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有限会社うまのほね 第1話「学校の七不思議」 Part13
前回のあらすじ
「ドローンのお化けにさらわれた」小学生を救出にきたハルキ。件のドローンとの2度に渡る対峙を経て、なんとか取り押さえたと安心したのも束の間──今度はハルキが、その"ドローンのお化け"にさらわれてしまった。
ヴヴヴヴッ……ヴヴヴヴヴヴヴヴッ……ヴヴヴヴ!
夜の学校に、断続的に響くプロペラ音。俺が引っ張り返すのに合わせて、それはまるでチェーンソーのように唸りを上げる。俺は手に絡まった網を何度も引っ張りながら、悲鳴を上げた。
「待て待て待て待てそっちはやめろ!!」
赤いドローンは、俺を引きずったまま飛び立とうとしている。
──2階の渡り廊下から、中庭に向かって。
先ほど雑に掴んだせいで、防犯ネットはドローンと俺の腕をしっかりと繋ぎ止めている。無理な引っ張り合を繰り返した結果、俺の腕はそのネットにギリギリと締め上げられてめちゃくちゃ痛い。特製の防刃ツナギじゃなかったら今頃はズタズタだろう。
俺はこのツナギを選んだ昼間の自分に感謝しつつ、壁に足を置いて再度踏ん張る。遅れて、カンタとタロウが駆け寄ってきた。
「おっちゃん! 大丈夫!?」
「お前ら! 俺の工具箱にハサミあるから持ってき──うおっ!?」
ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ!
二人に向かって俺が叫んだその時、俺の身体が浮いた……否、ドローンが急上昇した。踏ん張っていた足が滑り、姿勢が崩れ、俺は渡り廊下の壁で思いっきり脇腹を打った。
「がっ……!?」
俺が呻いた直後、ドローンは再び中庭に向けて進路を変える。
そして俺の身体は、2階渡り廊下から飛び出した。
「うおおおおおおおおおおおおい!?」
俺の悲鳴を置き去りに、少しスローな自由落下が始まる。捻れた網が元の形に戻ろうと、俺の身体ごと回転。視界が回る、回る、回る。訳の分からない悲鳴をあげながら、俺はゆっくりと、しかし確実に地面に落ちていく。
「ああああ嘘だろおい嘘やめて死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!」
浮遊は数秒だった。地面が近付いてきて、俺は必死に両脚をばたつかせバランスを……
──その時、俺の腕から網がほどけた。
「ちょっ──」
ずっだぁんと派手な音をたてて、俺は両足で同時に着地した。両脚の先端から、痺れが駆け上ってくる。動くどころか声すら出せずにいる俺を差し置いて、網を引っ掻けたままのドローンはふらふらと飛び去って行った。
中庭に"タケノコにょっき"のポーズでフリーズしている俺の元にカンタたちがやってきたのは、それからしばらく経ってのことだった。
(つづく)
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リアルでなにごともなければ、今週いっぱいで第1話完結予定です。
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