ウェイクアップ・クロノス Part9 #刻命クロノ
刻命部隊クロノソルジャー
第1話「ウェイクアップ・クロノス」
前回のあらすじ
ここは常夜の呪いがかけられた日本。クロノレッドこと鳥居夏彦が命を賭して守った少年・暁 一希(イッキ)の目の前で、刻命戦隊クロノソルジャーと怪人ヤミヨの総力戦がはじまった。
ヤミヨの行使する数百体の雑兵・暗鬼たちを前に臆すことなく正面突破する一同。しかし、怪人幹部の圧倒的な力を前に、次第に追い込まれてゆく。そんな時、凄まじいエンジン音と共に現れたのは──?
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その瞬間、ヘッドライトの猛烈な光が僕らを照らす。
「こ、今度はなに……!?」
僕の呟きは、キュルキュルキュルというタイヤの音で掻き消された。
姿を現したのは車だった。それも、とてつもなく大きな。それは付近の暗鬼たちを轢き潰しながら、炎の軌跡を残してドリフトスピン。ベゼルとクロノグリーンが跳んで逃げる中、僕らの眼前で停止した。
月明かりを浴びて、鮮烈な赤色に輝くスーパーカー。通常の4倍ほどはある威容が、戦場を威圧する。
「おやおやおやぁ? これはこれは! クロノレッドの車じゃあないか!」
リューズが楽しそうな声をあげる中、スーパーカーのボンネット、その一部がどんでん返しのように回転する。
「あっ!?」
その光景を見て真っ先に声をあげたのは、僕の隣にいるモヨコちゃんだった。彼女は僕とユーリの襟首を引っ張りつつ、クロノソルジャーのメンバーに指示を飛ばす。
「やばい、総員伏せろ!」
その言葉が終わるのと、ほぼ同時に。
どんでん返しして現れた二丁のガトリング銃が、火を吹いた。
『ぶっ飛べッスーーーーッッッ!!!」
スピーカー越しの怒声とともに、ガトリング銃が弾丸をばら撒く! でたらめに首を振りながら掃射される弾丸に、暗鬼たちはなす術もなく消滅。ヤミヨの幹部もまた防御と回避を迫られ、引き下がる。
その最中、スーパーカーの屋根が、ガポリと音を立てて開いた。
そして中から鋼鉄のロボットアームが何本か生えたかと思えば、僕を、ユーリを、モヨコちゃんを、そしてクロノソルジャーのメンバーを摘み上げ、出てきた穴に引き込んでいく。
「うおっ!?」「わっ!?」「ちょっ」「どあーっ!?」
ゴミを放り投げるかの如く、クロノソルジャーの面々とモヨコちゃんはぽいっと穴に放り込まれてゆく。一方、僕とユーリを掴むアームだけは僕らを保持したまま、ゆっくりと屋根内に戻っていった。
『ピックアップおしまい! 撤退ッス!』
外部スピーカーから声がして、同時に加速度が僕らを襲った。撤退の言葉の通り、スーパーカーがタイヤを空転させながら、全速力で走り始めたのだ。
揺れを感じながら、ロボットアームが僕らを下ろす。あたりの様子を見て、ユーリが歓声を上げた。
「わー!」
「こ、これは……」
そこは、コクピットのようだった。
広さは畳2畳ほどか。正面にある三面鏡のような配置の大型モニターには、周囲の様子が映し出されている(今は街中を走り去る真っ最中だ)
その手前にはたくさんのボタンや計器な並んだコンソールがあり、さらにその前には大きな椅子。
そこには白衣を着た女の人が座っている。そしてその周りには、クロノソルジャーの4人が壁に押し付けられるようにぎゅむっと収まっていた。ちなみに変身は解除されている。
「せ……狭い……」
「おい、もう少し丁寧にだな……」
「文句を言わない! まったくもう……!」
抗議の声を上げるハルさんとメガネさんを、コクピットの女性はピシャリと切って捨てた。その声は、先程スピーカーから聞こえたのと同じだ。
そんな彼女の真上にいるモヨコちゃん(そう、真上だ。椅子の背もたれに猫みたいに座っている)が声をあげた。
「こらミカ! 我々に撤退の文字はないと言ってるだろうか!」
「それは博士の辞書が不良品なだけッスよ!」
「しのごの言うな! 我々が退けば、それだけ被害が広がるんだぞ!?」
「クロノソルジャーが死んだらもっと被害が広がります! 幹部勢揃いしてて勝てるわけないでしょ!」
「勝てる! いや、勝つのだ!」
「なんでそんな脳筋なんスかもーー!!」
「え、ええと……?」
「あ、イッキくん。怪我はない?」
ギャンギャンと言い合いをする二人を見て立ち尽くす僕に、ノゾミさんが声をかけてくれた。
「あ、はい。大丈夫です……けど。なにがなにやら……」
「あはは。まず彼女は、三日星弥生さん。モヨコちゃんの助手。それで、ここは……夏彦くんのクロノモービルの、コクピットだね」
「夏彦さんの……」
「メンテナンス中のを引っ張り出して、無理矢理動かしたんスよ」
口を挟んだのは件の助手・ミカさんだ。さらにその横から、モヨコちゃんが声をあげる。
「本来はその認証機能ゆえに夏彦しか動かせないのだが、メンテの間は認証オフになってるからな! セキュリティホールをついた見事なハッキングだ! 訴えるぞ!」
「ンなめちゃくちゃな──」
ミカさんが言い返そうとした、その時だった。
ディスプレイに大きく[caution]の文字が浮かぶ。そして三面鏡のうち一部が、車両後方のカメラ映像に切り替わった。
「「げっ……」」
ミカさんとモヨコちゃんの声が、ハモった。
そこに映っていたのは、ギリシャ彫刻の如き怪人・テーカクの姿。
そいつは10階建てのビルに比肩するほど巨大化し、僕らを追いかけてきていた。
(つづく)
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