温かな手に触れる。
娘は寝る時間になると、娘はお気に入りのぬいぐるみを自分の布団の周りに並べる。「娘よ。あなたは一体どこで寝る気なの?」と、問いたくなるくらい、ぬいぐるみの寝床作りに真剣。(まぁ、間違いなく朝起きると全て散り散りになるんですけどね。。。)
娘は「隣に来て〜!」と枕を叩いて私に言う。寝る前の儀式が始まる。私はぬいぐるみの隙間にお邪魔する。
昔見たテレビで、美輪明宏さんが「子守唄を唄って子育てするの。そうすると反抗期になって困った時、お母さんが鼻歌で子守唄を唄うとね。子供の心が落ち着くのよ」みたいな事をおっしゃっていた。それを聞いてから、寝る前の子守唄が儀式になった。
私は、子守唄を唄う。娘は目をつむる。
私は、娘の背中を擦る。大きくなった背中。
娘には「あめふりくまのこ」「ゆりかごの うた」「くまのプーさん」の三本立てで唄う。
ゆっくり背中を擦りながら。
ゆっくり呼吸に合わせて唄う。
娘の呼吸がスーっと変わり、力が抜けていくのがわかる。
深い眠りに入っていく。
それを見計らって、私も擦っていた手を止める。
娘の手に触れる。柔らかくて温かい。
その少しちいさな手に触れると、過去を思い出す。
幼稚園の時。小さな頃から息子に比べると体が丈夫だった娘。丈夫なだけに、薬を飲み慣れていなかった。幼稚園に通うようになった頃、花粉症の症状が出るようになった。花粉の季節になると薬を飲まなければいけなかった。朝、朝食を食べさせて、薬を飲ませる。オレンジ色の粉薬を水で練ったもの。
私は「またかも・・・・・・」と、怯えながら薬を口に入れる。娘は一息に飲み込むが、、、間をおいて娘は薬を吐き出す。泣き出す娘。
朝の忙しい時、娘を送り出し、会社に行かなければならない。ただでさえ時間のない時に、汚れたパジャマから床から、、、片づけなければならない。これが毎度の事、起こる。とても味に敏感な子だった。色々工夫はしてみたが、調整がまずいと少しの苦みで吐きだしてしまう。
本当に時間のない時は「いい加減にしてよ!」と泣いている娘を怒鳴りつけている自分がいた。
・・・どうにもならないのに。
・・・怒鳴っても何も解決しないのに。
・・・苦しいのは娘の方なのに。
静かな寝息をたてて、眠る娘の手のぬくもりを感じながら、当時、乱暴に洗った今よりずっと小さかった手を思い出す。
「ごめんね」と呟く。
反省と償いの気持ちで、また娘の背中を擦る。娘は変わらず静かな寝息で返してくれる。
娘が「隣に来て」と言わなくなるのもあと少しだと思う。娘の背中を擦れる間は、こうやって一つずつ「ごめんね」を呟いていこうと思う。
※薬問題は、ダメ元で糖衣の錠剤に変えてもらってからは、吐かなくなりました。ご参考まで。
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