『ギャグマンガ家めざし日和』がめっちゃ面白かったです
この前の4/4に発売された、『あの頃の増田こうすけ劇場 ギャグマンガ家めざし日和』が、個人的にめっちゃ良かったです。どれぐらい良かったかというと、生死を分ける手術に成功した日、病院の窓から見えた真っ赤な夕焼けと同じくらい良かったです。まあそんな経験はないんですが。
この本、増田こうすけ先生によるエッセイ漫画です。内容は、先生が「漫画家」になるまで(ギャグ漫画日和を連載するまで)の日々を綴った、自伝的な記録。初めてGペンを触った日から、月刊ジャンプでの連載に至るまでの、その軌跡が描かれています。
僕は小学生の頃に『ギャグマンガ日和』に出会い、以後ずっとハマっておりました。ので、『日和』との思い出が深いのもあり、本作は大変楽しめました。
2000年に始まった『日和』は、2005年にアニメ化。その後も舞台化・アニメ化を繰り返して、現在は『ギャグマンガ日和 GB』と名前を改めて継続しています。
僕は1998年生まれなので、ちょうど小学生の時にアニメが始まったことになり、当時の小学校での『日和』の人気もすごいものでした。特に「西遊記 〜旅の終わり〜」が大人気だった記憶があります。僕も友達からこれを紹介されて、そこから家族で漫画を集め始めました(実家にちゃんと全巻ある)。
で、そんな『日和』とともにすくすく育った僕にとって、『ギャグマンガ家めざし日和』はマジで面白かったです。単純にエッセイとして面白い、というだけでなく、連載の裏エピソードまで聞けるのが魅力でした。タイトルの前の「増田こうすけ劇場」とは何なのかとか、なぜ歴史的偉人をイジったエピソードがここまで多いのかとか、そういった長年の謎も解き明かされます。
そんな中でも一番良かったのが、エッセイとして著者の増田先生の心境に毎度共感できるということです。
先生は20歳で初めて描いた漫画が赤塚賞の最終選考に残り、翌年赤塚賞の佳作を受賞し、その次の年の赤塚賞で準入選となり漫画家デビューを果たすという、破格の経歴の持ち主です。漫画家のあれこれに詳しいわけじゃないけれど、これが規格外だというのはわかります。増田先生自身、「こんなにうまくいくものなのか?」と本の中で問い続けたりしています。
で、いわゆる「漫画家になるまでエッセイ」には、何が何でも漫画家になりたいけれど、応募するたびに断られ、悶々としたアシスタント生活を送り、苦悩に次ぐ苦悩の末にようやく連載に漕ぎ着けた、というタイプが多いらしいです。漫画家って当然、目指せばなれる(プロとして食っていける)という職業じゃないので、大抵は苦労話がメインになるとのこと。
そんな中で増田先生は、応募するたびに選考の上位に残り、しかも出したものは必ず前のよりいい賞を獲るという、かなりとんとん拍子のデビューを歩んでいます。ただ、本人に苦悩がなかったかというと、そうではなく、特に「自分は本当に漫画家になれるのか?」というところでは色々と悩んだり、不案を抱えたりしています。
そして、その苦悩の描写が、我々「凡の者」にとっても共感しやすいというのが、本書で面白かったポイントでした。
本書を読めばわかるように、増田先生、基本的にいつも自信なさげです。よく言えば「謙虚」だけど、悪く言えば「卑屈」とか「自己卑下しすぎ」とかになりそうである。赤塚賞で入選した際も、「何かの手違いではないか」「すべてが夢なんじゃないか」などと疑っています。
そして、漫画家を目指すということについても、「自分が漫画家になれるとは思っていない」「俺はあっち側の人間じゃない」と描かれています。当時の増田先生にとって、漫画家というのはあくまで“あっち側”の人間で、自分は“こっち側”の人間でしかないなのだと、そうしたことが言われてます。
最終的には増田先生も、「『なれるかも』や『なりたい』ではなく、『漫画家になるしかない』」(p90)と強く決意することにはなるんですが、そこに至るまでの「俺はあっち側の人間じゃない」というメンタルは、我々にも大変理解できるものだと思います。憧れの存在がいる“あっち側“に接近したいけれど、自分なんかには無理だと思ってしまうこの精神。本書では、ユーモラスな描写の中にも、そうしたちょっと薄暗いメンタルが叙情的に表れていて、それがエッセイとして大変面白いなと感じました。増田先生の経歴は破格も破格ですが、心理的な面では、われわれも共感できるところがたくさん残されていて、そこも本書の魅力と思います。
増田先生のエッセイへの感想はそんな感じ。
で、ここからは全く違う話になるけど、近頃、僕もよく見ている某サイトにて、新人ライター向けの懸賞&応募企画が立ち上がっております。詳しくはこちらのリンクより。
noteやってる人には、このサイト(あるいはYoutubeチャンネル)を見てる人がめちゃくちゃ、マジでめちゃくちゃ多いんだなあと近頃実感しています。
で、僕もまあ記念受験的に、応募してみようかな〜〜どうしようかな〜〜〜と迷っているところです。趣味でブログはやっているけど、マジのライターを目指しているわけではないので、本当に記念受験も記念受験。まあ別に応募費用等はかからないので、よほど運営に迷惑をかけない限り、挑戦するのがよいのではと思います。
ただ、記念受験ではなく、ここに全身全霊を注ぐという人も、少なからずいるはず。結構な人数かもしれません。
そんな感じで、これからも夢に挑戦するぜという人にとっても、この『ギャグマンガ家めざし日和』、かなり面白いんじゃないかと思いました。挑戦に伴う苦悩・失敗、そこからの起死回生とかしっかり描かれているので。『日和』らしい笑えるギャグ描写の中に、そうしたリアルな感情まで刻まれているのが、この本の大変面白いところだと思います。ゆえにおすすめです。おすすめだよ!!!
とはいえ、万人におすすめというわけではなく、『日和』を知ってた方が分かりやすいエピソードとかもあるので、やっぱり増田こうすけファン向けとは思います。特に、『日和』第1巻に収録されているエピソードが2つぐらい言及されるので、こちらを予習してから臨むのがよいかもしれません。まあ読んでなくても十二分に面白くはあるのだが。「全身タイツの劉備玄徳」でピンと来れば、大丈夫。ぜひ読んでみてください。