有限会社うまのほね 第1話「学校の七不思議」 Part12
前回までのあらすじ
警備ロボ<キ33>を使って赤いドローンをおびき寄せることに成功したハルキ。しかし捕獲作戦決行の瞬間、赤いドローンが姿を消してしまう。
驚き、廊下に躍り出たハルキの背後──警備ロボ<キ33>の背中から、赤いドローンが飛び立った!
──警備ロボの背中に、留まっていた!?
あまりの事態に一瞬フリーズした俺を正気に戻したのは、子供たちの悲鳴だった。
「「うわああああああああああ!?」」
ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ!!
スズメバチのような羽音を響かせ、赤いドローンはカメラとライトを俺に向け──突っ込んでくる!
「どぉあっ!?」
俺は咄嗟に地面を転がって回避した。
──しっかり低空飛行している。網に気付いてやがる!
「ちっ……カンタ、タロウ、音楽室に入ってドアを──」
「「わああああああああああああああ!!」」
がらがらぴしゃり。ガチャン。
俺が言うより早く、子供たちは音楽室に飛び込み、ドアを(たぶん鍵も)閉めた。
「早えぇよ──うおぁっ!?」
ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ!!
ツッコミを遮るように突っ込んできたドローンを、俺は再び転がって回避した。今度は背中を掠めた。命中精度が上がっている……!
勢いで数メートル先まで飛んだ後、ドローンはカメラとライトをこちらに向け、その飛行高度を下げていく。足元狙いだ。
──やはり……このAI、めちゃめちゃ賢い!
ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ!!
プロペラ音が激しくなり、ドローンが傾ぐ。俺に向かってそいつが飛びくる──その時だった。
ドローンの真下に居た<キ33>が、跳びあがった!
派手な衝突音と共に、ドローンの飛行がブレる。ライトが出鱈目に辺りを照らす。一瞬映った音楽室の中で、タロウがピースしているのが見えた。
「っ──! よくやった、お前ら!」
俺は<キ33>に向けて叫ぶと、跳びあがり──廊下の上部に貼られた防犯ネットを掴んだ。
赤いドローンがその様子をカメラで追う。なんとか姿勢を取り戻すが──遅い!
「こんにゃろぉぉっ!」
ヴヴヴヴヴヴヴ!?
──俺の叫びと共に、防犯ネットが赤いドローンに覆いかぶさった。スズメバチのようなプロペラ音が鳴りを潜め……赤いドローンが、停止する。
「よっ……っしゃぁ」
俺が息を吐くのとほぼ同時に音楽室の扉が開き、カンタとタロウが飛び出してきた。
「おじさん!」「やった!」
「おう! お前らもナイスアシスト……って、あれ?」
網を縛り、カンタたちにサムズアップした俺の手に──違和感。
ヴヴヴヴ……ヴヴッ……ヴヴヴ……
「ちょ、え?」
俺は慌てて赤いドローン本体に目をやった。プロペラが、回り始める!
ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ!!
プロペラの回転数が急上昇し、辺りに凄まじい風が発生する。
「うわぁっ!?」
子供たちが悲鳴を上げて、飛びのく。網の妨害をものともせず、ドローンは浮き上がり──網を掴んだままの俺の身体が、浮いた。
「お、おい!? マジ!?」
ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ!
「おっちゃん!?」
カンタの声が遠ざかる。
ドローンは廊下を猛スピードで飛び去った──俺の身体ごと!
(つづく)
[前] [目次] [次]
▼桃之字の他作品はこちら▼
🍑いただいたドネートはたぶん日本酒に化けます 🍑感想等はお気軽に質問箱にどうぞ! https://peing.net/ja/tate_ala_arc 🍑なお現物支給も受け付けています。 http://amzn.asia/f1QZoXz