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神椿代々木決戦の二日間

 2024年1月13日(土)~14日(日)の二日間にわたって行われた神椿代々木決戦の日に、何をしていたかの記録と感想です。記憶というのは次第に薄れてゆくものなので、割と自分用です。

 代々木第一体育館、現地に駆け付けた時刻は14時前後でしょうか。物販の始まる10時前から観測者が並んでいるという情報はTwitterで確認していたので、歩道橋を降りた先の広場は既に、神椿スタジオのモノクロなショッパーを下げた観測者でいっぱいでした。集まってみると、こんなに多いのかと思わされます。えっらい人出です。

 初日はV.W.Pによる『現象Ⅱ』が上演されます(これを読まれる方には自明と思いますが、何年も後で見返せるようにわざわざ書いています)。まずはキッチンカー、並びがたまたま少なめだった理芽チの『ラブみ強メチュロス』を囓って、カラースプレーチョコとザラメの食感、チュロスの固めの歯応え、甘さが美味い! これはどれも美味いに違いないと思ったのですが、ひとまずここまで。

ラブみ強メチュロス!!

 まずは毎度恒例の観測者ご挨拶です。自分もいつの間にか、ライブ現地で挨拶を交わすような人達ができました。ちょっと昔は人間関係に関心が持てなかったのですが、今は交流の広がりが嬉しいです。ただ失礼ながら、顔も名前も言ってくれないと思い出せないことが多いんですね……社会人なのに駄目で申し訳ないです。

 ここで『神椿私撰歴史集・神椿百花譜(神椿スタジオの現在までの歩みを詳細な冊子にした労作です)』を掲げている方を見かけたり、ライブの度にお会いしている方にお会いできて楽しくお話できました。ポストカードから、さらに誕生日を過ぎたということでお菓子まで頂いてしまって……すみません、ありがとうございます。

 この辺りで冷たい雨が降ってきました。雨はすぐに雪になり、もうどうしようもなく寒いです。傘忘れました。遮蔽物ありません。

 そんな酷い天候の中、ヰ世界情緒のクレープ『W.B.M -White Butter Magic-』を購入、雪の中食べるのもなあと思っていたところ、また別の観測者の方にお会いできて合流。クレープは結局この荒天の中でなんとか食べました。クリームがちょうど良い甘さで美味しかったです。

 また、雛鳥のコートを着た一団にもお会いすることができました。そうしているうちに16時、ようやく列が形成されてきました。ここから17時に開場するまで、寒さと断続的に降る雨で、早く場内に入れてくれという思いでいっぱいでした。

 代々木第一体育館の中は橙色の照明で強く照らされ、室温も調度良く調整されており、ここでやっと生きている気がしてきました。自分はアリーナ席なので平坦な床に大量に並ぶパイプ椅子から割り当てられた座席を見つけなければいけません。足下の木板が若干不安定です……ありました。
 あとは、待つだけです……。

 『現象Ⅱ』は4時間ぐらいあったのではないでしょうか、異様な長丁場であるものの、見ている側としては体感そんなに長く感じない……ということは良いライブだったのだと思います。ずっと気を失っていたみたいにあまり明確に思い出せません。ですが、良いものを受け取った記憶があります。

 夢中でした。『共鳴』から始まり、テンポの良い曲で盛り上げてから独特の『*的シリーズ(勝手に命名)』の連続、そして新曲だらけのVS楽曲は幸祜さんとCIELさんの『此所で咲かせて』が命の限り歌わんという歌詞で、花譜ちゃんとAlbemuthの『千年奏者』は昔のボカロっぽさがあって良かったです。そして系譜局の連続……どれも好きな曲ばかりです。それから、W.I.PとVALISも含めた『機械の声』、これが素晴らしかったですね。歌詞で泣いた。AIと愛みたいなやつに弱いです。そこからSINKAライブの楽曲群に来たわけですが、情緒さんの『描き続けた君へ』の導入がドラマチックに演出されていて素晴らしかったです。新形態、八咫烏は思った以上に可愛い姿で、エトピリカのようなほっぺのもちもち感は無くなりましたが、とても良いと思います。後半の『花束』『祭霊』から来るV.W.P新曲ラッシュはもう本当に最高でした。バーチャルウィッチ、フェノメノーンと叫び続けました。

 MCで、あまりそんな顔を見せない気がする理芽チが泣いていたのが印象的でした。と思ったらV.W.Pみんな泣いていました。

 アーティストの一年は我々一般人とは異なるのだろう……ということを思います。なんとなく働いて、漫然と年越ししているような自分とは違って、毎回異なるミッションを達成するために厳しい鍛錬を繰り返し、手放しでは持続しない支持を維持する努力を続けてゆく……。一年。その一年の密度がとても濃厚なのだと思います。周年記念の配信で皆さん泣きますし、ライブでも泣かれますもんね。重みが違いますね……。そういう意味では、自分はアーティストの人生をアートとして見ているのかもしれないと思いました。人生がアートというのは、この後にも関わってきます。

 終了時間が遅く、電車を降りてみたら23時だったので、24時間営業の富士そばにお世話になりました。なんかお客が割といて、蕎麦が茹でたてというか、やたら美味かった……深夜営業に救われる。

 翌日は開演17時30分までに時間が余っていたので、中目黒に出かけていました。時々行くカセットテープ屋さんに行ってみたかったんですけど、開店が午後なので時間つぶしに見つけたのが……寄生虫博物館です。入場無料で寄生虫の標本がいっぱい見られるというインパクトの強い博物館であります。サナダムシの長いやつ、どの位長いか分かります?

