見出し画像

ダニー・ドーリング『減速する素晴らしき世界』(2022年7月)を読んで考えたこと?

#ドーリング #スローライフ
#世界経済    
#減速する素晴らしき世界

筆者ダニー・ドーリングは、英オックスフォード大学の社会地理学者。世界各国の人口、GDP、テクノロジー情報など膨大なデータを集め、それをもとにデジタル処理をし、マッピング化するというWebサイトを立ち上げた人物。このデータをもとに、今まで常識とされていた「加速化された世界像」が間違いだったことを指摘してきた。テクノロジーの進展、世界のGDPの急激なのび、人口の世界的増加、これらは間違っていたのだ。

ドーリングは、そう指摘しておいて「これは悪いことではない!」と言う。かえって良いことなのだそうだ。いま日本では、少子化問題が喫緊の課題である。政府も「 ?  」がつくものの取り組みはじめた。しかし心配は要らないと言うのだ。日本人が魅力的な国としている北欧諸国でも出生率は低下している!そう言っている。

*人類の歴史から見ると!
我々人類の文明が急速に発展したのは、ここ3000年の出来事と言える。つまり弥生時代から現代に至るまでの期間ということだ。日本に人が住みついてから約4万年。弥生時代の前は縄文時代だった。この縄文は約1万2千年つづき、人々はのびのび暮らしていたと言う。

そこに農業技術(稲作)をもった弥生人が大陸から入ってきた。彼らは人を殺すための武器をもち、集落の周りをホリで囲っている。農作物という「富」の争奪戦が始まった。これ以降は殺戮と収奪の世界になったのだ。富を得ることで安定な社会を築こうとすることが、かえって争いの世界になってしまう。以後現代までこれが続いている。

*スローライフという生き方!
対義語は「ファスト・ライフ」となるが、これは効率やスピードを最優先する生活様式のこと。仕事をまず考え、収入を増やそうとする生き方でもある。結果として生活に余裕はなくなり、疲れ果ててしまう。それでも昭和の時代のように家族が納得してくれていたなら、まだいい。今なら家庭崩壊もあり得る。

スローライフは、まさにこの逆である。時間を気にせずにゆっくりとした生活をエンジョイする。自分にとって、家族にとっても大切なことに時間をつかう生き方だ。心が充実し、ヒトにも優しくなれる生き方。まさに減速した生き方である。

*世界の人口は減少する!
現時点(2024年)において世界人口は80億人を超えたと言う。しかし、その勢いは止まりつつある。先進国のほとんどがだいぶ前から減少しているそうだ。増えているのは、アフリカ諸国とインド。だが、これらの国々も徐々に減少に転じると見られる。すでに中国では数年後には間違いなく減っていくそうだ。

日本では高齢化社会となって、国をあげて取組みはじめた。高齢者は若者の働きによって支えられているが、少子化はこの働き手がいなくなるという事、ここを心配している。だが、女性の労働や高齢者が自身が働くという手もあり、ここを見落としていると言えるだろう。

*テクノロジーも減速!
近年、人工知能(AI)がようやく完成に近づいた。これはまさに進化である。だが、他の分野を見ると、それほどの進展は見られない。「GAFA」(Google、apple、Facebook〈Meta〉、Amazon)、これらを見てもさほど新しい技術は見当たらないと言える。

EV車(電気自動車)も急速に広がると見られたが、さほど進展はしていないようだ。ただし、GPSやAIなどの技術により自動運転の時代はすぐそこに迫っている。ネックとなるのが充電。時間がかかることと、充電ステーションの整備が求められている。

*世界経済の今後は?
日本ではとくに失われた30年、GDPは減速したままと言える。だが、世界を見るとどの国もGDPの伸び率が落ちてきた。いま世界を牽引しているのは米国と中国。だが、この両国もそのうち減速すると見られている。

とくに中国では不動産バブルによって、国そのものの経済がおかしくなりそうである。これにより米国にも何らかの影響があるはずだ。すでにその兆候は出ているとみられる。

*まとめ
日本にはまだまだ潜在能力があると言える。問題は2000年以降の構造改革という名の「改悪」。とくに雇用、労働者の生活が不安定になったことがおおきい。2022年のOECDの指摘でも、日本人の平均給与は、OECD平均値を10%以上も下まわる。

もともと日本人は貯蓄する傾向がつよい。これは心配性な国民性によるものだが、それにしても低すぎる賃金によってさらに買い控えが起きていると言える。これが日本のGDPの足を引っぱるカタチだ。だが、それでも日本人の富裕層と庶民との賃金格差は米国ほどではない。ここが唯一、日本の誇れるところだが、少なくとも賃金はOECDの平均値以上にはしてほしいと言えるだろう。ウクライナ、ロシア戦争や急激な円安による物価高。人々の暮らしはますます苦しくなっている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?