ウェイクアップ・クロノス Part7 #刻命クロノ
刻命部隊クロノソルジャー
第1話「ウェイクアップ・クロノス」
前回のあらすじ
ここは常夜の呪いがかけられた日本。クロノレッドこと鳥居夏彦が命を賭して守った少年は、名を暁 一希(イッキ)という。
イッキの居る病院を、夏彦の仇・怪人リューズの軍勢が襲撃した。飛び出したイッキの目の前で、クロノソルジャーは"影"の軍勢を瞬く間に殲滅。勢いのままにクロノスバンドの力で変身した一同は、そのコンビネーションで怪人リューズを追い詰めた……と、思いきや──?
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「キミタチを全滅させよう、なーんて楽しそうなイベントをさ……ボクひとりだけで、やると思う?」
リューズがそう言った、その時だった。
──ずるり、と。
リューズの背後から、ヒトが生えてきた。
そこにはいつの間にか、靄のような暗闇が揺らめいていた。月明かりを受けてなおその内を見通すことのできないほどの闇。それはリューズの背から湧き出しているように見える。
そこからまず現れたのは、2つの人影。
「勢揃いだね、ベゼル」
「ええ、勢揃いね、ダイヤル」
それはポンチョを着た双子の子供だった。背丈はユーリ(8歳)と同じくらいに見える。
「ベゼルに、ダイヤル……!?」
驚愕の声をあげたのは、転倒から復帰したクロノピンクだった。そちらをチラリと一瞥して、二人はくすくすと笑い合う。
魔性の双子がリューズのそばに並び立つ頃、闇の靄が再び蠢く。生えてきたのは、ツルハシを担いだ背の低い女と、石柱の如き槌を手にした筋骨隆々な2人の大男だった。
「おー、よーしよし。まだ全員生きてるなー?」
「ううむ、しかし既にひとりやられておるご様子」
「いやいや、なにやらまだ立ち上がりそうでありますぞ?」
女のほうは着物姿。黒いロングヘアのその頭には、鬼のような一対のツノが生えている。金色の瞳が輝くその顔は、下半分が割れた面(おそらく、鬼の面だ)に覆われている。
男のほうは二人とも、ギリシャ彫刻がそのまま動き出したかのような装いだ。違うのは、着ているものが血のような赤色である点くらいか。青色の瞳は夜の闇でも美しく輝き、露出したその白い肌には傷ひとつ付いていない。
「ビジョウに、ユーカク・テーカクのコンビまで出てきやがったのか……!?」
壁際で身を起こしたクロノグリーンが声をあげる。それがこの怪人たちの名前らしい。
女のほう・ビジョウはクロノグリーンを一瞥し、リューズの隣へと歩み出る。ユーカクとテーカクはその二歩後ろで、腰に手を当てて仁王立ち。
満月の光が、並び立つ怪人たちを怪しく照らす。
素人の僕から見てもわかる。彼らは、姿形こそヒトのようだけど……リューズと同じ、異形の存在だ。
「こ、こいつらって、もしかして……」
「察しがいいな。……奴らはヤミヨの、幹部連中だ。手強いぞ」
僕の呟きに答えたのは、隣に居るモヨコちゃんだった。自信満々元気いっぱいだった彼女だが、今は真剣な顔で怪人たちを睨みつけ、言葉を続ける。
「……リューズと同等か、それ以上にな」
そんな言葉の最中、クロノソルジャーの一同もまた一ヶ所に集まった。陣形を組み、武器を構え、怪人たちと対峙する。
「んふふふ、ね、言ったでしょ?」
そんな様子を余裕の様子で眺めながら、リューズは楽しそうな声で言い放った。
「こんなお楽しみ会、そりゃ皆来るでしょ! ンギャハハハ!」
哄笑するリューズの背から、闇の靄がさらに湧き出す。それは夜の闇を塗り潰し、月の光を食い尽くし、怪人たちの背後で爆発的に膨れ上がり、広がってゆく。
「さぁクロノソルジャー! 覚悟はいいかい? 遺書は書いた? 渡す相手はいる? クロノレッドに渡す花は用意した?」
警戒するクロノソルジャーの面々を嘲笑いながら、リューズはその場でくるりと反転する。そして手にしたステッキを靄に向け、振り下ろす。
瞬間、闇の靄が、晴れた。
「なっ……!?」
そうして現れたものを見て、僕は思わず息をのむ。
闇の靄が晴れ、再び駐車場が月明かりに照らされる。そこに佇むは6体の幹部怪人。
そして、その後ろに整列する、数えきれないほどの"影"の軍勢たちだった。
「さぁさぁさぁさぁ! 文字通りの"総力戦"をはじめようじゃあないか! ンギャハハハ!」
"影"の軍勢の中心で、リューズはどこまでも楽しそうに笑う。
──絶望的な戦が、はじまろうとしていた。
(つづく)
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