ていたらくマガジンズ__60_

フルメタル・ガイEX / 鋼の巨人(グラブル二次創作) #1

 団長の身体が真っ二つになった。

 少なくとも、俺の居る場所からはそう見えた。

「団長!!?」

 ククルが悲鳴をあげ、団長の元に駆け寄る。黒き鋼の巨人はそれを目で追い、再び剣を振り上げる──

「おいおい……」

 俺は大盾を構え直し、頬を伝う汗を拭った。

「……こいつァなかなか、シャレになんねぇな」


フルメタル・ガイEX / 鋼の巨人

- GRANBLUE FANTASY -


 俺の名前はイングヴェイ。かつては<伊達と酔狂の騎空団>を率いて全空を旅し、"伝説の騎空士"なんて呼ばれていたんだが……しばらくの隠居生活の後、なんだかんだあって今はこの騎空団の厄介になっている。
 この話は、俺がこの団にきてしばらく経った頃──団長の推薦で、俺が騎空挺<エンゼラ>の船長を任されるきっかけとなった事件の話だ。

- character -

(左から)
シルヴァ:狙撃手。鷹の目を持つ。シスコン。
イングヴェイ:本作の主役。前衛。大盾使い。
ククル:銃使いで整備師。シルヴァの妹分。
ルリア:団長と命を共有する少女。星晶獣を呼び出すことができる。
団長:ガンスリンガー。グランでもジータでもお好みで。

- 1 -

 団長から手渡された依頼状を見て、俺は思わず訊き返した。

「バルツのザカ大公から、直接の依頼だと?」

「そう」

 事もなげに頷く団長は、黒いコートに身を包み、両手をポケットに突っ込んだまま船室の壁に寄り掛かっている。一国を治める大公からの依頼を当たり前のようにこなすこいつは、確か15歳とか言っていたか。末恐ろしい存在だ。

「ブラヴォ。大した人脈だ」

 俺は素直に賞賛の言葉を贈り、手にした依頼書に目を落とす。

「"コロッサスが動き出したので、再び力を貸していただきたい"……か」

「うん。昔一度倒したって話はしたっけ?」

「ああ、いつだったかラカムから酒の肴に聞かされたな」

 星晶獣コロッサス。覇空戦争の折、星の民に対抗するために空の民が作り出した星晶獣。なんでもこの団の結成当初に打ち倒したとかで、その力はルリアの中に眠っているという。

「レディん中でおねんねしてるはずのそいつが、なんでまた暴れ出すんだ?」

「んー……」

 俺の問いかけに、団長は頬をぽりぽりと掻く。

「正直、わかんないんだよね……」

「まぁ、俺に相談してきた時点でそうだろうとは思ってたが」

「さすがイングヴェイ」

 団長は笑いながら、脇に挟んでいた別の紙束を俺に寄越した。コロッサスの特徴などをまとめた資料のようだ。それにざっと目を通しながら、俺はその名を呟いた。

「星晶獣、コロッサス……」

 ルリアが召喚した様子を見たことがある。簡潔にいうと、そいつはデカい剣を持ったデカい鎧だ。その辺の民家よりも背が高く、ビジュアルとしては金属製のゴリラに近い。

 動きは鈍いが、その重量が生み出す破壊力は侮れない。手にした剣を大地に突き刺し、炎の魔力を解放して周囲を焼き尽くす。星晶獣というと精神やら記憶に干渉してくる厄介な奴も多いのだが、こいつは正統派のパワー型だ。

「急を要するから、精鋭を集めてきてほしいって伝言貰ってて。明日にはバルツに着くんだけど、イングヴェイも来てもらって良い?」

「勿論だ。ちなみに、他のメンバーは?」

「選定中。コロッサスは一撃が重いし、銃で固めようかなって思ってるけど」

「ああ、だからその格好なのか……オーケー。俺も準備しておく」

「よろしく。……あ、ひとつだけ。ちょっと、気になることがあって」

「ほう?」

「シェロさんから聞いたんだけど……バルツの先遣隊がね、報告の中でこう言ってたんだって」

 団長は一瞬言葉を切って──神妙な面持ちで、こう言った。

「"以前の奴とは桁が違う"……って」

(つづく)

本日から連載です。順次更新予定。どうぞよしなに。

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桃之字/犬飼タ伊
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