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待ちに待った小説大賞が始まろうとしている。
一週間前にレギュレーションが発表されて以来、気の早い者たちが「練習」と称して小説を投稿し、称賛を浴びていた。それを羨ましいと思わなかったかといえばウソになる。俺もあんな風にパッと書いてパッと出して称賛されたかった。でも、それをしなかったのには訳がある。
ひとつには、単純に自分の手札が少なかったということだ。
俺は筆が早いほうではないし、アイデアマンでもない。手持ちのネタから色々とかき集めてみたところで、結局は短編2本分が限界だった。『ハリーポッター』観たことあるか? 金庫でウィーズリー家が小銭をかき集めてるシーンがあるんだが、俺もああいう状態だった。我ながら笑えるよな。
まぁそれは俺の技術不足だから仕方がない。問題はもうひとつのほう。
シンプルに言うと、仕事がちょっと思わしくない感じだったのだ。
業務上の秘密もあるので詳しくは話せないのだが、俺の仕事はいわゆる「相手ありき」の商売で、自分の裁量外の部分に影響されがちだ。で……この一週間の「相手」というのがまぁひどかった。
そもそも行動に予測がつかなすぎる。
……お前は家に入るときどこから入る? まぁ、玄関からだよな。俺だってそうだ。
その「相手」は、玄関から出ていったかと思えば入るときは2階のベランダから入り、そして次に出てくるときは1階の窓から出てくる……そういう奴だ。
そんな奴だから決まった時間通りにやってくるわけもなし、こちらの予定は毎度毎度大幅に狂わされ、リカバリのための各種手続きが始まる。残業で脳のリソースは食い潰され、小説を書くこともできず、家に帰って金麦を飲み、眠る……そんな生活。マジで作家生命の終わりが見えてすらいた。
だがそんな生活も今日で終わりだ! ようやくこの仕事が片付く。
待ってろよ。度肝抜いてやるからな!
***
「よし、やるか」
俺は文章を投稿し、クマ用捕獲網を装填したバズーカを構えた。
(つづく)
書きはしたものの、内輪ネタに近しいものだったので没にしました。供養供養。
明日からは逆噴射小説大賞ですね。残弾の確認はダイジョブ? 始まってもまだ期間はあるよ! とにかく、無理せず頑張っていきましょう!