夏に読みたくなる青春ミステリ
クールキャンデ― 若竹七海 祥伝社文庫
青春ミステリものは、どちらかというと主人公達の精神的成長を重点に置く。ミステリのクオリティは度外視したものが多い傾向である。ゆえに私とかは、あらすじで青春ミステリものと判断し、ミステリのクオリティ的にはかなり油断して読む。この作品は油断して痛い目にあった名作の1つである。
あらすじ
誕生日と夏休みに胸を弾ませていた中学2年の渚。しかし、自殺を図り重体だった兄嫁が亡くなり、同時に自殺の原因だった兄嫁のストーカーが変死する。警察は渚の兄良輔に疑いをかける。渚は最悪となった夏休みを乗り切り、兄良輔の疑いを晴らすことはできるのか。
まず本を取ると気づくのはページ数の少なさである。全部で160Pで他の文庫の約半分である。そして、中学2年の渚の一人称で進むのでテンポがかなりいい。デザート感覚で読める作品である。内容も中学2年の大人になりきれない部分を生々しく描いており、リアリティも申し分ない。さらに終盤に明かされる衝撃はかなりのものである。160Pしかないので軽い気持ちで読んでぜひ痛い目にあって欲しい。
あわせて読みたい本
水の柩 道尾秀介 講談社文庫
道尾秀介に複雑な子供の心情と成長を書かせたら右に出るものはいない。この作品も物語を通しての主人公の成長をミステリのクオリティを落とさず描いているので名作である。いずれ紹介したい。
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