青空と生殖器

初夏。サックスの練習をしにいつもの高架下に行くと、野グソをしている少女と目が合った。
何一つ邪魔しない青空と熱風と白い雲、これぞ生命と主張しているかのような臭い。
このブレザーは近くの高校のだろうか。
少女のアナルからこぼれる星くずとびっくりしたままの瞳に、胸が高鳴る。
この少女は野グソを他人に見られても大声を出すタイプではないらしい。
「あ”ぁあぁ」と情けないうなり声のようなものを上げている。
私は少女が事を終えるまで彼女の目をしっかり見つめていようと思った。
出来事の異常性に抗いたくもそれは生理現象である。
うんこを出し終えても彼女の地獄にジムノペディは流れない。
そのままスプリンクラーのように草木におしっこをかける少女。
私はそこでハッと我に返った。
何を満足気に鑑賞しているのだ。一刻も早く写真に収めないと。
慌ててスマホを取り出そうとして、一瞬考えた。
いや、最高の瞬間こそ写真なんかに収めず、この網膜と記憶に留めておくべきだ。
これは観光旅行じゃない。少女の野グソだ。
目線を少女に戻すと、震える手で股間を拭き、立ち去ろうとするところだった。
勿論呼び止めるような野暮なことはしない。少女は一目散に走り去っていった。
今日は良い音色が出そうだ。
ひとつだけ、記念に少女の出したうんこにおしっこをかけた。
なにかが昇華される気がして。

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