⑦彼との時間と私の思い。

彼と過ごす時間は私にとって癒しの時間だ。

様々な問題に目を向けて、一歩間違えれば人を殺しかねない仕事をなんとかこなして、時に報われない思いをして、家に帰る。
そして、彼と話す。今日は何を食べようか、と。
今日は昼たくさん食べちゃったからヘルシーな鍋がいいな、今日は辛いものを食べたいな、、彼とそんな風に夕飯の話をしながら、スーパーへ買い出しに行き、一緒にキッチンに立つ。長らく一緒にいるから、お互いに手際が良い。自然と役割分担をして、何かを作る。
美味しいね、と言い合いながらご飯を食べる。美味しい、ほんと美味しい。彼はたまに何度も繰り返して言う。とても感情がこもっている言い方と表情だ。そんな彼を見て、私も美味しいな。彼は今日も可愛いな、と思う。
彼はお酒を飲み過ぎるから、それが時に心配だ。でも彼は酔っ払うと、いつも以上にたくさん笑うし、たくさん話す。そしてかまってちゃんおふざけモードに突入し、私が嫌なことをわざとし出したりする。私に飛びついてきて、痛いーと言ったらそれを繰り返すし、口を近づけてきて、臭いーと言ったらずっとキスをしてくる。なんか、犬みたいだ。笑
なんか、好きな子をいじめたくなっちゃってる小学生みたいだ。笑
そんな酔っ払いの彼のことが結構好きだから、私は彼を飲ませすぎてしまう。外ではこんな姿見せないでほしいって心の中で思う。
朝ごはんを何にするか、いつも話し合う。鍋の日は〆のことまで考えて買い物をする。彼は私が作るお味噌汁が好きだ。朝ごはん何食べたい?って聞くと、高確率で〇〇さんが作るお味噌汁が飲みたいって言う。「〇〇さんが作る」なんて、わざわざ付けなくたっていいのに、なんて人たらしなやつ。最近は二人の中でホットサンドがブームだったりして、彼は朝から張り切ってキッチンに立つ。彼が朝ごはんを作ってくれた日は、私が珈琲担当だ。
そんな、彼と過ごす日々が私は好きだ。穏やかな時間でいたいと思う。

それでも無償に腹立たしい日が、時にある。思い返すと大体私の女の子前なのだが、彼のちょっとした言動が無償に私の心を傷つけてくる時があるのだ。
そんな時に私は、どうしたらいいかわからなくなる。私は口に出して怒りや悲しみを表現できない面倒くさい性格だから、途端に黙りこくり、我慢できなくなって、泣く。彼に背を向けて泣く。
彼にこの思いを言ったら変わるのか、でも彼に困って欲しくないし嫌な思いを私といる時にしてほしくない。私の涙を彼は困ったように見て、どうしたらいいかわからず、私の顔をぐちゃっと触ってくる。どうしよう、と彼の顔が言っている。ごめんね、と彼に思う。ちゃんと話せない私でごめんね、と。

変わりたい、とは思う。自分の思いを、意思を、相手に伝える努力をできる自分でいたいとはいつも思う。でも、伝えた後の相手の反応が怖い。
私が悩んで悩んで伝えた思いを、ちょっとでも蔑ろにされたら、私は傷ついてしまう。
だから私は相手にできるだけ、期待をしないように生きている。

でも、相手が彼だから、むかつくし、やっぱりどこか期待しているし、涙が出るんだと思う。
そう思うのだ。彼もそうだといいんだけど。


私にとって、彼との時間は癒しの時間。それを崩したくはない。その思いから目をつぶってきた弊害が少なからずあるのだろう。気付いてないだけで、あるのだろう。きっと。

いつか彼に言いたい。
私は、結構かなり君の想像以上に、欲深くて、嫉妬深くて、寂しがりやで、独占欲の強い女なのだよ。そして、めちゃくちゃ弱いのだよ。と。

そう伝えたら彼は、ふーんと言って、でも、困った顔をして、私の顔をぐちゃってするのかな。

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