(第三話)ハルとアキの異世界リトーヌア王国
第三話 『リトーヌア王国と別送(わかれ)』
大魔王シキは、ハルたちをガッと睨みつけた。
すると、ハルたちの体の自由が奪われ身動きが取れなくなった。
シキはゆっくりとハルに近づき、話はじめた。
「君たちの戦い、一部始終観させてもらったよ。でもスラウを倒したくらいで調子に乗らないことだ、あの様な戦いで私が満足するとでも思ったか?。もっと強くなって貰いたいものだ。」
ハルが言う、
「そんな事やってみないと分からないじゃないか。すぐにお前を倒してやるぞ❗️。」
「ハハハッ。体の自由が効かない状態でよく言えたものだ。シキとやろうと言うのかな。」
「早くこの魔法を解いて早く立ち去りなさい。」
ウィンター姫が2人の間に割って入ってきた。
「良いでしょう、わかりました。一度、退散させてもらいます。でも今度は、私と戦う事になっても大丈夫なのかな。そんな微弱な力で私の足元にも及ばないよ。やめておきたまえ。もっともっと強くなってもう一度会いましょう。」と、ハルとウィンター姫に皮肉を言って、大魔王シキは掌を前に出す。
掌からシキの体が通れるくらいの黒い光の物体が出てきて、シキは薄ら笑みを浮かべながら黒い光の中に入って行った。
徐々に小さくなっていく黒い光が消えると、ハルたちの体は、元に戻った。
「アキ、大丈夫か?。」
「う、うん。大丈夫だよ。…でも、何なの⁉︎あの…やなヤツ‼︎ やなヤツ‼︎ やなヤツ‼︎。」
アキは、『やなヤツ』と何回も言いながら右手の拳を握り地団駄を踏んだ。
「アキ、落ち着いて。あなた達アキとハルが居なければこの国は亡くなっていたのよ。だから…落ち着いて。もう私たちの敵は居なくなったのよ。だから、落ち着いてちょうだい。ネッ。」
ウィンター姫がそっとアキを優しく抱き寄せた。
「でも、またシキが現れたらどうするの?」
「その時は…その時は…その時に考えましょう💦」
アキの質問をウィンター姫は「フフフッ」と、笑顔でかわした。
ハルは、2人より先に城内に人が居ないか探し歩き始めた。
ハルが歩き始めて数分後、城内の廊下に倒れている兵士を見つけた。
「ダ、ダッ、大丈夫ですか?。ケガとかされていませんか?。」と、尋ねてみた。
「先程まで急に体が金縛りにあったかの様に動かなくて、ようやく動ける様になったのですが、全身の力が入らずに少し倒れていました。助けてくれてありがとう。」
ハルが兵士を助けて話をしている所へ、落ち着きを戻したアキと少し緊張気味のウィンター姫がハルの元に追いついた。
ウィンター姫を見つけた兵士は、力いっぱいに立ち上がり、背筋を伸ばしてお姫様に向かって敬礼をした。
「ウィンター姫、よくご無事でした。怪我などはされていませんか?。国王様が王室でお待ちです。さぁこちらです。」と、兵士はウィンター姫を先導し始めた。
「ちょっと待って。」
ウィンター姫は後ろに振り向くと、ハルとアキを見つけて「ハル、アキ、一緒に行きましょう。」と、ハルの左手とアキの右手を取り笑顔で兵士の前に戻ってきた。
「この2人も連れて行きます。」
「この2人は?」
「私とこの王国を救ってくれた兄妹です。父に紹介したいと思っています。」
「この子達がですか…わかりました。一緒に連れて来て下さい。」
兵士は、ハルとアキの容姿を見て一瞬驚いた顔をしたが、すぐに真顔に戻って3人を王室に案内し始めた。
王室の扉は、3m位高い分厚く装飾品が見た事もない様な宝石で着飾っていた。
兵士が扉のノブに手を掛けると「カチャ」と、大きな音がして「ゴゴゴッ…」と音と一緒に扉が開いた。
扉の先には、両側にヌートリア王国の象徴とも言えるアリトの絵が大きく描かれた旗が王室の奥にまで均等に並んで建てられていた。
床には、高級感のある絨毯を真っ直ぐにハルたちが進むと、高級な長机に高級な椅子が6脚ほどがキチンと収められていた。さらに奥には貴賓のある高貴な椅子が2脚あり、両側に兵士が2人立っている。
