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ダッカ近郊ビル(ラナプラザ)崩落事故

ひとつ前のページでアパレル業界が抱える問題についてざっくり紹介しました。そこで今回は、具体的な例を紹介しながら、いかにアパレル業界が世の中に悪影響を与えてきたかをお伝えしたいと思います。

前回の記事の内容はこちら↓

前回も触れましたが、私たちが着ている衣類の多くはバングラデシュや中国、ベトナムといった国々で縫製されています。中でも近年最も増加傾向にあるのがバングラデシュ製の衣類です。この国の縫製工場の労働環境は私たち先進国で暮らす人々の想像を絶するものでしたが、その様子が人々の目に止まることはなかなかありませんでした。

悲惨な事故の概要

その劣悪な労働環境が世に知れ渡ることとなった出来事があります。それが2013年4月24日(現地時間)、バングラデシュの首都ダッカ近郊の都市、シャバールで起きたビル崩落事故です。8階建ての商業ビル、「ラナ・プラザ」は輸出用の衣類を生産する縫製工場でした。その日、実に5000人もの人々が働いていたこのビルが崩壊し、中にいた1127名が命を落とし、約2500名もの人々が負傷しました。この痛ましい事故はすぐさま世界中のメディアによって報道され、たちまちバングラデシュの縫製工場の実態が注目を浴びることとなりました。

事故の直接的な原因は、上層部に設置された4基の大型発電機と数千台のミシンの稼働による振動で建物に大きな負荷がかかったことによるものでした。他にも建物の6階〜8階が違法に増築されていたことや、緩い地盤を無理やり固めた場所に建設されていたことなど、構造上の問題が多く見つかっています。さらに、事故前日には建物の床や壁にヒビが見つかり、営業を中止するよう要請されていたにもかかわらず、ビルの責任者らによってこれはもみ消され、翌日凄惨な事故が起きてしまったのです。

The True Cost

ラナプラザに限ったことではありませんが、このような縫製工場で働く人々の多くは若い女性で、中には自分の子供を養うため、その身ひとつで出稼ぎに来ていた人も多くいました。工場内の労働環境は言うまでもなく劣悪で、責任者による暴行や半強制的な労働も横行していました。驚くべきなのは、このような環境下において働いていても、日本円に換算して時給たったの数十円で働いていた、と言うのが実情です。

このような実態は2015年に公開されたドキュメンタリー映画、「The True Cost」にて詳細に語られています。実際に工場での労働を経験した人によって語られる縫製工場の実態は、とても私たちの生活からは想像もできない悲惨なものです。上の画像は映画のワンシーンです。女性の名前はシーマ・アクターさん。実際にラナプラザで働いていた彼女の口から、過酷な労働環境が語られます。以下和訳、

「消費者には私たちの血によって作られた服を着てもらいたくない。」

シーマ・アクター

この映画は現在YouTubeで無料で公開されているので、読者の皆さんには一度ご覧になっていただくことをお勧めいたします。(上の画像のリンクから動画をご覧いただけます。)

大事なこと

この事故を、ビルのオーナーや工場を採用しているアパレル企業だけの責任だと考えていては、この問題の本質的な解決にはなりません。そういったプロセスで製造された服は、実際私たち消費者の手に渡るということを忘れてはならないと私は思います。つまり、こういった不条理な現状は社会全体に責任があり、私たち消費者も、自身の消費行動に責任を持つ必要があるということです。

では、こういった現状を解決へ導くために、私たち消費者は何をすべきなのか。次回以降の投稿では、私たちが実際にできることを紹介していきます。少しでも、今この世界のどこかで苦しむ人たちの生活を助けられるよう、小さいことからでも、日々の生活を見直していくことが私たちに求められています。


古着の可能性を世の中へ、

著: Tasuku

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