碧空戦士アマガサ 第1話「邂逅」 part3(初版)
※お知らせ※
加筆・修正・リライトを施した再放送版が配信中です。
再放送版のほうがアマガサの世界への理解が深まると思いますので、そちらを読んでもらえると嬉しいです。
詳細はこちら。
[プロローグ] [1] [2] [3] [4] [5] [6] [キャラクター名鑑]
【これまでのあらすじ】
馴染みの焼肉屋でブリーフィングを行なっていた"時雨"メンバーの目の前で、集団食い逃げ事件が発生。晴香が犯人を追跡し取り押さえたが、犯人の一部を取り逃がしてしまう。
逃げていく犯人。それを代わりに打ち倒したのは、事件の重要参考人にして、晴香の大怪我の原因と目されている【白い雨合羽の男】"アマガサ"だった。
「すまない。助かった」
晴香は警察手帳を掲げながら、その男──"アマガサ"に話しかけた。彼は晴香の顔を見て少し驚いた顔を見せたが、すぐに笑顔を作ってみせた。
「あ、警察の方……だったんですね?」
「……ああ、一応な」
──こいつ、私のことを知っている。
記憶はないが、晴香の勘が働いた。作り笑顔のその男は少し視線を泳がせた後、取り繕うように言葉を続けた。
「あの……これって正当防衛ですか?」
「もちろん。本当に助かったよ、ありがとう」
晴香は内心の警戒を隠して微笑み、彼に握手を求める。
「や、そんな大したことでは──」
相手がまんまと握り返してくる。晴香はその手に力を込め、笑顔を引っ込めた。
「この間の公園では世話になったな」
「いっ……!?」
晴香が低い声で言うと、彼は見るからに狼狽えはじめた──ビンゴだ。
「お、覚えて……るんですか?」と、"アマガサ"が視線を泳がせながら問うてくる。晴香は逃すまいと、相手を掴む力を増した。
「……当たり前だ。お前のせいでこっちは大変だった」
もちろん嘘だ(いや、大変だったのは本当だが)。ともあれ効果は絶大だったようで、なんとか逃げようと力を込める様子が握った手から伝わってくる。
「お前は重要参考人だ。本部まで来てもらいたいのだが」
挙動不審な彼をじっと見据えたまま、晴香は冷たく言い放つ。
「そ、それは──」
その瞬間、握った右手から殺気が伝わる。
「困る!」「っ!」
咄嗟に屈み込み、晴香は相手のハイキックを回避した。反動で握っていた手が外れる。彼は踵を返し、駆け出した。が──
「タキ!」「ほいさ!」
「どあっ!?」
晴香の指示で、物陰に隠れていたタキが飛び出し、その大きな身体で"アマガサ"を抱きとめた。
「観念しなっ……さい!」
ジタバタする彼をタキは羽交い締めにし、遂には持ち上げてしまった。
「ま、まじ……?」
彼は信じられない様子で呟く。これが、タキがIT顧問という立場ながら晴香の付き人をしている理由で──晴香以上に力が強いのだ、この男は。
「さて、じゃあ本部まで……」
タキの言葉の途中で、"アマガサ"がふと大人しくなった。小さく「仕方ない」と呟いた彼は、顔を上げて叫んだ。
「……カラカサ!」
その言葉に反応するように、"アマガサ"の左手の番傘が飛び上がった。番傘の表面にぎょろりと目が開き、口が開き、舌が出てきて──それは妖怪"からかさおばけ"のような姿で、カランと持ち主の傍に着地する。
『任せろい!』
そいつは人語を発し、タキの傍で暴れまわる。
「いでででで!? なんだこいつ!?」
『湊斗を離せこの大男!』
身体中を傘でボコボコに殴られ、タキの拘束が緩んだ。
「今だっ…!」
その隙をつき、"アマガサ"はぐっと姿勢を下げ……タキを背負い投げた。
「うっそぉっ!?」
タキは悲鳴とともに晴香の眼前に落下する。ドスンと背中から落ちたタキに視線を奪われたその一瞬で、"アマガサ"は姿を消してしまった。
「ちっ……乾!」
『了解! 捜索します!』
遠くから聞こえるパトカーの音を聞きながら、晴香はタキを助け起こし、呟いた。
「今の……妖怪?」
「え、ええ……」
その言葉に、タキがなんともいえない返事を返した。