左側には煌びやかな衣装に身を包んだ男性が1人座っていた。ヌートリア王国の国王である。
「おお、ウィンター姫よ。無事に帰ってきてくれたな。私は大変嬉しいぞ。」
「お父様、私も会えて嬉しいわ。」
ウィンター姫は、父親との再会に嬉しさのあまり感動して父親の胸に抱きついた。
「良かったね。」と、アキが感情的になり少し涙を浮かべ喜んだ。
姫は、後ろで緊張気味の2人の手を繋ぎ国王の前まで連れて行った。
「お父様。こちら、ハルとアキです。この子達が私を地下の牢屋から助けてくれて大魔王シキを退けてくれたの。」
「何と、そんな事が起きていたのだな?おお、そうか。それは私の兵士に監視役を付けておこう。ハル、アキに礼を言おう。ウィンター姫を助けてくれてありがとう。褒美をやろう。何が良い?。」
王様は、ハルとアキに尋ねた。
「私は、ボロボロになった服を直して欲しい。」と、アキは自分の服やパンツに付いた汚れや破れた箇所を見ては王様に言ってみた。
「わかった。後で仕立て屋を呼ぶとしよう。ハルは、何かあるか?。」
「僕は、元いた自分の現実世界に戻りたい。」
ハルは、自分の素直な気持ちを王様にぶつけてみた。
「わかった。高等な魔法が使える錬金術師を呼んでおこう。すぐにとは行かないが、出来る限り早く取り組もう。では2人共今日はゆっくりして…」と、王様が言い終わろうとした瞬間、ウィンター姫が王様の前に出てきた。
「お父様、私のお願いがあります。」
ウィンター姫は、改まって王様にお願いをしてみた。
「ハルとアキと一緒に2人の世界に行ってみたいのです。ぜひとも王様のお許しを得たいのですが、ヌートリア王国の新たな発展の為に異国の文化を学ぼうと思っております。」
「…ダメだ。この国の事はどうするのだ?。この国の民はどうするのだ?。」
「…わかりました。………。」
ウィンター姫は、少し寂しそうな顔をしたがすぐに満面の笑顔でハルとアキを見つめた。
「では、帰りの支度が出来るまでヌートリア王国でゆっくりしていきなさい。」
「ありがとうございます。」と、王様に感謝を伝えた。
ハル、アキとウィンター姫は、王室を出て行った。
〜数日後〜
ハルとアキは、ウィンター姫の案内で一緒に色々な所へ出掛けました。
「楽しかったね❤️美味しいご飯も食べたし、お城の展望台で綺麗な風景も見れたし。最高だね、ハル。」と、ご満悦なアキである。「そうだな。楽しかったね。」と、ハルも笑顔である。
そこへ、兵士が1人ハル達の元にやって来た。
「ウィンター姫、『帰りの支度が出来たので王室まで来られる様に。』と、王様から言伝を預かって来ました。」
「わかりました。ハル、アキ、行きましょう。」
ハルとアキは、真っ新な民族衣装を着て王様の前に集まった。
王様の横に、上質な布で縫い合わせた衣装を身につけたウィンター姫が、少し寂しそうな顔で立っていた。
「ハル、アキ、この数日の思い出は忘れません。ありがとう。」
そしてウィンター姫は、ハル、アキの順番にハグをした。
2人が魔法陣の中に立ち数人の錬金術師が呪文を唱え始めた。魔法陣の中で2人が待っていると、そこへアリトがウィンター姫の肩に乗り「グゥー」と鳴いた。
「アリトも一緒の気持ちなんだね。でも笑顔で送り出そう。」と、ウィンター姫はアリトに話した。
錬金術師達が「ハァー」と、気を送るとハル達の体はスッと消え、現実世界にあるハル達が遊んでいた部屋に戻って来た。
「ハルもアキもいつまでゲームしてるの。早く寝なさい。」と、お母さんが声をかけた。
ハルは、ハッと思い出したかの様に自分の部屋に戻り勉強をし始めた。
アキは、マイペースにゲーム機材を片付けて自分の部屋に入って好きな漫画を読み出した。
そして、数年後ハルとアキはまたヌートリア王国に行く事になるとは今の2人は、知らない。
〜あれから時は経ち〜
ウィンター姫は、ハル達のリビングに居た。