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『それゆけ!学級委員長』はMVを得て月ノ美兎となった話

10月7日、月ノ美兎委員長のメジャーデビュー1stシングル『それゆけ!学級委員長』が発売されました。

もっとも、敢えて書くのですが……僕は当初、そこまでこの曲に良さを感じられていませんでした。実は。黙っていたけど。

この曲はCD発売以前に彼女の配信や、彼女が出演したラジオで先行してかかっており、どんな曲かはあらかじめわかっていました。かわいくて、どこかレトロな雰囲気のある良曲で、多くの人が絶賛する気持ちも理解できたのですが。
これは果たして「月ノ美兎」なんだろうか?という思いが拭えなかったのです。

歌詞に歌われている彼女は、彼女のようでいて、どこか彼女でないような……と、どこかしっくりこないという感触がありました。
前曲『アンチグラビティ・ガール』があまりにも「月ノ美兎」で、彼女の曲として出来が良すぎた、というのもあるかもしれません。どこかで同じ路線の「2曲目のアングラ」を求めてしまっていたというか。
『アンチグラビティ・ガール』はかのTAKU INOUE作のマスターピースなので、みんな絶対聴こうね!)

そんな中、公式の発売日である7日に、彼女のYouTubeチャンネルにてMVが公開されたのです。

衝撃でした。
非の打ち所がないほどに素晴らしい出来でした。
何ならちょっと泣きました。

アニメ番組のOPを模したこのビデオクリップは、完璧に「月ノ美兎」を表現していました。
リヨ絵で躍動する彼女はひたすらに可愛くて、しかし歌詞にも映像にもツッコミどころ満載で、まさに彼女の普段の配信風景をありのままに描写していました。
あらゆるカットにパロディネタや小ネタを仕込んだ映像はそれ自体が2000年前後のアニメのOPのパロディになっていて、古い2次元オタクが喜ぶ仕掛けがふんだんに施されていました。
この映像は、まさに彼女だったのです。

このMVでかかる「主題歌」として、『それゆけ!学級委員長』という曲はあまりに完璧でした。
言うなれば、この曲はアニメ『月ノ美兎』のOP曲として最高の出来だったのです。……もはや、何の違和感もありませんでした。
MVがこの曲の最後のピースをはめてくれました。
ようやく、ササキトモコさんの描いた世界が僕の中にストンと落ちた気がしました。

ある意味、僕がこういう境地に至れていなかったのだなぁと。僕自身、僕の中の「月ノ美兎」をアップデートする必要があったのかもしれません。
この界隈ではおなじみのライター たまごまご氏はこんな風にツイートしていて、自分も首肯した次第。

そう、彼女は徹底して2次元だったのです。

余談ですが……僕はふと、彼女の「相棒」であるでろーんこと樋口楓さんの、やはりメジャーデビューシングルのMVを思い出しました。

このMV、殆どが3次元のリアル映像で、よく見るリアルのバンドのMVの構成をそのまま採っています。でろーんはバンドのボーカルとして、当初はモニタの中で歌っているだけですが、途中でモニタから飛び出し、バーチャルの姿ながらリアルのバンドに混じって熱唱します。
バーチャルの世界から3次元の世界に殴り込みをかけてやる、という意気込みが感じられるわけです。

委員長は全く逆で、バーチャルの、すなわち3次元的な実体も併せ持つ身でありながら、2次元の世界へと勝負をかけていたわけです。
彼女の、まったくテンプレではない、一筋縄では理解できないキャラは、テンプレだらけの2次元においてこそ異彩を放ち、光り輝くのです。
だからこそ、アニメやマンガやゲームにどっぷり浸かった俺らが彼女に沼れるのです。

いわば「2.1次元」の存在になった彼女が、歌の世界でもこれからどんな活躍を見せてくれるか、本当に本当に楽しみです。

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