装震拳士グラライザー_設定集__3_

阿吽昇天 Part8 #グラライザー

第1話
「阿吽昇天:装震拳士グラライザー(68)」

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前回のあらすじ
 千寿菊之助は68歳のヒーローである。彼はかつての宿敵・人造人間リュウと協力し、襲いきたハイドロ帝国の怪人たちと戦いを繰り広げていた。
 一度は追い詰められた菊之助とリュウであったが、その逆転劇が幕を開けた。菊之助がウィッチアコヤを撃破したのに続き、コクリュウもまた、シャチデビルを圧倒し、両断したのだった。

 ──その頃、俺とカジキヤイバは壮絶な打ち合いを続けていた。

 カジキヤイバの繰り出した斬撃を叩き落とすと、敵は即座に逆のサーベルを繰り出した。装震拳で殴って防ぎつつ繰り出した蹴りは、カジキの繰り出した膝で相殺される。

 ラッシュ、ラッシュ、ラッシュ。拳とサーベルがぶつかり合って猛烈な火花が散り、周囲の地面が蜘蛛の巣状にヒビ割れる! 鳥が迷い込んできたら一瞬でミンチになるであろう打ち合いを制したのは──

 カジキヤイバであった。

「ツェィッ!」「ムっ……!?」

 サーベルと激突した俺の拳が押し切られ、俺の右腕が跳ね上がる。更に繰り出された左の刃を、俺は身を捩って回避。……体勢が、崩れる!

 その瞬間を見逃さず、カジキヤイバは力強く踏み込んだ。その第三の刃、ノコギリめいて鋭い鼻刃を、俺の心臓めがけて繰り出す!

「死ね、グラライザー!」

「っ……」

 コクリュウの鎧すら斬り裂いた刃だ、俺の鎧が防げるわけがない。鈍化する世界の中、致命の一撃が迫る。殺意に燃えるカジキヤイバの瞳が俺を捉える。俺は──

 自分の左手を、鼻刃の先端にかざした。

「なんの……これしきッ!」

 血がしぶく。鼻刃はガントレットごと左手のひらをあっさりと貫通し、更にそれでも抑えきれず、胸部装甲を貫通した!

 が──俺の心臓は、無事だ。

「なにっ……!?」

「痛ってぇなァ、コンニャロォッ!」

 鼻刃が根元まで突き刺さった状態で、俺はカジキヤイバの顔面を鷲掴みにした。そしてぐいと引き寄せると、姿勢の崩れたボディに渾身の右フックを叩き込む!

「ごあっ……!?」

 怪人の身体が吹き飛び、左手から刃が抜けた。ぼたぼたと血が垂れる。めちゃくちゃ痛い。俺は歯を食いしばって拳を握り込み、構えた。互いの間合いが再び開く──

 ──一方、リュウは、イカオーガを着実に追い詰めていた。

「ゲソォッ……ゲソッ……クソォッ……!」

 先ほど復活させたにも関わらず、イカオーガは早くも四本脚となっていた。そこら中にイカゲソが散らばる中、怪人は必至でコクリュウから距離を取る。

「観念しろイカ野郎。大人しく刺身になれ」

 その様を眺めつつ悠然と剣を担ぎ、コクリュウは敵に言い放つ。

「やぁぁだねぇ! 生き汚なさが俺の本懐だァ!」

 イカオーガは言い返しながら更に跳躍。それを追ってコクリュウが踏み出すが──

 同時に、斬り飛ばされホヤホヤのイカゲソが爆ぜた。

「むっ……!?」

 派手な音が鳴り響く。装震装甲のお蔭で大したダメージはないようだが、コクリュウの足を止めるには十分だったようだ。10メートルほどの距離を置き、イカオーガは着地して──その全身に、力を込めた。

「ゲッソゲソ……そうだ、俺は死なんぞ……!」

 ばぢり、ばぢり。

 イカオーガの周囲で、血色の稲妻が爆ぜた。その身に宿すエネルギーが膨れ上がってゆく。禍々しきヨモツの力が赤き嵐となって顕現する。

 突如高まったその力に、俺とカジキヤイバは同時に空を見上げる。イカオーガは、その様子を見下ろして──口を開いた。

「……ここで死ぬわけにはいかんのだ。どんな手を、使ってもなァッ!」

 直後、雷が落ちた。

 ──カジキヤイバに。

「ッ──…………!?」「どわっ!?」

 爆音と共に生じた血色の落雷が、悲鳴ごとカジキヤイバを呑み込んだ。咄嗟に飛び退いた俺の見る前で、カジキヤイバの身体が分解されてゆく。

 更に、落雷。今度はクレーターの内側、ウィッチアコヤの死体に。ばぢりばぢりと音をあげながら、死した怪人を分解してゆく。

「グググゲッソゲソゲソゲソ! 爆発したシャチを回収できないのは惜しいが、3人でも十分だ! これがヨモツの力ァッ! ハイドロ帝国のォッ! 力だァッ!」

 イカオーガの声が歪みゆく中、カジキとアコヤの身体が完全に分解された。そして──禍々しきヨモツの奔流が、渦を巻く!

 その中で哄笑するイカオーガの身体が肥大化する。失われた足の付け根から、カジキヤイバの両腕が生え出でた。更にその背からウィッチアコヤと同様の貝殻鎧と砲塔が生え出で、俺たちに狙いを定めた。

「ググググググハハハハアアアアッ!!! グラライザー! コクリュウ! ハイドロ帝国復活の!!! 礎となれェっ!」

 もはやゲソゲソとすら笑わなくなったイカオーガは、ヨモツのエネルギーを溢れさせながら俺たちを見下ろす。打ち合わせたサーベルが耳障りな音を立てるのを聞きながら、俺は思わず呟いた。

「まーだ隠し玉持ってやがったのかこいつ……」

 そろそろ事の真相を全部吐きだした上で爆散してほしいもんだが。

 ……と、ため息をついたその時、背後からコクリュウの声がした。

「いや、だがこれはこれで、ちょうどいいかもしれん」

「あん? なにがだよ」

「俺がこっちに来た目的に対してだよ」

 装震剣を肩に担いで、コクリュウは俺に向けて言葉を投げた。

「おいジジイ。天国に行く準備はいいか?

(つづく)

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