寄生虫博物館のノベルティ定規、300円台で安い、そして優れたデザイン

 とにかくめちゃくちゃキモいのですが、このゾワッとくるキモさは同じ形が繰り返される、規則性の生み出すキモさだと感じまして、妙に数理的な印象を持ちました。生物学とまではいかないまでも、高校生物をやりなおしたいと少し思いました。顕微鏡で藻を見るのとか、キノコの図鑑とか、元々は好きだったもんで……。あと、線路下にあるチャイのお店(CHIYA-BAさん)に行きました。あんなにスパイスの利いた濃厚なチャイを飲んだのは初めてでした。落ちついて飲めて、美味しかったです。

中目黒のCHIYA-BAさん。濃厚なチャイ
カセットテープの品々。
今どきはワイヤレスイヤホンの使えるプレーヤーが存在する

 二日目は花譜ちゃんのワンマンライブ『怪花』です。先刻、寄生虫博物館へ行ってしまったので、アスファルトに咲く極彩色の花のイメージが重なってきまして……まあ自分が悪いんですが……宇宙の神秘ですねえ。

 序盤はカンザキイオリさん作曲の楽曲を歌われ、おおー花譜のライブが始まったー、と思いつつ区切りの『邂逅』で、こう……心を持っていかれました。そして現れた花譜の新たな形態は雷鳥。モチーフの鳥が可愛いんで、モコモコ感のある姿ですね。これで一年間、活動されるのですね……可愛いです。ここからゲスト。佐倉綾音さんと二人で歌う『あさひ』もう、既に良いんですよね。すごいミュージカルみたいな雰囲気で良かったです。カリオペさんとの『しゅげーハイ!』は超ラップ早口で技術が凄かった。KTちゃんとの『ギミギミ逃避行』はORESAMAみたいにリズム感が良くて好きな曲になりそうです。

 そしてELEVENPLAYが踊る恒例のディスコタイム。ビシッと踊られる。MADTVの衣装は知らなかったけれど、花譜ちゃんデザインだったんですね。はっちゃけたお姿でした。

 Virtual Being花譜はリアル寄りのバーチャルお姿。お腹の見えるラバースーツに配線が繋がった姿、かなり攻めてました。長谷川白紙さん作曲の『蕾に椿』、催眠的で聴いてて癖になるんですが、不思議な空気感と奇妙な映像がマッチしていてこのライブのためにあるような楽曲となっていました。

 新曲ラッシュはどれも良いんですけど、『スイマー』『アポカリプスより』が好きですね……ちょっと明るくない曲が好きです。あと『ゲシュタルト』も面白いです。スクリーンに映るタイポグラフィが完全にロシア・アバンギャルド系で、そこも個人的に好みでした。あとguianoさん。guianoさんは落ち気味な我々を鼓舞してくれるありがたい存在です。二日間とも格好良かったです。

 そしてそして……廻花さんの登場です。花譜のオリジンに限りなく近い姿が現れ、困惑から賞賛に変わってゆく観測者達の拍手が感動的でした。自分は驚きというより、そうか……って感じでじわじわ実感が湧いてきたのですが、言われていることはわかるなあ……と思っていました。
 なんで、そうか……と感じたかといえば、数ヶ月前のラジオ番組『ぱんぱかカフぃR』で、「なんでみんなはそんな風に、私のことを思っているんだろう。と思う時がある(意訳)」とゲストの方に相談していた記憶があるからです。確か、ゲストは大沢伸一さんでした。大沢さんは自分が思っている自分と、例えば……そういう誰かの小説とか、ファンや周りの人間が思っている自分に乖離があることは、よくあるから……無視しちゃってもいい、みたいな感じで答えていたはずです。この頃から既に、廻花さんの構想はあったのでしょう。誰かが書いた小説と言われて妙にドキッとしたので、覚えているのですが……。

 自分も含めて、インターネットの住人は文字で会話している時の姿と、実際の本人の間にはギャップがあるものです。会った人みんな、思っていたイメージと違っていました。我々は社会活動を続けながらインターネットの住人をしています。どちらかが本当というわけではなく、バランスを欠くべからずの、どちらも必要な在り方なのです。ならば、花譜ちゃんが廻花という姿を求めたのは自然なことであります。私達はインターネット上で社会人とは別の顔をして酒を飲んだり巫山戯たりしていますが、元々がインターネットな花譜ちゃんは、我々とは逆の、リアルの姿を求めた。それは花譜ちゃんよりもずっと背が高くて、二十歳の女性に相応しい姿だった。どちらが本当ということはなく、どちらも欠くべからざる実体だった。当然のこととして受け入れるべき話です。そして、自己を開示することも、アーティストのアートの形態のひとつなのでしょう。人生はアートです。

 そんなことを考えながら、廻花さんの楽曲を耳にしていました。花譜ちゃんの……いや、廻花さんの作詞は意味が散らばっていて、普通の文法通りには読めないけれど、どこか意味は通じるものなのが独特のセンスだなと思います。そこに素晴らしいメロディと演出が加わって、総合芸術として素晴らしいものがあの場に顕れていたと思います。

 一日目のV.W.Pはとにかく楽しい盛り上がるライブ、二日目の花譜ちゃん・廻花さんはKAMITSUBAKI STUDIOらしい尖ったセンスのライブということで上手く分けられていました。同じ観測者との出会いといい、キッチンカーといい、周りの出来事も良い思い出になる、全体としてとても良い体験が得られた二日間でした。
 神椿のライブにまた行きたいです。本当にありがとうございました。

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