越えて羽ばたいてゆく
そんな歌を届けたい
僕が送るものは全て
形のないものだけど
君の心の片隅で
輝く星になりたい
なんかふわっとしてません???
言語化するのが難しいんですが、めちゃくちゃ強いメッセージ性があるわけでもないのに、なんだか好きなんですこの歌詞。
綺麗な歌詞だなーって、いつも思いながら聴いてますね、はい。
具体性に欠けるということは、そもそも動き的な描写がないからなのではないか?!と考えました。
歌詞を数量的に考える
そこで、『歌に形はないけれど』の歌詞を形態素解析して、品詞の比率を見てみることにしました。
※「形態素解析」とは、簡単に言うと、自然言語で書かれたテキストを単語に分解して品詞や活用形などを割り出すことです。
比較対象に選んだのは、ストーリー性のある歌詞が特徴的なOfficial髭男dismの『115万キロのフィルム』。具体的な歌詞だな〜と思ったので選んでみました。
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あれ…そこまで数値が変わらないぞ???
抽象的に感じる原因ってもしかしたら名詞の中身かもしれない…
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歌詞に含まれる名詞(代名詞を含まない)を一覧にしたところ、なんとなくですが形の定まらないモノが多いように感じました。
概念とはまた違いますが、常に形が変化するもの、そもそも色々な形が存在しているもの、そういった名詞が使われています。
あれ…??形がないもの……『歌に形はないけれど』……
え!!!!タイトル回収やん!!!!!!!!
いや、なんか上手くまとめたみたいになってますが、確かに歌に形がないように、光にも波にも笑顔にも空にも決まった形は存在しないなと。
もちろん作者様の考えガン無視で突き進んでいるので、ファンのこういった考察もあるんだな〜と軽く感じてもらえれば幸いです。
【まとめ】結局、日本語の「美しさ」ってなに???
私が感じる美しさは、色彩表現の豊かさと、名詞の並びなのかなと思いました。空とか光とか自分の手では届かないものが並んでいるのが好きなんだと思います。あとは、比喩表現。具体性のある例えかつそれが景色として美しいものが好きです(砂の城と波など)。
そして「歌」なのでメロディに引っ張られているのもあると思います…これがロック調だったら美しいと思えていたか怪しい…
あーーー!もっと上手く言語化できるようになりたい!!!
ここまで読んでくださりありがとうございました。
またお会いしましょう!!!
そしてこのnoteを読んで気になった方はぜひ聴いてみてください。
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