ていたらくマガジンズ__60_

フルメタル・ガイEX / 鋼の巨人(グラブル二次創作) #2

前回のあらすじ
「コロッサスが再び暴れている」
 ある日、イングヴェイの所属する騎空団に舞い込んだ依頼は、バルツ公国の大公・ザカからのものであった。戦闘準備をするイングヴェイに、団長がバルツの先遣隊の言葉を伝える──"以前の奴とは桁が違う"、と。

- character -

画像1

(左から)
シルヴァ:狙撃手。鷹の目を持つ。シスコン。
イングヴェイ:本作の主役。前衛。大盾使い。
ククル:銃使いで整備師。シルヴァの妹分。
ルリア:色々あって団長と命を共有している少女
団長:ガンスリンガー。グランでもジータでもお好みで。

- 2 -

 バルツに到着したのは早朝。俺たちは荷下ろしもそこそこに、大公の遣いが用意した馬車に乗り現場へと向かう。

 がたがたと揺れる馬車の中で、メンバーのひとり──シルヴァが声をかけてきたのは、俺が3回目の大あくびをしたときだった。

「団長、イングヴェイ殿。少しいいか?」

「どうした、レディ」

「その……ククルのことなんだが」

 シルヴァはそこで言葉を切り、自分の溺愛する妹に視線を遣る。彼女はルリアと肩を貸しあい、スヤスヤと眠りについている。

 その寝顔を見つめながら、シルヴァは不安そうに言葉を続けた。

「やはり彼女も……その……行かねばならないのか?」

 俺は団長と顔を見合わせ、極めて冷静に言い放った。

「当然だ。俺や団長の武器を直せるのはククルしかいない」

 ククルは団のエンジニアであり、その若さにしては驚異的と言って良いほどの銃のオーバーホール技術を持ち合わせている。有事の際にククルのオーバーホール技術がなければ詰みだ。

 ……という意味を込めて言った先ほどの言葉に、シルヴァは「ぐっ……」と言葉を詰まらせたのち、たどたどしく言い返してくる。

「しっ……しかし! なにも前衛に出さなくても良いのでは──」

「彼女は十分に戦える。君は妹をナメているのか?」

「っ……違う! 私はただククルを危険な目に遭わせたくないだけで……!」

「なんだ、彼女は赤ん坊かなにかか?」

「まぁまぁ、二人とも。落ち着いて」

 俺とシルヴァの間に、団長が割って入る。

「シルヴァ。気持ちはわかるけど、ククルの支援や撹乱能力は必要だよ」

「しかしだな団長──」

「オーケー、わかった。彼女を外そう」

 俺は、なおも食い下がるシルヴァの言葉を遮った。そして彼女を睨みながら、冷たく言い放つ。

「それで狙撃の腕が鈍ってもらっちゃあ困る」

 目を見開いた彼女に向かい、俺はトドメとばかりに言葉を続けた。

「もっとも、身内を信用できないような狙撃手に命を預けるのはごめんだがな」

「ッ……!」

 髪の毛が逆立たんばかりに怒りをあらわにする狙撃手どの。団長は盛大なため息と共に、胃のあたりを抑えながら言葉を零した。

「イングヴェイ、ちょっと言い過ぎ。シルヴァも落ち着いて。ね?」

「……あのー」

 気まずい空気を断ち切って、御者が俺たちに声をかけた。

「そろそろ、現場に着きます。準備してください」

「ナイスタイミング」

 大袈裟に肩を竦める俺の脇腹を、団長が小突いた。

(つづく)


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桃之字/犬飼タ伊
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