夏の終わり、ワイングラスに口紅。一話
季節は夏の終わり
彼女と最後に会って、ちょうど一年経とうとしていた。
そんな前にいつ会ったか。なんてこと全く考えてもなく、ふと自分の知りたい情報を聞く為、僕は彼女に連絡をしていた。
でも、結局メッセージアプリで聞ける範囲なんて限られていて
もっと知りたかった僕は彼女に
「もし時間あったらでいいから、今度ゆっくり聞いていい?」
なんていうアポの取り方をしていた。
(出来たらでいいので、、)
なんてお伺いを立てる必要が僕にあった。
彼女には彼氏がいるのだ。
いや、実際には居た。
その彼女の恋愛は現在進行形ではないと
僕はこの時は知らない、また自分から聞く事もしなかった為だ。
「いつでもいいよ?」
そのあっさりとした答えにまだ僕は彼氏と別れていたなど
知る由もなかった。
お互いの都合を合わせて
新宿で待ち合わせる事にした。
週末の新宿は人でごった返していた。
電車を降りると週末の雰囲気がホームから
感じ取れた。
誰しもが少し心が湧き踊る賑やかな感じ。
僕は新宿東口を出るとさらに加速する感じがした。
「ごめん、少し遅れる」
なんて連絡があったけど、
この雰囲気や街並みだけで十分時間が埋まり
そんなこと全くなかったし、
待ち合わせに関しては僕は待たせるより、
待ちたい人だからだ。
待っていると横断歩道の向こうから
彼女が歩いてくるのが見えて手を振る僕。
彼女のまたひとつ大人になった姿に少し心奪われた。
今日はワインが飲みたいとリクエストされたいたので
ワインバルに向かった。
少し暗めな店内、僕らはカウンターに通された。
はじめは泡泡な感じの飲み物がいいね、なんて話し、
同時に前菜も仲良く選んだ。
グラスが来ると乾杯をする。
久しぶりにグラスを合わせる、
もうこうして飲むこともないと思ってた僕からしては
想像出来ないシチュエーションだった。
彼女と会わなくなって約一年あまり。
その環境や仕事の状況を聞くだけで僕には十分すぎる時間だった。
何もやましい事など考えず、ただただ純粋に話を聞くだけで十分だった。
でも実はそこから違っていた、
全てワインのせいだ。
そう、あの日は全てワインのせいだ。
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