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第21回 おもしろい日本?美しい日本?
こんにちは、vibrance建築と街担当のタツです。
前回の『キモノ・マインド』のバーナード・ルドフスキーについて調べていると、日本で関係のあった人として松岡正剛さんという編集のスペシャリストに突き当たりました。早速、『キモノ・マインド』についても触れている『日本流』という著作を入手してバラバラと読み進めています。
残念なことに松岡正剛さんは、昨年の8月に亡くなられています、現在ユリイカで特集号が発行されているのを発見して、慌てて入手しましたがかなり売れているようで印刷の隙間なのか古本が高額になっていました。(ネットは便利ですが、こんな時は不必要に高額に振れてしまってびっくりしますね、映画「cloud」そのものです。)写真を見ると確かに見覚えがあるし、やってきてる仕事も見たり読んだりしてるものもあったのですが、今まではその名前を認識してはいませんでした。
『日本流』を読むとそのバックボーンの知識量が凄まじしく、読むべき書物、会うべき人、見るべきもの、聞いておくべき音楽ですら自分が何にも知らないまま生きてきたことに気づいて本当に悲しくなってしまいます。まぁ、僕はこのまま何も知らないまま終わってしまうんでしょうが。
件のルドフスキーとの話はとても興味深いです。2人で新宿から銀座まで散歩している途中(なんか明治の漱石の「三四郎」の中の話かよ!!って突っ込みたくなりますが)、四谷あたりの裏路地に入っていき住民が作ってる植物の棚をしきりに感心していたり、日本家屋の空き家を見つけると『「日本の空家は欧米の空家と全く違っている。欧米の空家は人がいてもいなくても似たようなものだが、日本の空家には別のものがある」とつぶやいたと思ったら、「そうだ、2人で『人のいない家』という本をつくろう。と言い出したりもする。』そんな人だったようです。
(これを読むとロラン・バルトの「象徴の国」の主題、日本における中心の空虚(不在)との共通性を感じませんか?外から見た日本とは何かをなされている場ではなく『空』とか『間』によって特徴づけられるものなのでしょう。このこともいつかゆっくり考えられるといいなと思います。)
この「日本流」の中で「キモノ・マインド」については
それでもなお私は、過去の国民的遺産が現代日本人の間に軽い位置しか占めていないのを知ってショックを受けた。私が一番驚いたのはほとんど全ての日本人が伝統的文化から遠ざかり、アメリカの使い捨て文化を安易に取り入れていることだった。
と書いてある部分が全てであり耳の痛いことであると指摘しています。
でもまぁ日本は大陸の吹き溜まりの果てに存在する地理的特性から、海を渡ってやってくるものや人が新しく価値の高いものであるので、それをいかに受容していくかというのが日本的な考え方の基本なんでしょう。その割合や程度が進みすぎてるかどうかが問題になってくるんでしょうが。
以前ドラマで見て印象深く覚えているシーンの一つに(どのドラマだったか明確に覚えてないんですが『イキのいい奴』の中の小林薫だったと思うのですが)、伝統的にくらすチャキチャキの江戸っ子が家で客をもてなすために珈琲を挽きながら「おかしく感じるだろ?俺がこんなバタくさいことやってるのって、でもなぁ江戸っ子てェもんは元来新し物好きなんだよ」ってセリフがあります。これが本来の日本的なあり方だった気がします。「バタくさいから好き」、それはバタくさくないものが前提としてあってこその『バタくさい』なんですよね。
実は僕は最近、古着の着物を買ってたまに着てみるってことをし始めています。ただ「日本流」でもあるようにもはや着物の柄の名前さえわからない僕は着物のおしゃれをすることはできないんですよね。オシャレってスタンダードを知った上でその中に生じる微妙な差異を提示して楽しむ行為なので、そもそも何にも知らないのにこれがイキだぜ!なんて言えたもんじゃないんです。逆に僕は着物を着る行為そのものが日常との差異を示すオシャレにしようとしてるのかもしれません、まるで海外から来て着物を着て喜ぶのと同じように。ただ着てみるとわかることも多くて、やはり始めてみるってことが大事だってことは確かです。
とりとめもなく日本的ってことについて松岡さんやルドフスキーさんに連れて行ってもらったものを書き殴ってしまいました。何が書きたかったことかわからなくなってますが、僕は安易に日本のことを美しいとか楽しいとかは言えない だって全くわからないからっていうことが今回の結論ということで、大好きな日本については今後も考えていきましょう。