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刀を亡くした侍に、鉛弾の祝福を。#3 (トレモズAct.2)
前回のあらすじ
シトリを襲撃した謎の女が手からビームを放つ。酒場の壁に、大きな穴が開いた!
「熱線……!?」
「すごい、よく避けたわね」
想定外の攻撃に気を取られたスキをつき、右の死角からツインの声。シトリは咄嗟に鞘ごと刀を掲げ──刹那、凄まじい衝撃がシトリを吹き飛ばした。
「ヌゥッ……!」
シトリは壁に激突する寸前で身を捻り、壁に”着地”し敵を睨む。今の一撃はサイドキックだったようだ。悠然と脚を降ろし、ツインは不敵に笑っている。
視線の交錯は一瞬。先に動いたのは──シトリ!
壁を蹴り、即座に最大速力まで加速。床を壁を天井を渡り、変則的な軌道で敵との間合いを詰める。そして敵の死角で急停止ししたシトリは、すべての速力を体幹に蓄え──全エネルギーを居合に載せ、横一閃!
「あらま」
気の抜けた声と共に、ツインの上半身と下半身が分断される。さらにシトリは回転の勢いを乗せ、上下に一閃! ツインの身体が真っ二つに──
……ならなかった。
「ざんねぇん」
響いたのは、ツインの挑発的な声。
「!?」
瞠目したシトリの身体が、衝撃に揺れる。身体の力が一気に抜け、シトリは愛刀を取り落とした。
ガシャン、と硬い音が響く。
「ヌゥ……ッ!?」
少しだけ時間を空けて、シトリは己の身体を熱線が貫いたのだと気付き──激痛の中、床に倒れ伏す。
その眼前、床に転がる愛刀は、その半ばからへし折れていた。
(つづく/本編531文字)
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なんだか久しぶりの更新です。息抜き息抜き。
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