碧空戦士アマガサ 第4話「英雄と復讐者」 エピローグ
前回のあらすじ
アマガサはリュウモンの力を借りて緑金の戦士へとフォームチェンジ。激闘の果て、ソーマ&カラカサのサポートによって生じたチャンスを見逃さず、アマガサは強大なる復讐鬼<雨垂>を打ち破ることに成功した!
- エピローグ -
「ごちンなりまーッス!」
「はいどうぞー」
ハーゲン〇ッツ(バニラ味)を前に満面の笑みで声をあげるソーマに、湊斗は微笑みながら返事をした。
<時雨>本部近くのコンビニ、時刻は17時を回ったところ。夕焼けが照らす街角をイートインスペースから眺めながら、湊斗とソーマは横並びでカップアイスを頬張る。
「それにしても湊斗さん、いいんスかダッツ様なんて。バッセンの代金ッスよね?」
「いいのいいの。俺も食べたかったし」
それきり無言で二人はアイスを食べはじめ……不意に口を開いたのは、ソーマだった。
「そういや湊斗さん、バッセンで話してたヒーローになれるかどうかみたいな話ッスけど」
「ん……敵討ちのために戦うってやつ?」
──やっぱね、俺はヒーローにはなれないよ。
──俺が戦ってるのは、人を守るためじゃない。雨狐を殺すため。敵討ちの、ため。
ソーマの言葉に、湊斗はバッティングセンターでの自分の発言を想起する。「正義の味方」と言われたことが引っかかって、思わず口をついて出た言葉だ。
「そっス。あの時言いそびれたんスけど、」
そこで言葉を切って、ソーマはアイスを一口。もぐもぐこくんと飲み込んで、彼は再び口を開いた。
「俺のヒーロー観でいうと、敵討ちのために戦うでもいいと思うんスよ。例えば神型戦士リーゼントなんてアレ敵チームの<神奈川>に仲間を皆殺しにされた復讐のために戦ってるんですがそれでもちゃんとしたヒーローとして戦うし人々に夢と勇気を届けてたんですよね。その理由として考えられるのはカミナシ、あ、リーゼントの敵怪人の名称で、神奈川の連中がいろいろあってそうなった姿のことなんスけど、そいつらを倒せるのがリーゼントだけっていうところがまず大きくて──」
「待って待って落ち着いて待って」
なんの前触れもなく始まったソーマのヒーロー談議を、湊斗は慌てて止めた。真顔で始まるから毎回驚く。
「ああすみません、つい……」
溶けかけたアイスを頬張って、ソーマは言葉を続ける。
「えっと、なにが言いたいかっていうと……ヒーローと復讐者は、両立できると思うんスよね」
「……ソーマくんの言うヒーローってなに?」
「んー……あくまでも俺個人の意見っスけど、」
湊斗の問いかけに少しだけ考えて、ソーマはゆっくりと口を開いた。
「他の人では戦えない”なにか”と、戦いを続ける人……ッスかねぇ。わかりやすいトコだと消防士さんとか」
「おー……なるほど。消防士さんにとっての炎が、俺の場合は雨狐か」
「そゆことっス」
思ったよりもわかりやすい答えが返ってきた。ただちょっと定義が広すぎやしないか……などと考えつつ、湊斗がアイスを口にする。
ソーマが逆に問いかけてきたのは、そんなときだった。
「湊斗さんは?」
「え?」
「湊斗さんにとってのヒーローって、なんスか?」
「ヒーロー……。うーん……?」
考えたこともなかった。アイスを食べながら、湊斗はしばし考え込み──
──大丈夫だよ。大丈夫。あんたは、私が守るから
不意に姉の声が脳裏をよぎって、湊斗は思わず目を細めた。そして……どこか遠くを見ながら、口を開く。
「……守りたい人のために、身体を張れる人……とか?」
「なるほど」
迷いながらの湊斗の言葉に、ソーマは即座に同意する。そして「んじゃやっぱ、」と言葉を続けた。
「湊斗さんはヒーローっすよ」
「え……そう?」
「だって、俺らがピンチだったらめちゃくちゃ身体張りますよね?」
「う……たしかに、そうかも」
「でしょ?」
「あ、でも晴香さんだったらどうかなぁ……」
「あー、カラカサいじめられましたからねぇ」
溶けかけたアイスをちまちまと食べながら、二人の話題は「晴香をどう謝らせるか」へとシフトしていく。
男二人の談笑は、日がすっかり暮れるまで続くのだった。
(第4話『英雄と復讐者』 完)
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