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21XX年プロポーズの旅 (4)

(承前)

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 ──昨夜、月面基地行きの星間バスで発生した小惑星激突事故の続報です。被害者は重傷者10名、重体4名、軽傷30名、死者4名──

「…………くそっ」

 惑星地球、"王国"の執務室。流れてきたニュースに、俺は執務机を叩いた。自信満々で「俺が行く」などと言った自分が恥ずかしい。

 ──"オクト&レオン"、レッツゴー! キャハッ!

 昨夜のあの瞬間、俺は完全に油断していた。
 相手はアロハシャツ姿のタコ型宇宙人とワンピース姿の人型トカゲ宇宙人で、まさか素手で星間バスの窓──超硬質オブリビオンガラスを破壊できるわけがないと思っていたし、そもそもそれを破壊してまで宇宙空間に、それも生身で飛び出すなど誰が想像できようか。

「……いや、そんなもの言い訳にすぎん」

 全ては俺の対応の遅れが原因だ。
 窓を破壊して外に飛び出した後、トカゲ型宇宙人は船体に張り付き、タコ型宇宙人を頭から被った。そう、原理は不明だが、被ったのだ。

「怪盗……"オクト&レオン"か」
 裏稼業に詳しい者ならその名を一度は耳にしたことがあるだろう。
 2年ほど前に彗星の如く現れ、様々な星で第1級の宝を盗みまくっている盗賊コンビであり、星間指名手配犯に指定される極悪人だ。オクトは8本足の殺し屋で、あらゆる武器を使い、あらゆる扉を開けることができるという。レオンはトカゲ女……というより竜人で、その蹴りは山を砕き地形を変えたという伝説を持つ。

 俺はその伝説を目の当たりにした。

 俺が後を追って船外に出たとき、レオンは船体で屈みこんでいた。そして、俺の顔を見るや獰猛な笑みを浮かべ──その異常なキック力で、船体を強く蹴り出したのだ。

 ロケットのような勢いで、盗賊たちは跳び上がった。そして、同じだけの反作用が、10両編成の5両目を襲った。
 星間バスは進路を大きく外れ、大量の隕石に襲われ、大きく脱線し──あとの惨状は、今ニュースで流れている通りだ。

「王子」

 守れなかった人々を想い唇を噛む俺に、司令官が声をかけた。

「奴らの居場所がわかりました──火星です」

(つづく)

続き


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桃之字/犬飼タ伊
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