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ミステリ連作短編集の最高峰

 七つの海を照らす星     七河迦南 創元推理文庫
 アルバトロスは羽ばたかない 同上   同上

ミステリ小説で連作短編集は数多くあるが、上記2冊は別格の内容であると個人的に思う。(連作短編集とは、あるテーマで繋がっている短編集群)
この2冊は、家庭で暮らせない子供たちのための児童養護施設、七海学園の保育士・北沢春菜が学園で起きる不可思議な事件に奮闘する形で物語は進んでいく。

七つの海を照らす星 あらすじ
児童養護施設・七海学園では、少女にまつわる七つの不可思議な話が言い伝えられていた。そんな中、学園では次々と謎に満ちた事件が起きていく。保育士・北沢春菜は児童福祉司の海王の力を借り、謎解きを通して子供たちの悩みにぶつかっていく。過去と現在を繋ぐ謎たち。全ての謎が明らかにされたときに浮かび上がる真実とは。

児童養護施設を舞台にしているため、重めのテーマを扱った短編もあるが登場人物の成長・前向きな姿勢に読後感は爽やかなものである。短編1つ1つクオリティが高いが、やはり目玉となるのが短編群にわたり散りばめられている過去の謎である。伏線がしっかり張られ、驚きが驚きを呼ぶ。
しかしこの小説だけでも十分な水準であるが、続編のインパクトを考えると布石でしかない。

アルバトロスは羽ばたかない あらすじ
七海学園の保育士・北沢春菜は、毎日多忙ながらも生き生きと職務に励んでいた。しかし、学園の子供たちが通う高校の文化祭の日に起きた転落事件が影を落とす。本当に事故なのか。先立つ春から晩秋にかけて春菜達が解決した学園の4つの事件に意外な真相の重要な手がかりが隠されていた。

大枠は七つの海を照らす星と同様に保育士・北沢春菜が奮闘していくのだが、転落事件がはっきりと連作としてのメインに置かれている。この謎が紐解かれるとき、確実に前作を超える驚きで虚脱感を得るほどの余韻になるであろう。私も次の日は読後感の余韻で、仕事に手が付かなかった。

文庫本2冊で計800Pあるが、幸いにも短編のためゆっくり読むことができる。無理せず読み進めて欲しい。

あわせて読みたい本
カラット探偵事務所の事件簿 1・2 乾くるみ PHP文芸文庫
連作短編の宿命なのか、短編1つ1つ当たり外れはあるが・・・
後はご自分で読んで欲しい。


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