兵頭竜二の燃えるような恋
俺の家に聖火が一時的に安置されることになって半年が過ぎた。
それはとりもなおさず、俺の在宅勤務がはじまって半年が過ぎたことを示す。
初めは良かった。好きなだけタバコを吸い、好きな音楽をかけ、好きな格好で仕事ができる。なにより通勤の時間がなくなる。起きて、PCを立ち上げて、おしまい。
こんな楽なことがあるか? って……俺もそう思っていたよ。1週間くらいの間はな。
まぁ概ね、誰しもが想像する通りだ。一日中家で仕事してると、とにかく気が滅入る。初めはちょっと筋トレしたりでバランスが取れてきたが、だんだんだんだんそれじゃ気分転換ができなくなっていった。気晴らしに誰かと会話しようにも相手がいない。かといって外に出るわけにはいかない。なんせうちには聖火があるんだ。
まぁそういうわけだから、俺が聖火に話しかけるようになったのも自然な流れだったと思う。
俺たちは出会って1ヶ月目で付き合い始めて、そこから1日でいくとこまでいった。燃えるようなひと時だった。いや、実際燃えてたかもしれねぇ。なんせ相手は聖火だからな。
まぁ冗談はさておきだ。出会って半年、付き合い始めて5ヶ月が経つ今日こそ、節目の時だ。
「……よし」
カビ臭いユニットバス。俺はトイレの裏に隠した指輪ケースを手に取った。この指輪は3日前にアマゾンで買った。外に出られないんだからしょうがないだろ? 大丈夫、大量の食料と一緒に届いたから、聖火の奴は気付いてないさ。
聖火は今日も変わらず、窓辺で陽の光を浴びている。ここが聖火のお気に入りの場所だ。俺はそっとそのそばに跪いて、指輪ケースを開いた。
「……聖火。俺と、結婚してくれ」
聖火は一瞬だけ驚いたような顔をしたが、すぐにニッコリと笑った。なんでもお見通しってわけだ。大したもんだぜ。
こうして俺たちは、永遠を約束した。
だから、やらなきゃならねぇ。
俺と聖火が、ずっと一緒にいられるように。
──オリンピックを、ぶっ潰すんだ。
(つづかない)
▼これはなんですか?▼