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有限会社うまのほね 第1話「学校の七不思議」 Part16
前回までのあらすじ
ハルキは、本来の目的であるタロウの奪還を果たす。しかし"ドローンのお化け"に二度の敗北を喫し、その日の調査を断念した。
その夜、カンタ失踪の報せを受けて再び秋小へと乗り込んだハルキ。教頭の力を借りて見つけ出したカンタは、何故か件の”ドローンのお化け”と共に居て──?
「カンタ!」
ドローンたちの放つ警報音に負けないよう、俺は叫んだ。ドローンたちを前にして立ち尽くしていたカンタは、その声に反応してこちらを向いた。
「え、おっちゃん!? なんで居んの!?」
「なんでじゃねぇよバカ。いきなり居なくなりやがって」
言いながら、俺はウサギ小屋の前に居るカンタに駆け寄る。上空に居るのは4基のドローン。白いのが3つと、赤いのが1つ。赤いドローンには防犯ネットが絡まったままだ。
4つのカメラが俺を見つめる中、俺はカンタを庇うようにドローンたちとの間に立つ。白いドローンたちは正式な"来客"である俺を認識し、警報を鳴らすのをやめた。10秒ほどの沈黙の後、"威嚇"モードが解除され、各々の持ち場へと飛び去っていった。
そして──残された赤いドローンは、プロペラの回転数をあげた。
ヴヴヴッヴヴヴヴヴヴッッヴヴヴヴヴヴヴッヴヴヴヴヴッ!
──やっぱ、こうなるか。
防犯ネットに邪魔された、歪なプロペラ音が辺りに響く。俺は内心で呟きながら、腰のポーチに手を遣った。赤いドローンを睨みながら取り出したのは──特製のスタンガン。
「……今度こそ捕まえてやる」
呟く俺の手元で、バチバチッとスタンガンが鳴いた。
ヴヴヴヴヴッ!
応じるように赤いドローンは震え、機体を俺に向かって傾ける。
俺が地を蹴ったのと、ドローンが加速を始めたのは、ほぼ同時──
「す、ストップ! ストーップ!」
突如、そんな俺と赤いドローンの間にカンタが割って入った。
「っちょおい!?」
俺は慌ててスタンガンを引っ込める。そして、対峙する赤いドローンもまた、慌てたように進路を上空へと切り替えた。
──カンタを、避けた……?
訝しむ俺の視線の先、赤いドローンは高々と3階の高さまで飛び上がった。どんな勢いで突っ込んできたらそうなるんだ。
カンタは、両者に掌を向けて叫んだ。
「待って! どっちも、待って!」
ヴヴッヴヴッヴヴヴヴ……
急上昇の反動か、赤いドローンがフラフラしながら高度を下げてくる。俺はスタンガンを手にそれを睨む。警戒心丸出しの俺を一瞥して、カンタは口を開いた。
「おっちゃん。そいつ……悪いヤツじゃないかもって思うんだ」
──…………んん?
カンタの言葉に、俺は思わず眉を潜めた。
「……俺はボコボコにされたけど?」
「それはその……事故っていうか……」
言い淀むカンタの向こうで、赤いドローンは俺たちの顔の高さでホバリングを始めた。先程のように攻撃してくる気配は今のところ無い。
「と、とにかく! ちょっと落ち着いてほしいんだ」
カンタは浮かんだままの赤いドローンを一瞥し、俺に向き直った。そして「信じてくれないかもしれないけど」と前置きすると……大きく息を吸って、言葉を続けた。
「……多分こいつ、オレにメールしてきたんだ」
(つづく)
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