カヌーイストにして作家『野田知佑』氏の思い出!
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私がカヌーとキャンプの楽しみを知ったのは、野田知佑氏によるもの。紀行文『日本の川を旅する』という作品を読んだことがきっかけだった。早稲田の文学部を出ているということもあり、その作品には引き込まれたのだ。
軽妙にして闊達、洒落やウィットにも富んだ、その語り口には、一度は自分もこういう生活をしてみたい!と思わせるものがあった。
私には月一度、古本屋にいく習慣がある。いくと必ず30冊くらいの本をまとめ買いするのだ。今日はまさにその日。店舗内の書棚を見て歩いていると、なんとこの『日本の川を……』があるではないか!新潮文庫で110円、すぐにカゴにいれた。単行本は持っていたが、文庫本は持っていなかったからだ。
最近、昔読んだ本を読み返すことがおおい。歳とともに感性や文章の読み方が変わってきたのだろう。過去の自分とは違った自分があることに、驚かされたりもする。
この『日本の川を……』、目次から数ページひらくと、「カヌーの組立て方」のページがある。野田氏が乗っていたのがファルトボートという種類のカヌー。木製のフレームを繋げ、そこに防水シートのカバーをかぶせると、立派な舟となる。野田氏の基本スタイルは、川旅。カヌーの後部にリュックを数個くくりつけ、出発する。
川旅がスバすらしいのはその景色。水面ギリギリから、川辺の樹々や小動物が間近でみれる。これは陸地からではなかなか味わえない。しかも、川の流れに乗って進むから、音もあまり立てることはない。自分だけの空間が、そこには広がる。
いいことずくめのようだが、問題もある。川にはいくつもの川幅の狭くなったところがあり、流れが急激に早くなるところがあるから、生命の危険がつきまとうということだ。これを防ぐには、急流で生じる波の高さをみて、自分で判断するということになる。舟でいくのが無理と思えば、一度上陸して流れの穏やかなところまで、カヌーやリックを担いでそこまで持っていく。この判断が大事となる。
カヌーはスポーツ競技にもなっている。野田氏のカヌーはあくまで楽しみのためのもの。しかし、基礎知識は必要となる。カヌーは流れの難易度を等級であらわす。1級から6級まであるが、無難なのはせいぜい1級2級。この辺りのことを、野田氏はよくわきまえていた。だから、晩年までカヌーを楽しむことができたようだ。
川旅の楽しみは、その町その部落に住む人たちとの交流である。ある町では、知り合いになった人の家に厄介になった。たぶん野田氏は人懐っこい性格ということもあるのだろう。完全にその家族に溶け込んで、訪ねてきた客が、そこの主人と勘違いしたというエピソードもある。
さらなるカヌーの楽しみ。それは釣りだ。川岸から入り込めない場所にもいけるカヌー。そんな場所には、魚が群れをなして泳いでいるそうだ。釣り糸と川におとせば、すぐに魚が食いつく。これはカヌーでなければ味わえない醍醐味ともいえる。
川田では別の危険もともなう。テントの設営をする場所、これを間違うと命取りにもなる。一番多くテント張るのが河川敷。しかしこれが危ない。上流のダムで放流したときなどは、一気に流されてしまう。野田氏も、そんな経験はかなりしていたようだ。
さらに熊対策も怠ることはできない。日本では毎年熊に襲われる人が後を絶たない。山遊びには、熊はつきものと思ったほうがよい。必ず対策は考えておくべきだろう。
野田氏の趣味は、読書とハーモニカと酒だった。一人での川旅、宿泊地を決め、テントを設営し、夕食を済ませば、後はやることは無い。そこで、一杯ひっかけながらの読書。そして、時々ハーモニカも吹く。
40歳くらいからカヌーを始めた野田氏。はじめは一人旅だったが、すぐに愛犬をつれての旅となった。ガクと命名したその犬は、野田氏によると、日本初の「カヌー犬」だという。友人である椎名誠の息子、その名前が「岳」。どうもそこからとったようだ。
まとめ
野田知佑氏は、2022年3月27日84歳で亡くなった。現代人のわれわれに、キャンプの楽しみを教えてくれた。また、自然保護活動にも積極的に取り組んだという。謹んで、ご冥福を祈りたい。