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(第二話)ハルとアキの異世界リトーヌア王国

第二話『戦う少女と覚醒する少年』

ハル、アキ、ウィンター姫とアリトは、地上に上がる階段の前まで到着した。
数メートル走っただけなのにハルは、息切れしている。2人を見るが、普段から運動しているアキと流石に王宮のお姫様だけあって文武両道で息切れ一つしていないのである。

「ハル、少し休もうか?」と、アキが心配そうにハルに声をかけた。

ハルは、「ふぅ〜」と、一息つき階段の端に座り込んだ。
アキは、「周辺を見廻ってくる。」と、一言言って周りを歩き始めた。
ウィンター姫も「一緒に行きます。」と、アキと一緒に歩き始めた。
「アリトは、ここに残っていて。」と、アリトはウィンター姫の方からハルの横にちょこんと座り込んだ。

アキは、ウィンター姫と一緒に地下道を歩いていると宝箱を発見した。
中を開けてみると、剣とグローブを見つけた。
アキは、剣を持つが少し大きい形だったのかウィンター姫に手渡し、グローブをアキは手に装着し、少し動いてみた。

「シュッ、シュシュッ」

アキは格闘技経験はないものの、その卓越した運動能力と慣れ親しんでいる格闘ゲームセンスのおかげで、数分の間にグローブの感覚を覚えたようだ。

ウィンター姫が、「アキ、素晴らしいわ。」と、声をかけた瞬間、背後から魔物の気配を感じた。

「キィー、キキィー」と、魔物がアキたちを狙い襲いかかって来た。
アキは、魔物の鋭い爪を交わしウィンター姫の腕を掴み「逃げよう」と、声をかけ走り出した。
ウィンター姫は、アキに促される様に、後ろを向きアキと一緒に走り出したが、もう一匹の魔物がアキたちを先回りし、通路を塞いだ。

「囲まれた。戦うしかないね。」と、アキは少し動揺しウィンター姫に言った。
「そのようですね。」と、道端に落ちていた鉄製の棒を拾い、魔物に向かって構えた。
「棒術には心得があります。アキは大丈夫ですか?。」
「全力でやるわ。はあぁー。」
アキは、魔物に思いっきり拳を振りかざし攻撃を仕掛けた。見事に魔物の左頬にヒットし、魔物は怯んだ。すかさず2撃目を攻撃しようと左手を出したが交わされた。魔物は後退しアキと距離をとった。

ウィンター姫は、魔物と距離をとり睨み合っていた。
数分間、お互いに睨み合いが続いたが、痺れを切らした魔物がウィンター姫を襲い始めた。
「えいっ!」
鉄製の棒を振りかざしたウィンター姫は、縦に鉄製の棒を振り下ろした。魔物の体に当たり後ろに怯んだ。
すかさずウィンター姫は、横に薙ぎ払い2撃目をヒットさせて魔物は気絶した。
魔物を撃退したウィンター姫は、すぐにアキを探し始めた。

アキは、少し負傷していて、息も乱れていた。
魔物は、少しダメージを受けてはいるものの、まだ動きは鈍っていない。

ウィンター姫がアキを見つけるとすぐ様、駆けつけアキに加勢した。
「苦戦していますね。初めての実践ですものね。四聖獣の力を借りましょう。」と、ウィンター姫がアキの背中に掌を合わせて、何か呪文を唱え始めた。

「古のより甦りし四聖獣よ。アキに力を与えたまえ‼︎。」

すると、アキのピアスから青色の光が輝きアキの体全体を包み込んだ。
少しずつ体を覆っていた光は、アキが身につけているグローブに集まり出した。グローブが青色に光り、ピアスには青龍の紋章が浮かび上がった。

「これで魔物を倒せるはずです。」
「わかったわ。」

アキは、全力で魔物に向かって走り出し、右手で攻撃を仕掛けた。
右手から青龍のオーラが魔物に向かって放たれた。

「ぐわぁー。」

一瞬で魔物を気絶させた。
アキは、ウィンター姫の側までゆっくり歩き出し彼女の前で少し震えた声で

「ウィンター、魔物をやっつけちゃったよ。」
「素晴らしい戦いでしたよ。」と、アキを抱きしめた。

「さあ、ハルのところに戻りましょう。」
「うん。ハルのところに戻ろう。」

彼女たち2人に絆が生まれ、強い意志で歩きはじめた。


一方、ハルは身体を休めていた為、体力が戻りその場で2人が戻ってくるのを待っていた。

そこに
「ドン! ドン! ドン!」と、大きな足音が地上から聞こえてきた。
体長は、軽く2メートルを超え目が真っ赤に燃えていて鼻息が荒い大きな闘牛が、ハルたちに向かって来た。

