粉瘤で悶絶 「大丈夫?」じゃなくて「大丈夫だろ?大丈夫って言えよ」って言えよ
先週末は「敬老の日だから」と義父母が泊りにきました。それに便乗した義妹夫婦×2組(うち赤ちゃん1人)も、昼ご飯を食べに襲来。たくさんの大人をもてなすという私からすると義理オブ義理なおもてなしに奔走しました。掃除をしたりオードブルを用意したりケーキもいるかしらんと駆け回るなか、「敬老の日だから」って祝われる側が祝われようとして(押しかけて)くるってどんな気持ち?恥ずない?みんながみんな手ぶらでくるんや?夫はなんでもてなされる側の顔してんの?などなど次から次へと湧いて出る疑問をビールで押し流していたのですが、そんな心のしこりが吹っ飛んで消えるほどのドデカいしこりに悩まされることになります。
粉瘤(ふんりゅう)とは、お肌の下に袋状のなんかができて、そのなかに皮脂やらなんやらが溜まってできる腫瘍です。良性のものなので放っておいてもすぐに問題を起こすわけではありません。
という説明を受け、ワキの下にできたしこりを放置して約7年。最近ちょっと存在感増してない?ていうかデカくない?無視できなくない?ラヴィット!に気付けばいつもいる青木マッチョ(大好き!)くらいドカッと居座ってない?と、気になり始めたのが1ヶ月ほど前だったでしょうか。
そして義理の家族が総出で(たかりに)きた日、ビールをグビッと飲み干すときにあれ?なんかちょっと痛いかも?と違和感を覚えたと思ったら、ワキの下の粉瘤は、みるみるうちに膨れ上がり、あっというまに幼児のこぶしほどの爆弾へと進化を遂げたのでした。
粉瘤というものは悪性の腫瘍ではありませんが、放っておくと炎症を起こし、急速に腫れあがって痛みを引き起こすことがあるそうです。
これがとてつもなく痛い。粉瘤ができた場所も悪く、ワキの下ということで、何をやっても立ってるだけでも寝ててもどこかがどこかに擦れて痛い。冷汗が噴き出し、めまいもするし、痛すぎてゲボ出そう。
破裂寸前まで膨張しきった腫瘍は、「中でハムスターがかけまわってるみたいにドコドコ痛い」「もげてなんか生まれるかも」「頭まで痛くなってきた…脳まで乗っ取られる」くらいの惨状だと訴えました。
義妹夫婦×2がそれぞれの家へ帰ったあと、義父母に夕食後のコーヒーを淹れ、そろそろ息子のたるすけ(3歳)を寝かしつけねばという頃でした。
「大丈夫?」
義父母も夫もみな心配そうな顔をしてそう言ってくれますが、大丈夫なわけありません。ワキからハムスターかなんかが生まれそうな局面です。ぜんぜん大丈夫じゃない。寝かしつけ無理、代わってほしい。痛すぎて気持ち悪い。ちょっと吐きたい。なんか生めるなら生みたいなどなど、必死にしんどさを伝えました。
すると義父母+夫は、あらあら大変病院は空いてないしねえあらあらと心配がる素振りは見せてくれるものの、寝かしつけ代わるよとか後の家事はやっておくよとか具体的なことは言ってくれません。あらあら大変と心配がりながら、解散となりました。
彼らの言う「大丈夫?」は、安否を確認するための「大丈夫?」ではありませんでした。正確に言うなら「大丈夫だよね?」「大丈夫って言えよ?」という、私からの「大丈夫」を引き出すための合図でしかないのでした。
彼らが「大丈夫?」と問うたことで、私はなぜか、大丈夫なことになってしまうのです。
そもそもドデカ腫瘍を真っ赤に腫らしてフラフラゲロゲロの人間を見て、「大丈夫?」とか悠長なこと、私なら言わないような気がします。冷やす?寝る?逆にあっためた方がよさそ?とりあえず調べてみよか?くらいは常に気遣える人間でいたいところです。
ただのイボひとつで大げさと言えば大げさなのかもしれませんが。
結局、夫は自室に引きこもり、祖父母は客間でテレビを見たり風呂に入ったりとしているあいだ、ヘロヘロの私がきょむすけの寝かしつけを担当することになりました。たるすけもまた、「ママがいい。ママとねむねむしたい」とのことでした。
お布団に入ると、たるすけはまず間近で私のワキを観察し始めました。
「ママ、イタイイタイなの?」
ママのワキで膨らんだ見慣れぬものに、ちょっと好奇心をくすぐられつつ、おおむねドン引きといった様子です。
「うん…ちょっとね」
ほんとはちょっとじゃないけど。眠れそうにないくらい痛いけど。ワキで鉄球熱してる?てくらいだけど。でも「大丈夫だよ」って、言わなきゃ…力をと振り絞っていたところです。
「ママ、かわいそう」
たるすけは、眠そうな目をシパシパさせて眉を寄せました。そして「ママ、イタイイタイ、かわいそう」と、私の頭を撫でてくれたのでした。
なんだか泣きたくなってしまって、逆に妙なくらい元気な声で、
「大丈夫!」
と返していました。実際ぜんぜん大丈夫じゃないんだけど、痛すぎて死にそうっていうかもういっそ殺してくれってくらいだけど、だからもう早う寝てくれ頼むから今すぐ秒で寝てくれって願わざるを得ないんだけど、それでもやっぱり大丈夫かもと思えました。いややっぱ大丈夫じゃないわ。でもまあもうちょっとくらい頑張れそうよと、じんわり広がっていくものがありました。
その数分後、「ママ、それ、さわっていい?」と、暗がりにギラリと光る好奇心に戦慄することになるのですが。
後日、待ち時間が少なめという口コミを見た皮膚科に駆け込み、いったん薬で様子見てみましょうと抗生剤を持って帰らされるも症状はさらに悪化。二日後、近所で最も評判がよく最も待ち時間の長い皮膚科の先生に、「痛かったですよね?よく耐えましたね」と言われて泣き、幹部に針を刺されて力技で膿を出されてさらに泣くというすったもんだの末に、ようやく回復の兆しが見えてきた今日このごろです。
しかし粉瘤は、膿を出し切ったのちに手術で取り出してやっと完治となるそうです。先は長い。
「ママのイタイイタイがおわるまで」抱っこを控えめに我慢してくれているたるすけは、「おんぶならどう?」「おうまさんは?」「かたてでだっこしてみる?」といった交渉をしかけてきます。可愛くて鬼畜。