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ビモーは頭髪になる夢を見るか |(4)隣村の惨劇と大風の儀式


「鼻つまって気持ちわるいーー!」


ムスメの鼻の調子が悪い。かわいそうだ。だが、閃いてしまった。





その穴の中は適度に暗く、過ごしやすい。
だが外は過酷だ。
彼らは穴の中で、息をひそめる日々を送っている。


これはそんな彼らの、ジュブナイルなサーガでクロニクル的ななにか。レジェンドを経ていずれミソロジーにいたるアレ。群像劇になる予定は未定のなんのはなしだか分からない小噺なのだ。



「どうだった?」


「外に近いやつらはなんとか。だが奥のやつらはダメだ」


「そうか、、、やはり、奥の水源の氾濫か。こっちの状態は一進一退ってとこだ。このまま治まってくれるといいんだが」


「そうか、、、」


しばらく前から、水源の水位が上がっている。水は粘性を高め、近づくビモーが絡めとられてしまう事態となっていた。


隣穴の状況を見てきたビモーは話を続ける。


「隣穴の水が、いつこっちに流れてこないとも限らん。うまく行くか分からんが、大風おおかぜで水を飛ばして、水位を下げた方がよいと思う」


大風おおかぜか……」


「本気か? あれは下手すると、仲間の命も飛んでいくぞ」


「だが、背に腹は代えられん。今ならまだ、大奥の連中も動けるはずだ。俺が頼みに行く」


「そうか……いや分かった、頼む」


「ああ、任せておけ」


こうして男は、村の大奥と呼ばれる場所のビモーたちの元へ向かう。大風を呼ぶ儀式を行ってもらうために。




「……分かった。儀式を行おう」


「かたじけない。あなた達も危険にさらすことになり心苦しいのだが、村のために、頼む」


「ああ。では皆の衆、行くぞ!!」


「「「おぉーーー!!!」」」


(ビモーたち、頭の先を軽く周囲にこするように動き出す。リズミカルに、優しく、時に激しく、壁を刺激するように)


「くるぞーー!備えろーーー!」





ムスメ「・・・くしゅん! くしゅん!!」


私「うわ! すごい鼻水出た! ティッシュティッシュ!」




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