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[ BIZ ]技術大国日本、ハイテク温水洗浄便座、その開発秘話とは!

#温水洗浄便座 #トートー
#TOTO   #プロジェクトX

ロックバンドに「TOTO」というグループがある。1976年に結成、全米チャートの上位にランクインしたバンド。アルバム「聖なる剣」は、1200万枚以上セールス、グラミー賞6部門もとっている。このTOTOという名称、結成メンバーの一人が日本にいった時、トイレでこのTOTOを目にしたことで名付けたようだ。

日本人はこれを見て「トートー」と呼ぶが、英語圏の外国人にとっては「トト」である。このトートーは、北九州の水回り住宅製品のトップメーカー、東洋陶器のロゴだった。日本人にとっては、TOTOは当たり前の名前だが、外国人にとっては奇異に感じたようだ。

*東洋陶器の歴史から!
1970年代は、高度経済成長で日本中が湧きあがり、空前の住宅建築クラッシュとなった。しかし1970年末になると、イラン革命、イランイラク戦争により原油価格が大幅な値上がりとなる。これが物価上昇にもつながり、経済成長も一切に冷え込んでいった。

住宅建築も下火となり、住宅機器メーカーも会社の業績が悪くなっていく。まさにこの東洋陶器もそんな会社のひとつだった。このままでは大変なことになる。そんな空気に支配されていく。ここで目をつけたのが社内でくすぶっていた製品「温水洗浄便座」。1969年に米国ビデ社から特許を買って売り出したが、不具合が多くて売れなかったものだ。

*製品開発、その一
この温水洗浄便座をなんとかしよう!そんなプロジェクトが1980年から始まる。任されたのは設計課の本村久、当時36歳。大学では水力学を学んでいた。第一の問題は、ヤケドするほど水が熱くなること。それまでBABYMETALよって制御していたが、これではこの問題は解決しない。

考えたうえにたどり着いたのが、IC (半導体)による制御。しかし、社内の部品担当に話すと、「とんでもない、ICは水回りには使えない!」と言われてしまう。本村は日々考え続けたという。ある時、パっとひらめく。道路にある信号機、あの制御もICのはず。本来なら雨に濡れる信号機、ここでも使えないはずじゃないのか。

さっそく信号機メーカー「小糸製作所」にいき、話を聞くことにする。本村は「便器で困っていること方が大勢います。私たちに秘密を教えてもらえませんか」と。すると快く引き受けてくれたそうだ。それはICを特殊な樹脂でコーティングするというもの。これにより水温の問題は、ひとまず解決された。

*製品開発、そのニ
便器で使用する水の温度、そしてどの角度から、どのように当てるか?これは一からデータを集めるしかなかった。社内で実験に協力してくれる人を求めたが、誰も手を挙げてくれない。仕方なく、元村本人と妻で実験を繰りかえしていく。

しかし徐々に社内でも本村に共鳴する人があらわれてくる。気がつけば、女子社員120名が参加してくれたという。結果、分かった事は水温は38度。噴射はノズルを伸ばして、そこから43度で当てるというものだった。

*売り出したが、またも不具合!
製品は一応は完成した。早速売り出すことに…。しかしまたしても故障が起きてしまう。今度は断線によるものだった。購入した多くの人からクレームが入る。購入者のところまでいき、謝りの日々。しかし、本村はめげなかった。

そして解決策を見つける。アルミ箔の電熱線に問題があったのだ。温水洗浄トイレでは、始終加熱することになる。これがこの素材では耐えることができなかった。ステンレス製に切り替えることで乗り切った。

*大々的な売り出し戦略!
会社も、これはイケると踏んだようだ。大掛かりな宣伝を計画する。どうやったら認知とあげられるか。検討の末、テレビCMをうつこととする。すでに成功している製品、そのコピーを手がけた人物にあたってみた。

それはソニーウォークマンのCMコピーを担当した中畑貴志(当時34歳)だった。中畑ははじめ「製品の価値がピンとこない」と言っていたが、会社の熱意により受けることとしたようだ。出来上がったコピーは「おしりだって洗ってほしい」。トイレのCM、当時は皆から馬鹿にされていたという。だから「おしり」の3文字は禁句だった。しかし中畑は「堂々と勝負しましょう」と押しきった。

まとめ
結果としてはこれが大成功となる。2019年3月現在で、累計販売台数は5000万台を突破した。ちなみに製品名「ウォシュレット」は「レッツ ウォッシュ」から来ているという。

現在、日本でほとんどの家庭についている温水洗浄便座。これは日本が世界に誇るべき技術と言って良いだろう。「TOTO」は、世界のトートーなった。

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