「お前が檻から姫を連れて出た者かぁ〜‼︎‼︎。」

突然、階段上部から階段を駆け下りハルの前に姿を見せた。

「許さんぞぉ‼︎‼︎‼︎ウォー‼︎‼︎」と、勢いよくハルに向かって突進し始めた。

ハルの肩にいたアリトが瞬時に巨大化し、闘牛を止めたが、力は互角だ。
アリトの後ろにいたハルは、周りを見渡し役立ちそうな武器を探していた。

そこへハルの後ろから駆け込んでくる足音が聞こえた。
アキとウィンター姫だ。

「うわぁ、こっちにも魔物がいる。」と、アキは驚きながらハルに話した。
「突然、大きな牛が現れて今、アリトが戦っているところだよ。」とハル。

「これはいったいどういう事なの?。あのスラウは、神聖な動物として隣の国で大切に育てられていたはず。それにこんなに禍々しい姿では決してないはず。どうして?。」
「もしかしたら、シキがこんな姿にしたのかも知れないね。」と、アキは答えた。

ウィンター姫は「ハル、この剣をあなたに授けます。」と、先ほど手に入れた剣をハルに手渡した。

ハルは、ウィンター姫から剣を受け取ると、ずっしりと重みを感じた。
「頑張ってみるよ。そしてあのスラウの心を取り戻してみせる。」と、アキとウィンター姫に言ってアリトの前に立った。

「ガァァー、グゥゥー。ガァァー。」

アリトとスラウがぶつかり合い、睨み合って唸り声も共に上げていた。
2頭の間にハルが剣を構えて現れた。

アリトは、ハルを見つけるとスラウを力いっぱい押し出し、ハルに話はじめた。

「戦う事は、自分を信じて戦うのだ。信じて戦う事で自分の可能性が引き出される。」
「うん。」

ハルは、瞳を閉じて静かに一つ息を吐き心を落ち着かせた。

「いくぞ、ハル。」

アリトは、ハルを背中に乗せて、再びスラウに向かって走り出した。
アリトがスラウに段々と近づくにつれて、スラウの体を覆っている禍々しいオーラがハルを委縮させた。

「大丈夫だ。ハルは、負けない。」

アリトの言葉が、ハルの背中を押した。
ハルの目つきが変わり、スラウの体に一太刀浴びせた。

「グワァー。」と、その場でスラウは倒れ込んだ。

「よし。ハル、一気に攻めるぞ。」
「わかったよ、アリト。」

ハルの表情が柔らかい顔からキリッとした顔に変わった。

「今こそ、我の力を使う時だ。」

アリトがそう言うと、全身が光輝き出し、水晶の玉くらい小さくなった。水晶の光の玉は、ハルに向かって線状となり彼の身体を包み込んだ。そしてハルが身に付けている指輪も反応し光出した。

「ハルの身体能力が高くなって、前以上に剣が軽く振れて、スラウを倒せるはずだ。」
「よし、行くぞ。」

先ほどの攻撃よりも一段と速くスラウの懐に入ったハルは、剣を疾風の如く2度素早く振り下ろしスラウを気絶させた。

アキとウィンター姫が戦っていた魔物たちは邪気が無くなりバラバラに逃げて行った。

スラウとの激しい戦闘を終えたハルとアリトは、アキとウィンター姫の元に戻った。

「無事で戻って来て本当によかった。」
「ハル、怪我してない?」
「大丈夫だよ。少し肩や腰が痛いかな⁉︎へへへっ。」と、ハルは笑顔で答えた。
「後で私が肩たたきしてあげるね。」と、少し含みほくそ笑むアキだった。

「行きましょう。」

力強くウィンター姫は歩き出し、その後にハルとアキは、続いた。

階段を上げるとそこには、大魔王シキが立っていた。

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