有限会社うまのほね 第1話「学校の七不思議」 Part18
前回までのあらすじ
カンタが語るところによると、彼は"アカネ"なる人物に呼び出されて再び小学校へとやってきて、そしてその"アカネ"が件の赤いドローンそのものであるらしい。
夜の秋小で、赤いドローンを目の前にその説明を聞いていたハルキであったが、その説明の最中に件のドローンは突如動作を停止。あろうことか、カンタに向かって墜落をはじめ──?
「タロウ、そこのドライバーとってくれ。持ち手が青いやつ」
「これ?」
「そうそれ」
ドライバーを左手で受け取り、俺は手の中でくるりと持ち変え……ようとして見事に取り落とした。
「あっ」
……流石に、右腕が使えないのは不便だ。
などと思っているうちに、ドライバーは作業台の上をバウンドする。それをキャッチしたのは、カンタだった。彼はそれを差し出し、心配そうな声をあげる。
「おっちゃん、大丈夫?」
そんなカンタの視線は、俺の右腕──首から布で吊られたギブスに向いている。俺は笑い、彼からドライバーを受け取った。
「ノープロブレムだ。続けよう」
──"ドローンのお化け"を巡るあの騒ぎから、二日が経つ。
この右腕はあの騒ぎの代償というか、勲章というか……まぁ、そういう感じだ。
***
動作を停止し、カンタに向かってドローンが墜落したあのとき。赤いドローンはカンタの後頭部に一直線で、俺はカンタを助けるため、咄嗟に右手を突き出した。
問題はそこからだった。
そんな俺の行動に驚いたカンタは、その場で大きくのけぞり、ブリッジみたいな姿勢で俺の右手を回避した。
ドローンはそのまま突っ込んできて、俺の右腕に直撃。自由落下する重さ5キロの塊が衝突した衝撃で、俺は前のめりに転倒。カンタは横に転がって、俺を見事に回避。
そして俺は辛うじて地面に手をつき、転倒を堪えて。
腕の上にドローンが落ちてきた。
……そう。テコの原理でボッキリだ。
***
……めちゃくちゃ痛かった。
「おっちゃん、次はどうする?」
俺の回想を中断したのは、カンタだった。その頭には大きなたんこぶ。黙っていなくなったことと、俺が腕を折る原因となったことで、母親にこっぴどく叱られたらしい。
腕の怪我が治るまで俺の作業を手伝うよう言いつけられたとかで、今朝から働きに来ているのだった。ちなみにタロウは暇つぶしのお手伝いだ。
「そうだな……」
カンタの問いかけに、俺は作業台に視線を移す。
そこには件の赤いドローンが鎮座していた。
「タロウ、台に上がってそいつを持ち上げてくれ。裏側にソケットがある。カンタはそこの白いケーブルを持ってこっちへ」
「おっけー」
俺の指示に合わせ、子供たちはドローンにいくつかのケーブルをつないでいく。最後に電源ケーブルを接続し、しばし待機。
ほどなくして、俺のパソコンのコンソールにドローンOSの起動情報が表示された。
# --- Hello World. ---
# --- Akiakane Elem. School ---
# --- Security Drone System ---
「よし……んじゃ、始めよう」
「うん、お願い!」
俺の呟きに、カンタは元気よく答えた。
赤い警備ドローンとの対話──名付けて"アカネサルベージ作戦"の始まりだ。
(つづく/次回で第1話完結です→すんませんあと2話使います)
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