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[ サイエンス ]口腔細菌、人類の敵であり、運命共同体でもある!

#サイエンス #歯周病
#歯科クリニック #虫歯
#口腔細菌 #全身疾患

人生のなかで歯科クリニックにいったのは、10歳と30歳のときだけ。22歳で「親知らず」の痛みに悩んだのだが、その時はいっていない。そのくらい歯は丈夫だった。ところが母、子供のころから虫歯に悩み続けたようだ。40歳を前にして、その半分の歯を失っている。母が言うには、食糧難の時代に育ち、自分の母(私にとって祖母)が夜に布団に入っていると、カルケット(当時のお菓子)を与えられたという。寝る前のわずかな時間、他の者には分からないようにくれたようだ。

*口腔細菌で「生命の危機」
高齢ともなると、どうしても免疫力が落ちてくる。さらに手術もなると、この口腔細菌が危険ともなるようだ。そのため最近では、大病院になると、事前に口腔内の状態を調べると言う。この状態が悪く細菌が多い場合、口腔ケアにより細菌の数を、前もって減らす処置がおこなわれる。

実際に、口腔状態の悪い患者は、肺炎にかかるリスクは高い。また口腔細菌が手術で血液に混じると心内膜炎にもなる。口腔ケアを事前におこなうことで、それが半分以下になるようだ。口腔細菌は、虫歯や歯周病だけの問題ではなかった。

*口腔細菌の生残り戦略!
口腔細菌のほとんど99%は悪さをしないと言う。我々ヒトが悩むのは、1%の悪玉菌の攻防とも言える。この1%より少ない状態ではあまり問題は起こさないが、2%ともなると大変なことになるようだ。ミュータンス菌であれば虫歯、ジンジバリウス菌が増えれば歯周病となる。

歯のエナメル質、ここで繁殖できるのはミュータンス菌である。ミュータンス菌は糖をとり込み、代謝物グルカンをつくるが、これは粘着性のもので、歯の表面にくっつくのだ。それを足場(土台)としてミュータンス菌は増えていく。この足場を含めた細菌叢を、歯垢(しこう)と呼ぶ。このグルカンは細菌にとって「お菓子の家」というべき存在といえる。

だが、不思議なのはこの先。増え続け歯のなかに侵入し、神経まで達すると根の治療となり、それでもダメなら歯を抜くことになる。歯そのものがなければ、ミュータンス菌は生きてはいけない。自分たちが増え続けることで、自分の居場所を失ってしまうというパラドックスがある。

*野生動物の歯は?
野生動物は、虫歯にはならない。虫歯になるのは人だけのようだ。これが食べ物が影響していた。人類がつくり出した砂糖がいけないという。野生動物は砂糖を食べる事はまずありえない。我々が毎日食べている食品、そのほとんどに砂糖が入っているため、虫歯となる。

一方で歯周病の元となるジンジバリウス菌。これはタンパク質によって繁殖する。そのため野生動物においても歯周病にはなるのだ。ジンジバリウス菌はアルカリ性で酸素を嫌う性質。虫歯菌のミュータンス菌は酸性で酸素があっても生きることができる。

野生動物においては、歯を失うことは「死」に直結する。食物を咀嚼できなければ栄養を摂ることができないからだ。野生動物において、虫歯にならないというのは理にかなっているとも言えるだろう。虫歯になる我々としては、なんともうらやましいとも思える。

*人類の歴史と口腔細菌!
ほぼ野生動物と同じ食生活だった旧人。このときは歯周病菌が全盛の時代だった。約1万年前に農耕が始まる。すると食物を土器で煮炊きして食べるようになった。このことで柔らかくなった穀物、糖質を多くふくんでいる食品を摂ったことで、虫歯になる人が次第に増えていく。

虫歯が爆発的に増えたのは、18世紀になり、砂糖がつくられ始めたため。人は誰もがこの砂糖を好む。すべての料理に砂糖が加えられ、毎日食べるようになった。これが「虫歯の引き金」になったと言える。

一方で歯周病は、猿人やネアンデルタール人の骨にも痕跡が見てとれる。とくに最近は現代病とも言われている歯周病だが、これは寿命が伸びたことが影響していると言えるだろう。長生きにより、免疫が落ちたことで格段に広がったといえる。

*虫歯と歯周病を防ぐ大発見!
初めに述べたように、自分自身歯の病気ではあまり悩んだことは無い。だからといって、真面目に歯を磨いているかと言えば「NO」である。だがなぜか?大丈夫だった。広島大学のニ川教授の研究によると、ある種の乳酸菌が影響していると見られる。

気づいたのは介護老人でまったく自分では歯を磨けない人たち。ほとんどは虫歯や歯周病が悪化し、歯を失う人がおおかったのだが、一部の人では何も変わらず、歯が残っていた。分析してみると、乳酸菌のひとつ「ラクトバチルス・ラムノーザス」によるものであることがわかったという。実験によると、虫歯にも歯周病に対しても、90%減らす効果があった。

*まとめ
虫歯に比べると歯周病の方がはるかに怖い病気と言える。なぜなら、この歯周病菌は、人の全身疾患につながるからだ。脳であれば認知症、心臓であれば狭心症・心筋梗塞・心内膜炎。さらに肺炎やガンにも関係する。いわば死に至らしめる細菌である。

一方の虫歯菌、その痛みは尋常ではないほど。だが、それほどの悪さはしないのだ。まぁ両方とも無いには越したことは無いのだが…。とにかく歯周病だけは日々ケアしていくことをお勧めする。自分では出来ない方は歯科クリニックにいこう。死に直結する怖い病気だからだ。

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