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階段に対する愛 夜記(よるき)(25)
疲れても、落ちても、階段が好きだった。眺めるのも、昇降するのも、昇降できる自分のことも好きなのだから、わたしは階段のことを気に入っている。
10月30日 土曜日
階段の、まず見た目には、三次元を感じる。
わたしは次元の中では何でも、次元を感じるのが好きでした。
石段もコンクリートの階段も、木の階段も、ひな壇も。
箪笥を下から順に開けて行って、階段のようにして上まで昇ろうとしたこともある。
昇っても、先には何もないのだけど。
✳︎
階段を昇っているときは、昇れることが誇らしい。
階段はわたしを、そういう気持ちにさせてくれたものでした。
滑って落ちたこともあるけれど、階段を嫌いになったことはありませんでした。
✳︎
階段から落ちたとき、人に見られたのが恥ずかしかったことがありました。
みんな気まずそうに通り過ぎているとき、余計恥ずかしくて、落ちちゃった、と自分で笑って誤魔化していました。
そんなわたしは何であれ、わたしは階段が好きでしたよ。
二十五日目。終わり。
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