窘められた魂よ
財布に金があると思い、確かめた時無いと思い、十円玉四十六枚で買った煙草と浮浪。自分だけを離さなかった為かかった呪い。身を呈して現代社会への敗北を。自分を離さない者が現実に飲み込まれ死の泥を被る。
現実に手足は満足に動きその筋力で死を掴んでしまう。
混じり合った後、1ミリ毎微かに吸い取られる自己。
抗い諦めるのだ。身を崖から落としてもほんの突起を捕まえ仮のお前だと託される。
崖の上で狼狽する自分の背を自分が押し、転げ落ちた自分は自動で這い上がり崖の上でも下でもなく中腹の岩壁にぎりぎりのまま掴まれと言う。上がってはまた自分が背を押す。
押し殺し殺されの身分でやっと芸術を謳う。
自分そのものが芸術であり作品という形にした途端それは自分の連帯保証人。
作品という手形。
自己を担保に血の律動を引っ張り上げる。
もう遅いぞ。お前達、もう遅いのだ。
自己は際限なく拡大し太陽に届こうとする。その身は火傷に爛れても残酷に肥大。
何があるのか考えても無駄な事に中腹で気付いている。
唄を生んだ瞬間死にその唄は奪われる。
生んでは奪われる。
諦めろ。
現実では浅すぎる。芸術では近すぎる。
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