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第20回 キモノ・マインド

こんにちは、vibrance建築と街担当のタツです。
今回は難末年始に読んでた本の紹介をしたいと思います。
「キモノ・マインド」バーナード・ルドフスキー 初出1965(訳:新庄哲夫)
今は鹿島出版のSD選書に収録されて再版されています。
著者のルドフスキー(1905〜1988)はオーストリア生まれの建築家であり、キュレーターであり、エッセイストであり、旅人です。建築の世界で有名、あるいは世界で有名なのは『建築家なしの建築』展とそのガイドブックを出版したそのまま『建築家なしの建築』で有名な人になります。
Vernacular  (風土的)
Anonymouse (無名の)
Spontenouse (自然発生的)
Indigenouse  (土着的)
Rural     (田園的)
な建築を蒐集し、無名の工芸家が風土にあった美しい建築を作っていることを提示して世界に旋風を起こしました(この本も上記SD選書で再版されていますの購入可能になっています、おすすめは都市住宅の古本特集号を探して買うことですが)。この本の影響で60年代から70年代、世界の若手建築家が人類学者と化して世界の集落の調査に赴く(日本でもつい先日亡くなった原さんが研究室の若者を引き連れて世界を回ります。もちろん、日本の集落もかず多くの調査が行われていきました)ので、本当に影響力の大きな本なんです。
ルドルスキーは、後にNYに居を構え世界を旅しながら生きるのですが
実はだいの日本好きで何度もこの地を訪れ、そのうち60年前後は2年の長期滞在もしています。その彼が『日本に宛てたラブレター』(本書 前書き)として、同時にアメリカ文化へのアンチテーゼ(戦後、急速にアメリカ化していった日本も含まれる)として皮肉まじりなユーモアを込めて書かれたのがこの本になります。
まぁ、下準備はこれくらいとして
この本に書かれている日本は、俺らがちょうど生まれてくるちょい前の60年くらいの話ですがまぁ、今となっては遠い世界のようで面白い。
出てくる日本人は、全く時間を守らないし、過剰に優しかったり、はたまたつっけんどんだったり。もちろん街には着物を普段着として着ている人が多くいて、、ちょうど石坂浩二の金田一さんが街を下駄ばきで歩いてる映画の中に迷い込んだようです。ルドフスキーの目には西洋とは異なる価値観で世界を認識している日本人を驚きと好奇心に満ちた目で楽しく記録して流のがわかる気がします。
外部からの視点で日本を見るって本はこの時代だとロランバルトの『象徴の帝国』もありますが(あらゆる西洋人から不思議に見えるらしい通りに名前のない番地制度はどちらも取り上げられてますし)、あちらは日本文化の事象から意味されるものの消失を中心に論じてるに対して、ルドフスキーは目にする事象を来日する前に読んだ300冊の本(特にJapan Guide Book)と比較しながら、その驚きと共に淡々と記録していきます(実は日本へのラブレターと前書きに書いてるのは皮肉な見方をそのまま書いているために、日本を批判してると日本人からとられかねないと思ったからですね)。どっちかというと今和次郎の考現学的な視点を持った海外の人から見た日本ってイメージの内容になっています。
今から失われた日本を見つけ、なんならルドフスキーが批判したアメリカ的な考えになってる僕らにとっては皮肉を突きつけられてるですが、そもそも日本ってなに??って考えるにはとてもいい本です。
はてさて今の日本は世界でも豊かで清潔な国になっていますが、一方で自分たちの文化的背景はすっかり忘れ去ってしまったのでしょうかね?


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