②勇気ある告白。

彼とのことを書いてみると、どうも私が可哀想な女みたいになってしまう気がするが、それは違う。彼の名誉のためにも言っておきたい。(違うか)

私は、自分の責任の範囲内で彼から離れず、一緒にいたのだ。大好きな彼と一緒にいることが、私が選んだ道だった。

男女が惹かれ合い、会話をしたり手を繋ぎ合ったりキスをしたりするだけじゃお互いを知り足りなくてする行為が、身体を重ねることなのだとしたら、私は決断が早すぎたのかもしれない。しかし、身体を重ねたことで、彼から離れられなくなったのかと聞かれると、それは絶対に違ったと言い切れる。

彼と、毎日のようにお風呂に一緒に浸かりながら、色々な話をした。私はその時間がとても好きだった。
探究心が深い彼は、何事にもあまり興味を持てない私とは反対で、気になったことはとことん調べる性格だった。自分が知ったことや、興味があることを少年のように目を輝かせながらたくさん話してくれた。彼の話を聞く時間が大好きだった。
たくさんの話をして、たくさん身体を重ねたが、それでも彼のことをもっともっと知りたかった。足りなかった。
私だけだったのだろうか。相手の気持ちなんて言葉で聞かなければ分からない。でも、自分がとても楽しくて幸せを感じていたあの時間は、彼にとっても同じだったのではないか。そのように感じていた。そうゆう部分での口数は少ない彼の本心は分からないが、今でも、そうだったら良かったな。と思う。

週に3回程会う関係性になっていた。気付けば月日は経っていた。夜ご飯は、鍋を一緒に作ってよく食べた。〆の麺は胃袋に入り切らず、いつも朝ごはんにして食べるのがルーティンだった。
仕事で嫌なことがあった時も、今夜彼と鍋を食べることができると思うと、嫌なことを忘れることができた。幸せだった。

でも、私達は付き合っていない。

そんな事実だけが私の精神を揺さぶった。
そして、こんな私達の関係の名前が、いとも簡単にセフレと言われるのだとしたら、セフレの使い道広すぎないか?とか変なことを考えたりもした。
私は過去に割り切る関係をしたこともあったが、誰とも長くは続かなかった。そして、その人との関係を終える時、いつも思っていたのが「これってなんの意味があるんだろう?」だった。若い時には刺激を求め、それ以上を求めず、ただそれが楽しかったが、歳を取ればとるほどにそんな関係に意味が無く、虚しいだけだと体感した。刺激なんぞアラサーの私は1ミリも求めていなかった。ただ彼といたかったのだ。

私は、彼との関係に名前を付けたくて仕方がなくなっていた。彼氏彼女になれば、当たり前に好き同士で、私が楽しいと感じる時間を彼も楽しいと感じている。それを言葉にせず、分かり合えるのかな?と思った。
そこらへんの別れそうなカップルよりか、私達は仲が良いだろうという自信はあった。


彼と出会い、3ヶ月経った頃だろうか。何かのタイミングで夜、彼と電話をしていた。
私の気持ちは今にも身体からはち切れそうなくらいに、膨らんでいた。

初めて、彼に好きだと伝えた。伝えた途端に涙が止まらなかった。
電話越しだが、彼が困ったように感じた。ああ、ダメか、と思った。
ここで、私達の関係は終わる。そんな予感があった。

しかし、彼は私の好きを受け止めてくれた。私が泣きながら彼へ気持ちを伝える間静かに話を聞いてくれ、私が話尽きた後に、こう言った。
「僕は誰とも付き合わないと決めているから、〇〇さんとは付き合うことはできない」と。そして、その後に、でも嬉しい。と言った。
分からなかった。彼の真意が。でも、彼が私の好きを大切に受け止めてくれたことは、何故か感じ取れてしまった。

この勇気ある告白を境に、少しずつ私達の関係性は変化していったように思う。そして、彼の真意も少しずつ、分かるようになっていく。

つづく。

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