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米粒の行く末
米粒が股間に落ちていた。
食事時であれば、そこまで不思議でもない。うっかりしていたですむ話だ。
しかしそれは、風呂場で身体を洗おうとしていた時だった。
ホコリの塊か?それにしても大きく白い。何かと思いつまみ上げると、わずかな弾力を感じさせるそれが米粒であると知れたのである。
さてこれは、いったいどこから来たものか。しばし私はロダンの彫像になった。しかし一向に思い当たらない。口の周りについていた、とするのが一番ありそうなのだが、それなら家族が指摘しそうなものである。まさに気づけばそこにあった、としか言いようがない。
さて米粒がどこからやってきたかは大きな問題なのだが、もう一つの問題が私の前に立ち現れた。この米粒がどこへ行くのかである。
どこから来てどこへ行くのか。なんと、米粒も我々人間と同じではないか。哲学的な問いに晒されている。
この問いに答えるならば、星から来て星へ還るのだ、という回答が好みではある。風呂場で米粒を手に持ちながら、しばし思考は宇宙を彷徨った。
そうして後、やや現実的に考えるに、この米粒には生ゴミになってもらう他ないのだと切なくなった。食べることは…できなかった……
裸体のまま風呂場を出て、米粒はひとまず洗面所に置いて引き返す。
一粒の米には七人の神様がいるという。おそらくは巡り合わせにより、腹の中に収まらなかった米粒に手を合わせた。