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18通目 綺麗になりたかったこと
一時期、若草物語みたいに、鼻を洗濯バサミで挟んで寝ていました。
綺麗になりたかったのか、綺麗になりたい人みたいになりたかったのか、よくわかりません。
今は洗濯バサミはしません。わたしは鼻が高くなり過ぎました。
洗濯バサミの所為ではなくて、母方の、遺伝です。
母も、母の父も、母の父の父も、大体こういう鼻をしているのです。
わたしは成長するにつれて、骨格にまで影響して高くなる鼻が嫌で嫌で仕方がなくて、母に「なんで普通の鼻に生んでくれなかったのか」と文句を言ったことがあります。
母は「文句ならおじいちゃんに言って!」と言っていました。
そして遂に小学校高学年で「みんなにブスって言われてるよ」という友達の報告を受けました。その後わたしは自分に「お前はブスなんだよ」と言い聞かせながらそのまま成長して、四年前まで化粧も覚えませんでした。
もう鼻を洗濯バサミで挟む浪漫はありませんでした。
わたしの劣等感は置いておいて、わたしから見た人々がどうだったかというと、正直に言ってブスというものがどんなものなのか未だにわかりません。
わたしには、みんな綺麗に見えました。どんな人も可愛い笑い顔をするときもあって、不思議でした。
だから綺麗になりたいと心の底からいつも思いました。
せめて鏡の中の自分くらいには、笑って話をしたり、目を見たり、出来ることなら全部の瞬間、歪んでない顔していたいです。
振り返ってみるとやっぱり、自分にブスなんて言わないで、素直な顔して生きればよかった。これからは、そうありたいです。 草々
二〇二一年十一月十七日
11.729光年彼方へ枯渇しても愛を湧かす 18
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